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ドニーとの遭遇

 杉平幕府海軍が手配したバスからアメリカ海軍の士官4人が降りた。


「来た!ドニーだわ!」


 ドミニカが声を上げた。

 4人は杉平幕府の艦隊司令部にゆっくりと近付いて来た。


「誰だ?」

「最後に降りた少佐です」


 コヴァルスキ大将が尋ねるとアルトゥルが即座に答えた。


「っと、見えなくなったな」


 直ぐに建物の正面玄関から中に入ったため姿は見えなくなったが、アルトゥル達3人は暫く正面玄関を眺めていた。


「間もなく、ハーバー少佐が参られます、此方へどうぞ」


 海野大将の副官に誘われて、3人は作戦室の隣の部屋へと移動を開始した。





『遅くなりました』

『いや、こちらこそ。急な呼び出しに応じてくれてありがとう』


 作戦室の隣の部屋。


 投影機(プロジェクター)の影に隠れながら窓越しに様子を見ていたアルトゥル達はスピーカーから流れてくる声に耳を傾けた。


『大変だったね。ソ連のアクラ級原子力潜水艦に襲われるなんて』

『ええ、とんだ災難でしたが、お陰様でなんとか切り抜けました』


 ハーバー少佐と海野大将が先のアクラ級原子力潜水艦とアンヴィルの戦いについて話し合い始めた。


 といっても、ハーバー少佐が言える範囲での話題にとどまっていたが。


『早速だが、補給に関して話そうと思う』


 海野大将はハーバー少佐と同伴した補給長に書類を手渡した。




「佳代に似ているなあ」

「口元はロン似だけどね」


『食糧、水、ディーゼル燃料については提供できるが魚雷とミサイルは流石に無理だな』


 コヴァルスキ大将とドミニカがハーバー少佐の容姿について話してる間も、海野大将は補給についての話を続けた。




「食糧は何になりますか?」


 ハーバー少佐の質問に海野大将の隣に座る幕僚の一人が書類を手渡しながら答えた。


「小麦粉、パン、肉類、乳製品、魚介類、米まで何でもあります。あと、アイスクリームも」

「アイスクリームもですか」


 幕僚が合図すると、若い兵士が大きなプラスティック製の容器に入ったアイスクリームを持ってきた。


「輸入品ですがヴィルク共和国製のアイスクリームになります。これを希望する量まで……」


 若い兵士が小皿にアイスクリームを盛り始め、ハーバー少佐達に配った。


「どうぞ、お食べください」


「いただきます」


 ハーバー少佐は一口、アイスクリームを口にするとゆっくりと味わった。


 非常にコクが有り、アメリカ本国で食べるアイスクリームと遜色は無く、ハーバー少佐は気に入った。





「アレ、海兵隊向けのアイスクリームよね」


 ドミニカがアイスクリームのパッケージを見て気付いた。


「そうだな。大方、カエちゃん辺りが提供するように指示を出したんじゃないか?」


 酪農が盛んなヴィルク共和国南部のメーカーが軍に販売している製品で、陸軍にも納品されていた。

 ドミニカも好物で民間向けに販売されている物をスーパーで買っては家で食べている。


 そんなアイスクリームが提供できるだけ提供するとなると、長浜に駐留しているヴィルク共和国海兵隊の持ち物だとすぐ判った。




「他にもサイダー類……。コーラとかもあるし、コーヒー紅茶も補給できる」

「なるほど」


 他にも嗜好品が幾つかリストには記載されており、ハーバー少佐達は安堵した。


 



「補給はこのぐらいで大丈夫です。次に修理について……」


 補給の話が終わり、ハーバー少佐は破損したVLFアンテナの修理について海野大将達と打ち合わせを始めた。


「……ちょっとトイレ行ってくるわ」


 途中でアルトゥルがトイレに向かった。


「場所、判りますか?」


 同じ部屋に居た杉平幕府の水兵が尋ねた。


「ああ、出て右だったね。大丈夫、判るよ」


 そう言い残し、アルトゥルは廊下に出た。



『ちょっと、おトイレ借りてもいいですか?』

『ん?ああ、廊下に出て右だよ』


「あ!」

「ロン君がトイレに行ったばかりだぞ」


 アルトゥルがトイレに向かった直後に前世の息子のハーバー少佐もトイレに向かったのでドミニカ達は慌てた。


「どうしよう!?」

「いや、どうしようもないだろ」


 そうこうしている間に、ハーバー少佐も廊下に出てトイレへと向かった。


「はぁ……」


 用を済ませ、手を洗い終えたアルトゥルは扉に手を掛けようとしたが急に扉が開いたので反射的に手を退いた。


「おっと!」

「あっ!」


 アルトゥルが見下す形で前世の息子、ドナルド・ハーバー少佐と向き合ってしまった。



(やっべぇ!ドニーだ!)


 アルトゥルに驚き、ハーバー少佐は目を丸くさせていた。人狼を初めてみたのだ。アルトゥルの頭頂部の耳や驚き膨れ上がった尻尾を見て驚いたのだ。




(デカイ……人……じゃない!?てか、子供か!?)


 自分よりも20センチは背が高い割に、まだあどけなさが残っている人狼にハーバー少佐は軽く混乱を覚えた。


(階級は(Lieutenant)(General)!?)


 アルトゥルの着ている服がアメリカ陸軍式の制服に中将の階級章だったので、それが余計に混乱に拍車をかけた。


 こんな所にアメリカ陸軍の中将が居るのかと。


 反射的にハーバー少佐が敬礼をすると、アルトゥルも慌てて答礼した。


「失礼」


 お互い挙動不審の状態で、アルトゥルが先にトイレから出た。





「ふっー……(めぇ)った(めぇ)った」

「おかえりなさい。大丈夫だった!?」


 作戦室の隣の部屋にアルトゥルが戻るなり、ドミニカに聞かれた。


「ドニーと鉢合わせしちゃったよ。いや、肝冷やしたわ」

「危ないわねえ」

「いやしかし、バレなかったかい?」


 コヴァルスキ大将は正体がバレたのでは?と心配したが。


「多分大丈夫かと。いや、ジロジロ見られましたけどね。会話はしていませんし」


 そんな事を話していると、隣の作戦室にハーバー少佐が戻ってきた。

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