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避難開始

「エミリア、何の騒ぎ!?」

 魔王城の中で部族長の息子の1人、マリウシュを捜していたエミリアは、仲の良かった城の侍女に話し掛けられ足を止めた。


「火事だって聞いたけど、兵士の人は何も教えてくれないし。港の方で何か爆発してるけど、それも教えてくれないし」


 話している間も爆発音が聞こえ、2人は反射的に耳を立てた。


「私も判らない……。お父様に外交官の人達が居なくなった話をしたら、“マリウシュと地下に行け”って言われて」

「地下?」


 普段、地下には入ってはいけないとキツく言われているので、エミリアの説明に侍女は首を傾げた。


「地下の書庫から南に伸びる地下トンネルが在るんだって。ほら、カミンスキーさんの農場辺りに通じてるって」

「あんな所に?」


 カミンスキーと聞いて、侍女は眉を顰めた。冒険者上がりの若い夫婦が営む農場で、湿地帯をを開拓して綿花やジャガイモ等を街に売っている新顔農家だったが、此処数年変な物を売ってある程度成功していた。噂では夫婦は転生者で、子供と一緒に色々商売をしているようだった。


「皆んなも来るらしいから……。ねえ、一緒に行きましょう。何か……可笑しい。此処に居ても邪魔になるし」


 エミリアに誘われた侍女は後ろを振り返えり、再びエミリアの方を見た。


「待って、この事を皆に伝えないと。先に行ってて後から私達も下に向かうわ」

「判った、でも急いで。私はマリウシュを見付けたら下に向かうから」




「どうなった!?」

 武器庫に通じる通路から、爆風が吹き込んで来た衝撃で、消火にあたっていた兵士達は壁に吹き飛ばされたりして地面に倒れていた。


「武器庫が爆発したようです。幸い、火災が収まったので確認に遣っています」

「部族長、南の火災も武器庫付近からです。コチラと同様で油を撒かれています。現在、消火活動中です」

 南に様子を見に行かせた部下が報告に戻ってきた。


「急いで消させろ……。北街に派遣する大隊の準備はどうだ!?」

「ポーレ第1大隊を中心に準備ができてます」

 無事な武器庫から装備を取り出したが、1個大隊約千人分の装備を用意するのがやっとだった。


「急いで北街に派遣しろ」

 沖に神聖王国の艦隊が現れ、錨地に停泊していた人狼の戦列艦は既に半数が沈むかファレスキの街から退避していた。

 北街に兵士を送るとなれば、魔王城が在る三角州の港近くの橋を使うか魔王城東端の船着き場を使い幅4キロの川を渡る必要があった。

 北街の住民が橋を使って中洲や南街に避難してい事が予想され、応援に派遣する大隊は船着き場から北街へ入る事になっていた。


「マイヤー、ちょっと」

 神祗官に右腕を掴まれ、部族長は人が居ない壁際に移動した。


「何か有ったか?」

「ああ、弾薬庫でだ。下で爆薬とウランを受け取ってた兵士が知らせてくれた。急に荷降ろしの作業が止まったから様子を窺っていると弾薬庫から銃声が聞こえて来たそうだ。その後、爆発が起きたと」


 部族長は周囲の目を気にして周りを見渡した。

「銃声?確かか?」

「ああ、聞いたのは元兵士の転生者だ。間違いないらしい。ウラン鉱石は100キロ運び出せたが地下に運んで実験炉と一緒に処分するようにコーエン博士に指示した」


「判った、そっちも注意してくれ」


 魔王城内に銃は無く、火器の類は前装式の大砲が海に向かって備え付けているだけだった。


(外交官が銃を隠し持っていた?)

 行方が判らなくなった外交官が銃を持っていたのか、あるいは内部に裏切り者が居たのか……。部族長は静かに思考を巡らせ始めた。




「マリウシュ!やっと見つけた」

 エミリアは神聖王国と人狼の仲裁に来ているマルキ王国の外交官の控室で部族長の息子を見つけた。マリウシュは同い年の人間のオリガと椅子に座り2人でお茶を飲んでいたので、エミリアは内心イラッとした。


「エミリア?何の騒ぎ?」

 マリウシュは何時ものトボケた様子でエミリアに返事をした。


「上は大変よ!急いで下に行くわよ」

「下?ちょっと待った、何が起きてるんだ?オリガのお父さんも上に行ったっきり戻ってこないんだ」

 マルキ王国の外交官であるオリガの父親も騒ぎに気付き、他の外交官達と部族長のところに向かった後だった。


「……一緒に行きましょう。下でお祖父様と合流するから、オリガのお父さんたちも来ると思う」

「あ、はい」



「動くな!手を上げろ!」

 急に現れた銃を持った兵士を前にし、部族長は息を呑んだ。

 部下達も呆然とする中、続々と通路から人間の兵士達が現れ。銃剣が着いた小銃を人狼の兵士達に向けた。


「ポーレ族のマイヤー・レフ部族長か?」

 兵士の1人が部族長に気付き話し掛けてきた。


「部下達に投稿するように呼び掛けて貰おう」


 部族長は人間の兵士の数と持っている小銃を観察してから部下達と目で合図した。


「お断りだ」

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