表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
75/235

レフ博士の到着

11月23日 4時30分 長浜沖北西100(マイル) 哨戒艇14号


「北西方向、近づく船!」

 ドワーフの領海に近づく軍艦や潜水艦への警戒任務に応っている哨戒艇は東進してくる船を発見した。


「呼びかけろ」


 アルターが対外戦争を始めてから海上交通が途絶えて久しい。

 一昔前なら、人狼の商会が持つ大型帆船が行き交っていたが、今では近づいてくる船は碌な物じゃなかった。


「1本煙突、軍艦間違いなし!」

 大型双眼鏡を覗く兵士が叫んだ。アルターの軍艦の可能性が高くなった。


「Unknown war ship.Unknown war ship. This is Sugidaira war ship.」

 異世界の“海上における衝突の予防のための国際規範に関する条約” -COLREG条約- による対応に則り、最初に呼び掛けて対応するようにドワーフでは規則を作っていた。


「Unknown war ship.Unknown war ship. This is Sugidaira war ship.」

 無線で呼び掛けたが反応は全く無いまま、向こうは近づいてきた。


「Unknown war ship.This is Sugidaira war ship.You approaching Sugidaita territory.What your purpose?」

「近付く目標、大型艦と思われる」

「発光信号も送れ。艦隊司令部に通報だ」


 大型艦1隻が単独で領海に近付いて来ることは考えられなかった。遠くに僚艦が居ることも考えられるので司令部に一報する必要が有った。


「発光信号で返信あり“This is Koshca war ship”」

「コシュカ王国か…っ!艦番号を聞け」


「What your HullNumber?」

 無線機からロシア語と思われる不明瞭な音声が流れ、暫くすると英語で返答が有った。

「This HullNumber is "002".What your HullNumber? 」


「返答しろ。船務長!近付く目標、コルチャーク級で間違いないか?」

 コシュカ王国で艦番号002の船は新鋭の大型巡洋艦、アドミラル・コルチャーク級1番艦だった。本当にそれなのか艇長は船務長に確認させた。

「お待ちを」

 小型の哨戒挺は揺れに弱く遠くの目標を確かめるのにも大変だった。


「コルチャーク級で間違いなし」


 北方のコシュカ王国の軍艦、それも艦隊旗艦を務める主力の大型巡洋艦が領海に近付く理由がいよいよ判らなかった。アルター民主共和国の軍艦は時折嫌がらせで領海に近付くが。



「海野奉行、予定通り(・・・・)コルチャークが接近して参りました」

 長浜海軍基地の司令部に詰めていた海野大将に通信幕僚が哨戒艇からの報告を上げた。

「哨戒艇に追従を命令。第1艦隊から岩城、大浜の2隻を向かわせて対応しろ」

「はっ」


「それと、新阜の外交奉行にも一報だ」


 忘れるところだったが、この事を一番大事な所に必ず連絡するように海野大将は付け加えた。




「師団長、ジェリンスキ少尉がお見えです。レフ博士を連れてまいりました」

 寝室の外からランゲの部下から呼ばれ、ニュクスがベッド脇の時計を確かめると朝の5時を少し過ぎたところだった。師団本部に隣接している師団長公邸で寝ていたのだが。

「待たせて、直ぐ行くわ」

 ベッドから起き上がろうとしたら首筋に巻き付いた太い腕に遮られた。

「うー……朝かい?」


 声の主の方を向くとニュクスの首に腕を回していたランゲがまだ寝ぼけているのか唸り声を上げた。

「来客よ。レフ博士が来たは。ほら、退いて」

「レフ……あ!?」


 状況を理解して全裸のランゲは慌てて飛び起きた。


「って、早くないか?まだ5時だぞ」

「“誰にも会うな”って言ったからでしょ。ほら、退いて」

 正直、こんな朝早くに現れるとは思っていなかったのでニュクス本人も面食らっていたのだが。




 身支度を済ませたニュクスが応接室に行くと、物理学者12人とカミルとその部下2人が待っていた。

「ご苦労、少尉。……レフ博士、無事で何よりです」

 カミルに礼を言ってからニュクスは物理学者を一瞥した。

 

 ドワーフからの身柄引き渡し以降、新阜の操車場であわや爆発に巻き込まれかけてから一睡もしていないので疲れ切った様子だった。


「早速ですが、撮影の方に向かってもらいます」

「撮影?」

 いきなり、メディア対応でもさせられるのかと、レフ博士は身構えたが上下円管服(ツナギ)姿の男が現れたので、ますます判らなくなった。


「ああ、貴方がレフ博士ですか。お待ちしてましたよ。さ、こっちへどうぞ」

「師団の記録映画班です。コレから皆さんの死亡写真を撮ります」


「死亡……え!?」


 困惑するレフ博士達だったが、円管服姿の男は説明を始めた。


「皆さんには一度爆発で吹き飛んだ人の役をしてもらいます。ですが安心して下さい。実際に吹き飛ぶのは豚の内臓ですので皆さんは横になっていただくだけです。さあ、メーキャップ班の所に案内いたします」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ