白魔道士は慈悲知らず
「おい。起きろ」
「か、かんべんしてくれー」
街の郊外に白いローブを血に染めた男が地面にひれ伏すガタイのいい輩の髪を掴みかかっている。
「謝罪なんかいらねーよ。ほれ。出すものだせ」
手をヒラヒラさせ金銭を要求する白ローブの男。
「こ、これしか手元にねぇ」
そういって震える手をポケットに入れ何枚かの札束を渡す。
フンッと叩くように札束を奪い取り、倒れた男を見下ろす。
「ここはなんなのかな?」
そういって倒れた男の靴底をコンコンと叩く。
あああっとしどろもどろとする倒れた男の頭に血塗れの杖が叩き込まれる。
「嘘をつくならもっと上手くつくんだな」
道端に落ちていたナイフを拾い靴底を剥ぎ金貨を引き抜くとポイッと靴を投げ捨てる。
「これに懲りたら襲う相手はよく見てから選ぶんだな。命があるだけ安い授業料だったろ」
そういって血塗られた白魔道士はケタケタと笑い街の中へと消えていった。
『王都レギオン』人間と魔物が対峙するこの世界で人間側の本拠地にあたる大都市には様々な冒険者が集まっている。
英雄へ憧れるもの、一攫千金を夢見るもの、争いのない世界を目指し戦うもの。
そんな中で異彩を放ち忌み嫌われている最強の白魔道士がいた。