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消えた列車

「ケシェフで発覚した魔王様への暗殺計画ですが、ドワーフ領に向かうため、トビー山脈の国境地帯を抜ける際に襲撃するという計画でした」


 ケシェフで撮影された書類や地図をプロジェクターに写しながらFBI長官はニュクスに報告を始めた。


「武器と書類からアルターの国家保安省の工作員だと推定されます。親衛隊及びシークレットサービスには通報済みですが、現在の状況は判っておりません」

 魔王の動きはFBI長官も把握出来ていないので、警護を担当している関係機関に通報はしたが、特に返事も返って来ていない状況だった。


「確かに兄は今朝カエサリアを出発し、今夜にはドワーフ領に到着する予定ですが……」


 だからこそ謎だった。今回の外交訪問はニュクスを含め、同伴する政府高官達と警護担当のシークレットサービス、親衛隊だけで、同行している記者達は“魔王が訪問する事”を知ったのは駅に着いてからだった。

 だが、暗殺計画が練られ始めたのは3日前。ニュクスが魔王の訪問を聞いた昨日より前に計画されていたのだ。


「内通者の情報は?」

「未だ詳細は……」


 3日前以前に外部に情報が漏れたとしたら、政府高官かその周辺から漏れた可能性しか考えられなかった。そうなってくると、今回の訪問の目的である、エバン・レフ博士を含む物理学者達の身柄の移動も漏れている可能性が高かった。

 それどころか、存在自体を秘匿している一連の核開発施設や軍中枢の動向が敵に知られているとしたら……。


「それと、今回ケシェフでの捜査が始まったきっかけの通報は公衆電話からの匿名の通報ですが。今朝、誰が通報したかは判っていません」

「場所は何処から?」


「ビトゥフの駅に設置された公衆電話でした。ですが、早朝の人が多い時間帯だったため有力な目撃情報は有りませんでした」


 監視カメラなどなく、周辺に居た人物から目撃情報を集めたがコレと言った情報は無かった。

「交換と電話を受けた捜査官からの聞き取りで判明したのは“通報してきたのは男性だった”と。現在判明しているのは以上です」


「……各地で起きた爆発との関連性は?」


 カエサリア市街地と郊外の軍学校で起きた爆発の他に、人間の領地でも複数の爆発が有ったことをアルターの国際放送は繰り返し報道していた。


「今のところは何も。ケシェフで押収した資料をカエサリアに輸送後に詳しく調べます」





「何処に連れて行かれるのかしら?」

 ゆっくりとした速度でディーゼル機関車に押される魔王専用列車の中。人猫の女は車両を縦断する通路の真ん中で尻尾を左右に揺らしながら呟いた。

「それより倒さないんですか?」


 サンドイッチを頬張りながら、別の人猫の少女が質問してきた。


「そうねえ……」

「なんでしたら、私が1人で行ってきますので姉様は待ってて貰えれば」

 相手は20人程おり、銃を持っているのに対し、人猫の少女は剣を2本腰に差しているだけだった。


「余計な事はせんで良い」

 不意に魔王の執務室のドアが開き、魔王が顔を出した。

「大方、奴らの拠点に運ばれる筈だ。それまで大人しくして居れ」

 それだけ言うと、魔王は扉を閉め。再び部屋に籠もった。


「ベーっ。ずっと寝てたくせに」

 人猫の少女は舌を出し、悪態を吐いた。


「乗り物酔いよ、あの人弱いから」




「何処まで行くんだよ……」

 ディーゼル機関車から見られない様に、距離を置いて後を追うマリウシュは枕木の上を走りながら言葉を吐き出した。


「そろそろ国境じゃないか?」

 右手には遠くのビトゥフの街並みが確認できる程、山を登っており、正面にはドワーフ側の軍事施設の大型アンテナが見えてきた。


「ああ……、ドワーフ海軍の基地が見えて来たな」

 山脈の北側を飛ぶ飛行艦や飛竜に位置を報せる、誘導電波を飛ばすアンテナの1つで存在は最近まで秘匿されていたのだが、後から建設された鉄道をどうしても近くに通さなければいけなくなり、今では人狼側にも施設の存在自体は広く知られていた。


「何だっけ?気象台だっけ?」

 判る人が見れば、指向性の強い電波を飛ばす施設だと判るが、一般には気象観測用の機器を気球で飛ばし電波で数値を読み取るラジオゾンデの受信施設だと噂が流されていた。


「え……?ああ、うん……」

 なのでカミルは知らないが、施設の警備の為に国境警備の陸軍とは別に海軍陸戦隊が周辺を警備していた。そう考えると、襲撃者達がこのまま国境まで進む事は考えにくかった。


「おっと!」

 緩いカーブを曲がった先に人影が見えたので、先に気づいたカミルがマリウシュの肩を掴み物陰に引き込んだ。


「2人。半自動小銃を持ってる」


 耳を手で抑えながら、マリウシュがゆっくりと顔を出すと、アルターの人民軍が被る東ドイツ人民軍と同じデザインのヘルメットを被った兵士が2人線路脇に立っていた。


「何やってるんだ?」

 ディーゼル機関車や魔王が乗っている筈の列車は見えず、兵士が2人立っている理由が判らなかった。


「見張りにしては……あれ?」

 カミルが頭を上げると、兵士が消えた。


「なんか引っ込んだな」


 マリウシュが答えると同時に、視界に蒸気機関車が飛び込んできた。


「貨物列車だ!」


 線路のすぐ脇に居るマリウシュとカミルが慌てて飛び退いたが、蒸気と線路に敷かれた砂利が2人の尻尾や背中に当たった。


「此処は単線だろ!?列車は何処に行った!?」


 襲撃された地点は工事が完了していたが、国境付近のこの辺りは複線化工事が済んでいない。それなのにドワーフ側から貨物列車が現れたのだ。魔王が乗った列車とディーゼル機関車が貨物列車とすれ違うのは物理的に不可能だった。


「国境を越えたのか?」

「そんな筈はない……何か見落としてるんだ」

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