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誘拐

 ヘッドライト。


 割れる馬車のガラス窓。


 馬の叫び声。


 人馬のリー少佐は自身の臀部に衝撃を感じると宙に舞った。


 アルトゥルが乗っている馬車に衝突した自動車がそのままリー少佐に突っ込み、後ろから跳ね飛ばされたのだ。


「がッ……はっ……!」


 道路に叩きつけられ、全身が痺れた。


 交通事故か!?

 そう思ったが、聞こえてきた怒声で事態が飲み込めた。


「……襲っ!」


 護衛の兵士が叫ぶと同時に銃声が鳴り響く。

 リー少佐は身体を動かそうとしたが、呼吸と共に口から吐血し、地面に倒れ込んだまま動けなかった。



「接敵!前方!4人だ!」


 アルトゥルの乗った馬車を前後に挟む形で護衛の兵士達を乗せた馬車が配置されていたが、最初に突っ込んできた自動車は後部の馬車の左側をすり抜けアルトゥルを乗せた馬車にぶつかり止まった。

 その直後、前方を走っていた馬車から4人組の男が銃を手にし降りてきた。


 虚を突かれた護衛の兵士達は馬車を止め、飛び降りると馬車の影に隠れつつM3ライフルを構える。


 最初に襲撃犯達が発砲し、馬が倒された。


 逃走の手段を先に潰したのだ。


 護衛の兵士達は銃弾を浴びないように馬車や扉の影に隠れたが、次の瞬間、()()()()()()


「前方!馬車の中!60口径だ!」


 15ミリ機関銃が襲撃犯を乗せていた馬車の中に隠されおり、それが発砲を始めたのだ。

 護衛の兵士達の馬車に簡単に大穴を開け、扉の影に隠れていた兵士は銃撃が直撃し即死した。


「Men down! Men down!」


 無事だった兵士は、仲間が倒れた事を大声で叫んだが、直後、放り投げられた手榴弾に吹き飛ばされ気を失った。




「ゲホッ……」

 リー少佐は人馬騎兵用の50口径機関拳銃をホルスターから抜こうと悶たが、右手がうまく動かなかった。


「ロ…ン…」


 護衛の兵士達が次々と倒され、アルトゥルの乗った馬車に襲撃者達が近付いてきた。

 バールのようなもので強引に馬車の扉を開き、襲撃者達は中から気を失っているアルトゥルを引っ張り出す。


 アルトゥルの顔を確認した襲撃者達はそのまま追突に使った自動車にアルトゥルを乗せると自身達も乗り込み大通りを南へと逃走していった。


 自動車が追突してから逃走まで5分と掛からなかった。




〈カエサリアタイムズの前で大捕物が有ったと?〉

〈ああ、コーエン博士が公安に追われてたと現地の諜報員から連絡が。それ以降、カエサリアタイムズの社屋から出て来ないそうだ〉


 コーエン博士と接触するはずだった諜報員が他の諜報員とレストランの一室で話し込んでいた。


〈社屋は監視されている訳か〉

〈ああ、FBIも到着し、出入りする人物を監視してる。中に居る協力者の話だと、コーエン博士は明日発行の朝刊の編集に参加してるそうだ。核開発計画の事を新聞社が記事にするんで〉


〈そうかそうか〉


 諜報員からすれば核開発計画の記事化はどうでも良かった。

 気になるのはコーエン博士が言っていた、「爆縮レンズの運び出し」だ。


 コーエン博士は爆縮レンズの開発に関わっていなかった。それがいきなり話題に出てきた上に、運び出しとくれば……。もしや、原爆が完成しつつ有るのか?疑問が残った。


〈記事の内容はどうなるか情報は?〉

〈流石にそこまでは。政治部のデスクには入れないから何とも言えんそうだ〉


 本国に速やかに連絡するべき事態が進行中か、諜報員は見極める必要があった。


〈カエサリアタイムズにまで行ってくる〉

〈危険では?〉


〈危険は覚悟しているさ。博士が何を伝えようとしたのか確かめなければ〉





「市内各所で爆発騒ぎや暴動が発生しています」


 国防総省の地下作戦室に移動した魔王はFBI長官から説明を受けていた。

 コーエン博士がカエサリアタイムズに飛び込んだ前後から、継戦派市民やテロリストによる爆弾騒ぎが発生し魔王達、政府高官は対応に忙殺され始めていた。


「戒厳令を敷いて、軍を投入すべきかと」

 背広を着た陸軍長官に提案されたが魔王は判断を渋った。


 軍政で抑えつけるやり方はどうも好きではないのだ。

 だが、無秩序な状態を放置するわけにも行かず、これ以上混乱が広がるのであれば戒厳令を発動せざるをえないのも事実だった。


「各師団に出動準備を命令してくれ。戒厳令はもう少し様子を見る」

「了解しました」


 突然、火災報知器が鳴り響き作戦室に居る全員が警報機の方を見た。


「なんだ?」

「どうした?」


『火災!火災!……さ…い!エントランス火災!』


 省内の一斉放送で火災を告げる放送が入ったが、跡切れ跡切れで要領をえなかった。


「き、緊急事態です!」


 中佐の階級章を着けた当直士官が作戦室に飛び込んで来るなり叫んだ。


「正面玄関で爆発が有りました!」

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