表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
65/235

警察署


 工作機械が並ぶ作業場で、ライネは工員が銃の槓杆(こうかん)部分を削り出す作業を見学していた。人民軍から依頼を受けた“銃器類の修理”は、殆どが銃の部品が壊れ使用できない状態の物だった。


〈部品はこれで完成です〉

 部品を受け取ったライネは槓杆部分が外されていた小銃に、新たに作られた槓杆を嵌め込み手際良く組み立てた。


〈……よし、動きは問題ない。試射に回してくれ〉


 アルター人民軍から修理を依頼された小銃や15ミリ機関銃の設計図を貰い、交換用の部品を造る形で修理をする事になったが、納期の予想を立てるために一通り部品を作り何挺か修理してみたのだ。組み上げた限りでは問題は無いが、後は実際に撃ってみて精度や動作に問題が無いか人民軍に検査して貰う。


〈明日からフル稼働だ。今月中に契約分を全て納品する〉

〈今月中にですか?〉

 一緒に工場に来ていたジョージは聞き返した。


〈ああ、たったの小銃200挺に機関銃が4挺だ。時間を掛けてられん〉

 個数を見れば少ないし、今日の試作状況を考えると2,3日も掛からないのはジョージも判ってはいた。だが、納品された銃が仲間の第2師団の兵士に向けられることを理解していたので、納期はギリギリまで伸ばすのかと考えていたのだ。


〈良いんですか?〉

 ジョージが聞き返したので、ライネは周りに聞き耳を立ててる人が居ないのを確認してからジョージに耳打ちした。

「最初に信頼を勝ち取り、情報を引き出すためだ」

 





「……はぁ、はぁ、はぁ」


 追っ手を巻き、小箱が飛び込んだ建物の裏手にまで戻って来た港生は息を切らしながら窓を見上げた。


「参ったなあ」

 小箱を落としたのは自分だが、蹴り上げた上に窓まで飛ばした2人は既に居らず。1人で取り戻す必要が有った。


「んと」

 壁に向かって走り、足を壁にかけると港生は一気に2階の窓の縁に手を掛けた。


「……」

 ゆっくりと中を覗くと、整然と片付いたデスクとが見えた。

「よし」


 “誰も居ない”休憩時間か外回りでその部屋の主が居ないのは好都合だと港生は窓から部屋に入った。


 まずは、床に顔を近付け小箱が床に落ちていないか確認した。デスクの下や、棚の下など注意深く確認したが、小銭や茶菓子の包紙と言ったゴミが埃と一緒に溜まっているだけだった。



「……ええ、ヤクザが」


「っ!」


 扉の外から話し声と足音が聞こえ、港生は慌てて目の前の書棚を開けて器用に身体を縮こませながら一番下の段に身体を収めゆっくりと書棚を閉じた。


「竜人の子供がヤクザの事務所に忍び込み、何か盗んだようです。目撃情報から憲兵隊の大林少佐の弟の可能性が」

「大林少佐の弟?八路のか?」

 いきなり、自分がヤクザの事務所に忍び込んだ事と兄の話をしてるのが聞こえ港生は心臓が止まるかと思った。


「いえ、5つ年下の港生のようです」

「……探し出して拘束しろ。多少手荒にやっても構わん」

「はっ!」


 一緒に入ってきた男が部屋を出ると、入れ違いで他の男が入ってきたようだ。

「警部補、失礼します」

 入り口で挨拶をしてから入ってきたのか、足跡が3歩分遅れて聞こえて来た。


「魔王カエサルの妹君イシスとその恋人トマシュ・ジュワフスキが天狗橋地下鉄駅で目撃されました」

(こwいwびwとw)


 一応はイシスの護衛兼御目付役で、毎日イシスのワガママに振り回されているトマシュが恋人扱いをされているので、港生は吹き出しそうになった。


「様子は?」

「東口から急いで構内に入ったそうです。護衛の竜人の忍者の姿が無いそうです」


「行き先を報告させろ。それと護衛役の港生が合流したら直ぐに報せろ」

「はっ!」


 デスクの主だけになったのか、部屋の中を誰か1人が歩く音が響いた。


「共産主義者共め」


 軽くタメ息を吐きながら、椅子に座る音が聴こえた。


(出れねえ……し。ここ、警察署か!)


 今更ながら忍び込んだ建物が警察署、おまけに特高警察が使っているフロアだと気付き、港生は震え上がった。




『まもなく中華街〜、中華街〜』

 地下鉄で移動しているトマシュとイシスは港生の家が在る中華街の駅で一度下車した。


「ん〜」

「どうしたの?」

 イシスが何か考えているのか、猫の尻尾をフラフラと振り始めた。


「うん、ちょっと、おトイレ」

「ん?ああ……」


 トマシュも駅内のトイレに向い、イシスが女子トイレに入るのを横目に男子トイレに入り個室に籠もった。



「便所か」

 2人の後を追っていた特高警察の私服刑事は2人がトイレに入るのを確認し、通路をから出入りする人が確認できる場所で新聞を広げ出てくるのを待ち始めた。

 待ち人をしている様にしか見えないように目立つ場所に敢えて立ちつつ、なるべく印象に残らない様に努めつつ刑事は待ち続けた。



「……2人は?」

 10分経ち、後続の列車に乗ってやって来た応援の私服刑事が小さい声で聞いてきた。

「便所だ。10分近く入ってる」

「……そうか、ちょうど我慢してたんだ」


 応援の刑事は男子トイレに向い歩き始めた。


「……」

 男子トイレに入ると左手に洗面台が2つ、小便器が3つ並び。右手には個室が3つ並んでいた。


(色男はデカイ方か)

 個室の一つが閉じており。誰かが入っているのが予想できた。刑事は小便器に向い、自分の用事(・・)を済ませつつ聞き耳を立てた。


(……?)

 特に物音が聴こえず、用事が済んだ刑事は個室の扉の下部をから靴が有るか確認した。


(誰も居ない!?)

 靴が見えなければ可笑しいのに、洋式便器しか見えず。刑事は個室の扉に手を掛けた。

 すると、個室の扉は鍵が掛かっていなかったのか簡単に動き扉が開いた。


「うっ!?」

 突然、背中を蹴り飛ばされ、刑事は個室に押し込まれた。

「くそ!」

 慌てて出ようとしたが扉が閉められ、扉がピッタリと張り付き全く動かなくなった。

「つめて」


 隣の個室に潜んでいたトマシュが頃合いを見て、刑事を閉じ込め、扉を氷で完全に塞いだのだ。


 刑事が個室の上部から脱出するまでの時間を稼いだトマシュはトイレから飛び出し、イシスとともに駅の外へと早歩きで向かった。

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ