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艦隊司令部

「ソーナー探知、ソーナー探知。方位2−5−6、固定翼機。ソ連の哨戒機、メイ(IL-38)です」


「ソ連のメイだと」


 アンヴィルのソーナー員が接近してくるソ連の哨戒機を探知し報告したが、艦長は驚いた。


 何処から飛んできたのか?


 先程のソ連アクラ級原子力潜水艦もそうだが、異世界に基地を持っている可能性は脅威だった。


「南へと針路を向けています、遠態勢です」


 自沈したアクラ級原子力潜水艦が発した救難信号にでも反応したのか?

 IL-38は真っ直ぐと南へと飛び立ちつつ有った。


「艦長、浮上を見送りますか?」


 副長のハーバー少佐が意見具申した。


「ああ、潜航状態を維持する」

「アイサー」


 未知の海域で潜航を続ける事自体が不安だった。


 急に浅くなり、船体が海底に衝突する恐れが有るからだ。

 それを防ぐために、事前に測量艦が海底地図を作るのが常だが、此処は異世界である。事前情報なしに航行しなければいけないのは、しょうがなかった。






「着きました」

「うん、ご苦労」


 コヴァルスキ大将はそう言うと黒塗りの車から降り、目の前の艦隊司令部の庁舎へと歩き始めた。


「っしょっと」


 続いて、アルトゥルとドミニカが車から降り、コヴァルスキ大将の後へと続いた。


「ようこそ、お越しいただきました」


 庁舎に入ると直ぐに海野大将がコヴァルスキ大将を出迎えた。

 3人の中でコヴァルスキ大将が1番、位が高いので主賓扱いなのだ。


 因みに、最下位であるドミニカがコヴァルスキ大将とアルトゥルの鞄持ちをする羽目になってしまった。


「わざわざ出迎え、ありがとう」


 外国から大将が訪問するのだ、司令長官である海野大将が出迎えるのが礼儀だった。


「では、此方へどうぞ」


 海野大将の副官が止めていたエレベーターに4人が乗り込むと副官も乗り込み、3階へ昇るスイッチを押した。





「アンヴィルで問題が発生しましてな。ソ連の原子力潜水艦の襲撃を受けました。幸い、撃滅に成功しまし、長浜に向かっていますが」


 海野大将の公室に4人だけになると海野大将が切り出した。


 3人共、驚き声を出せずに居たが、コヴァルスキ大将が口を開いた。

「襲撃……。アンヴィルに被害は?」


「特に報告は寄せられていません」


 アルトゥルは副官が入れたお茶を一口、口に含むと質問した。


「ソ連の原子力潜水艦と言うと、アクラ級かい?」


 ソビエト連邦の原子力潜水艦が異世界から定期的に訪れていることはアルトゥルも知っていた。

 特に、アクラ級原子力潜水艦と強襲揚陸艦型原子力潜水艦がマルキ・ソビエトへ武器を持ち込むのに使われていることを。


 その中で、ロサンゼルス級原子力潜水艦を攻撃出来る艦種はアクラ級原子力潜水艦ぐらいだった。


「ああ、そうだ。今日の朝方、交戦しているのを駆逐艦が発見したんだ。その後、アクラ級が浮上、自沈して事無きを得たが」


「自沈?」


 アルトゥルが聞くと海野大将は右の眉の辺りを掻いた。


「アンヴィルにやられたようでな。乗員が退避後、自沈したんだ。今、駆逐艦が乗員の救助作業を続けているよ」


「現場の水深は?サルベージは可能か?」


 アルトゥルが矢継ぎ早に質問をしたが、海野大将は両手を上げて質問を遮った。


「深すぎて無理だ。それに海底に衝突した影響で放射線汚染された可能性も有るしな。……念の為、ガイガーカウンターを積んだ観測機を現場に派遣して調査しているが」


「で、具体的に何メートルよ?」


 海野大将が無理だと言ったのに、アルトゥルは食い付いた。


「待ってくれ」


 海野大将は自分のデスクに置かれた報告書を手に取るとアルトゥルに渡した。


「1500メートルだったな」



『って話だけど、どうよ?』

『どうってな……』


 アルトゥルからの急な念話に魔王は霹靂とした。


『いやさ、カエちゃんなら海ぐらい割れるんじゃないの?モーゼみたいに』


 アルトゥルが考え着いたのは、魔法で海の水を割りサルベージできないか?と言った突拍子もない思いつきだった。


『出エジプト記のか?』

『あ、やっぱ知ってるのか!』

『当たり前だ!』


 エジプト出身の魔王が知ってて当たり前の話だった。


『で、出来んの?出来ねえの?』


『……紅海を渡る時に海を割り進んだ事はあるが』


『あ、出来んのね。んじゃ、頼むは』


『頼むってな……』


 急にその様な話を振られて魔王は困惑した。



「ふんっ……」


「どうかしました?」


 魔王は自分の執務室で書類仕事に追われている最中だったが、手が止まり溜息を吐いたので傍に控えていたリーゼが声をかけた。


「いや、アルトゥルのアホから急な念話がな」

「はあ……」




『私が、わざわざ長浜沖まで出張る価値は有るのか?』


『あるある、大有。ソ連の最新原子力潜水艦の情報が手に入るんだ。リバースエンジニアリングすればどんなに有益な情報が手に入るか』


『……ふん』


『頼むっての、最新のコンピュータとかの情報が手に入れば飛行艦に積み込めるし、良い事づくめだって』


 そうは言うが、色々と準備が必要な作業になるだろう。

 先ずは、海軍作戦部長や杉平幕府海軍と話し合い手順を詰める必要がある。


『放射線汚染はどうする?』


『まあ、それも含めて調査する必要が有るだろうけど。原子力潜水艦は原子炉区画自体が独立した区画で守られているから大丈夫かも知んねえし。まあ、汚染されてたらそれはそれで現場海域に置きっぱなしって訳にはいかねえだろ?』


『……』


 魔王は暫く考えた。


 “確かに、一計の価値は有るな”と。


 そうなって来ると準備が色々と必要だった。


 海を割るのは出来るとして、どうやって沈没した原子力潜水艦を引き揚げるか?


 飛行艦に大型のクレーンを装備させ、割った海の間に浮かべ吊り上げるか?それとも、自分の魔法で沈没した原子力潜水艦を浮かばせてしまうか……。


『判った判った。コチラで作業を検討しておく』


『お、サンキュー』


『所で、何時帰って来るんだ?』


『午後にはアンヴィルが入港するらしい。……一目、息子を見れたら帰ってくるよ』


『会わんでいいのか?』


『会った所で……。もう違う人生を歩んでるんだ。今更、会った所でな。もう、(おいら)は他人だよ』


 転生した以上、もう他人だとアルトゥル達は考えていた。

 前世の息子の人生に影響を与える意味はないと、考えていたのだ。

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