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第六話 一か月ぶりに婚約者と再会しました

 

「うっわあああああ・・・・なんだこれ」

「イザベル様、あまり馬車から身を乗り出さないで下さい、危ないです」

「何このとんでもないお城、宝石だらけだよ?施工費いくらかかってんの」

「そのとんでもないお城にこれから住むんですよ」


 騒ぐ私をハンナがたしなめる。


 屋敷を発ってから三日間、エムロード王国へたどり着くまでの旅路は驚きの連続だった。


 残った仕事を済ませる必要があるとのことで、エドワードとアナスタシアは後から向かい、先に私と専属メイドのハンナが数名の護衛を伴いひっそりと出発することになった。

 馬車で屋敷を出発し、すぐに立ち寄った市街地はレンガ造りの建物が並ぶ、とてもきれいな街並みだった。

 女子高生だったらハッシュタグつけてインスタに投稿したいぐらいのお洒落で可愛い景観にはしゃぐ私を、ハンナさんがあきれたような目で見ていた。

 ようやく外に出られたんだから、ちょっとぐらい騒いでもいいじゃない。


 ディアモン王国とエムロード王国は隣接した島国だ。

 それぞれの港までは馬車で移動し、船で海を渡ることになっていた。


 街を抜けて港までの道のりでは、畑や牧草地ばかりで、農民達が熱心に働いていた。

 そんな牧歌的な景色を見続けていたから、てっきり港も静かな雰囲気かと思いきや、二日間かけてようやくたどり着いた港はとても大きく、何百という船が寄り付き何千もの商人がいきかう活気ある場所だった。

 ディアモン王国含め金の国は皆、貿易業が盛んだそうで、港町の賑やかさはエムロード王国も同様だった。

 金の国で最も力のあるエムロード王国の港は、世界中の貿易船が停泊し、ここで手に入らない物はないとまで言われているそうだ。


 港町を抜けた私達は、再び馬車に揺られ、エムロード王国の首都エルランドを目指した。

 次々と現れる見慣れぬ景色とハードな長旅に段々と言葉少なになっていたけど、エルランドにそびえ立つお城を目にした瞬間、私は思わず疲れが吹っ飛んだかのような叫び声をあげていた。


 という訳で、話は冒頭の場面に戻る。


 アラン王子や今の金の国の王様が住んでいるエムロード王国のお城、エムロード城は、おとぎ話に出てくるような、いくつもの塔が並んだ外観をしていた。

 驚きなのは、屋根や窓枠が色とりどりの宝石に覆われていることだ。

 丁寧にカッティングされた宝石は日の光に当たってキラキラと反射し、眩いばかりの輝きを放っている。

 この光景、私が女子高生だったらハッシュタグ百個ぐらいつけてインスタに投稿するし、ものすごい数のライク貰えるに違いない。


「ディアモン王国のお城も十分豪華だと思ったけど、このお城は更にすごいね・・・」

「エムロード王国は、大地のほとんどが地下に何らかの鉱石を有していますからね。有り余るほどの宝石を保有しているんです。イザベル様も、王妃になられた暁には好きなだけジュエリーを身に付けられるはずですよ」

「いや、私は別にそういうアクセサリーはそこまで興味ないかな」

「今から遠慮してどうするんです。貰えるものは貰っておかないと」

「ハンナ、大阪のおばちゃんみたいなこと言うね」

「オーサカ、が何かはわかりませんが、悪口を言われたことはわかりました」

「ごめんなさい」


 今回の旅はほぼ二人きりだったので、ハンナとの仲は大分打ち解けたものになった。

 屋敷にいた時は私が一人で情報収取に没頭していたし、他の使用人を差し置いて自分だけ気安く話すわけにもいかなかったようだ。

 何にせよ、他愛ないお喋りをする相手ができて良かった。

 以前の「ご令嬢のモノマネ」発言で薄々察してはいたけど、ハンナの素はその清楚な美人ぶりに反してかなりサバサバした男らしい性格で、話していてとても楽しい。

 勿論メイドと主人の距離感を弁えた上で、思ったことを率直に伝えてくれるので、まるで友達ができたみたいだ。

 元の世界では仕事ばかりで、いつの間にか業界の関係者としか話す機会がなかったからな・・・


「イザベル様、そろそろ城下町に入りますので、身支度を致します」


 仕事漬けだった日々を思い出してぼんやりとしていると、ハンナが馬車の窓を閉め切り、ブラシを取り出して私の髪を梳き始めた。


「ええ・・・そこまで気合いいれなくても」

「いけません。アラン王子を始めエムロード王国の重鎮たちがイザベル様にお会いするために待っているのですよ。せっかくお美しくお生まれになったのですから、持てる武器は最大限利用しないと。第一印象は大事です。・・・目を閉じて下さい」

「あ、はい」


 いつの間にか髪を整え終わったハンナは、化粧品セットを取り出し、私の顔にファンデーションを塗り始めた。

 馬車は少なからず振動もあるのに、器用な芸当だ。

 満足のいく仕上がりになったのだろう、ハンナが笑顔でメイク道具を片付けているのをぼんやりとみていると、ゆっくりと馬車が止まり、扉がノックされた。


「イザベル様、ドアをお開けしても?」

「はい」


 外から聞こえる男性の声に慌てて返事をすると、ゆっくりと馬車の扉が開いた。


「お久しぶりです。イザベル様」

「アラン王子?」


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