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交渉開始

「異世界から転移だ、強度を上げろ」

 コシュカ王国と人狼が管理している転移門妨害装置が在るアイギス基地では、異世界からの転移門が開かないように妨害装置がフル稼働していた。


「……モスクワ門、強度7dB(デシベル)から9dB。カリーニングラード、ムルマンスクも出力上昇」

 主に東側の転移門が開こうとしていたが、繋がりそうになる度にアイギス基地の妨害装置の出力を上げ、開くのを妨害していた。

 今開かれている筈の4者会談の情報は向こう側に伝わら無いよう、未明から転移門が開かないようにしているが、異変に気づいたソ連側が無理やり転移してこようとしている様だ。


「タシュケント、エカテリンブルグも起動しました、出力5dB。新たにモスクワ郊外、イルクーツクでも反応あり」

 普段滅多に使われないタシュケントやエカテリンブルグの転移門の他に、開いたことがないモスクワ郊外とイルクーツクでも初めて反応が有った。ソ連側はどうしても転移門を開くつもりだった。


「妨害電波を出すように指示を出す、引き続き妨害を続けろ」





「えーっと、コレどういう状況?」

 顔に掛けられた黒い麻袋が取られると、人狼の魔王とコシュカ王国の魔王ユリアが居たので、魔王ロキは2人を交互に見た。

「……感謝祭のパーティーじゃ無いよね?」


 ダメ元でドッキリパーティーか確認したが2人は顔色1つ変えなかった。


「そんな訳無いでしょ」

「10年位前に有った……」


 過去にドッキリで誘拐されたことを引き合いに出したが、張り詰めた雰囲気にロキは黙った。


「過去に目を向けるなら、今日の事に協力してもらいたい」

「え、なにそれ……」


 人狼の魔王がロキに対して強い態度なのは最近始まったことではないが、ロキは面食らった。


「他にアデルハルトも此処に来てる。交渉の仲裁をしてくれ」

「何で?」

「貴方が一番中立的だから」

「あのさぁ……」


 見た限り、近代的な軍艦の一室。それも士官室に居ると気付いたロキは呆れた。


「事前に言ってよ」

「言ったら貴方逃げるでしょ?」

 魔王ユリアに言われロキは言い返せなかった。一応、魔王をしているが、厄介事は幕府に丸投げしているロキは今回のような事態に巻き込まれないよう、何時も逃げ回っていた。


「もう、滅茶苦茶だよ。こないだ海軍が攻め込んだばっかじゃん」

 そもそもロキ本人もニュースで知っていたが、海軍の飛行艦がアルターの領空に長時間侵入しアルター人民軍と交戦していることは広く知られていた。

「それも何かしたんでしょ、騙されんぞ」


 ただ侵入し、交戦しただけじゃないことを流石のロキも薄々勘付いていた。

「そこまで言うなら教えてやる。海軍とニュクスの第2師団が共同でアルターに捕らえられていた核物理学者を救出した。結果的にドワーフ海軍が核物理学者達の確保と護送を全部やってくれた。つまり、ロキ。お前も共犯だ」


 人狼の魔王が一気にまくし立て、ロキも共犯に仕込んだことを暴露し逃げ場がないことを伝えた。

 大方様相通りだが、中立であるべき海軍が思いっきり関わってると聞きロキは嫌気が差した。

「ああ、そうみたいだな。じゃ、帰る」

「帰る?」


 立ち上がろうとするロキをユリアは肩を掴んで座らせた。“ゴネた時の交渉は任せて”と言われたので人狼ん魔王は再び黙った。


「コレは要らないの?」

 ユリアが懐からターザンの様な男のアクションフィギュアをだした。

「サバンナマンのフィギュア」

その通り(Exactly)!」

 レア物のコミックヒーローフィギュアを出しにロキを懐柔し始めたのを人狼の魔王は静かに見守っていた。


「さあ、ロキ。取りなよ……」

 “コレは罠だ”と気付いて、ロキはたじろいだ。


「おー、コレが欲しいんだろぉロキ。もちろんそうよね。生前もアクションフィギュアやコミック本を集めてたものね。手を貸してくれれば、コミック本やアニメのデータを融通するわよ」

「可動式フィギュアの3Dプリンタのデータも?」


 ユリアは真顔になった。


「勿論……。可動式フィギュアはちゃんと関節が動くわよ」

 ロキはアクションフィギュアに手を伸ばし始めた。


「表情パーツも衣装も変幻自在……」


 人狼の魔王からすれば、どうでもいいような内容だったが、ロキは仲裁役をやることになりそうだった。




「えー。今回の会談は4年に及ぶ紛争の終結に向けたものであります。将来に向けて意味のある会談になることを臨みます。えーっと、先ずはアルター、ヴィルク王国間で長年揉めている領土の線引について」


 円卓に、アルター民主共和国からはアデルハルト国家評議会議長と首相。ヴィルク王国と呼ばれることの有る人狼部族連合からは魔王グナエウス・ユリウス・カエサルとマリウシュ部族議会議長。コシュカ王国からは魔王ユリア。杉平幕府からは魔王ロキと外交奉行の担当者。この4グループが座り、それを記者団が撮影する中会談が始まった。


「アルターが占領している都市ファレスキが在る、ヒンター・ウィーゼ一帯の」

「記者団の撮影は一旦打ち切りです。後ほど改めて撮影の機会があります」


 いきなり領土問題に話が及んだので、コシュカ王国の担当者が記者達を部屋から退出させはじめた。

 本来なら中盤以降にする話だったが、ロキが式次第が書かれた栞のページを間違え、話題にしてしまったのだ。


「ヒンター・ウィーゼは我々が奪い返した領土として既に入植を開始しています。今更、そちらに渡すつもりは有りません」

 600年前に、今のアルターの前身国家である神聖王国の土地だった時期もある。だが、最近300年間は人狼のヴィルク王国の魔王城が置かれ、交通の要であるので人狼側としても譲れなかった。アデルハルト国家評議会議長が先手を取って発言したが、直ぐにポーレ族の部族長であるマリウシュが反論した。


「あなた方がヒンター・ウィーゼと呼ばれている地域は私達ポーレ族の土地の大部分を占めます。そちら側が退去しない限り我々としても交渉にはなりません」

 マリウシュ含め、ポーレ族の総意ではファレスキの南側、ジュブレ川南岸地域は譲れないが北岸地域はアルター側に引き渡しても良いという意見が多かった。だが、交渉の席上ということも有り、マリウシュは全ての地域からアルターが退くようにと強く出た。


 コレからお互いの妥協点を見出す交渉だが、戦時中のアルターと人狼は一歩も退かない構えだった。


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