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第二話 スカウトした金の卵はモノホンの王子様でした

 

「あなたはアイドル界のトップを目指せる器よ。私の事務所に来ない?」

「え、えーと・・・?」


 がっしりと両手を握りしめて若者の目を見つめると、困惑した表情でオロオロしている。

 心なしかうっすらと頬が赤い。


「うん、照れた顔もすごくいいわね。このままドル誌の表紙でも飾れそうな、」

「お嬢様!何をしていらっしゃるのですか!!」


 看護師さんが無理やり間に割って入り、引きはがされた。


「看護師さん、邪魔しないでください。私はとんでもない才能を見つけてしまったの。逃すわけにはいかないわ。ねえあなた、アイドルに興味はない?・・・もしかして、もう他の事務所に所属しちゃったりしてる?」

「あ、あの、僕は・・・」


 スカウトは最初が肝心なのよ。

 熱意と期待を全身全霊で見せつけて、こちらの本気を示さないと、芸能界入りなんて人生を左右する決断してくれない。

 気が付くと看護師さんに羽交い絞めされていたけれど、構わず若者に話しかける。


「その笑顔を見て確信したの。あなたは、いずれ沢山の人に愛される存在になれるわ」

「愛される・・・?僕が・・・?」


 ずっと困った顔をして俯いていた若者が顔を上げた。

 私の言葉の何かが刺さったようだ。


 チャンスね。畳みかけましょう。


「そうよ。私に任せてくれれば、10年、いや5年以内にはスターに押し上げてみせる。”天下統一”ってアイドルいるでしょ?彼らのマネージャーを務めているのが私なの。あなたも、彼らに匹敵する才能がある」

「天下統一?なんですかそれは」

「え?知らない?・・・そっかー、あなたのような若い人なら当然知ってる存在になったと思っていたのに。私の認識不足ね」


「・・・あの、お嬢様」


 看護師さんが羽交い絞めしながら困ったように発言した。


「先ほどから何を仰られているのです?」

「だから、彼をアイドルとしてスカウトしているの」

「その、あいどるとは何なのですか?」

「え?」


 ようやく私は、その場にいる全員が「さっぱりわからん」という表情をしていることに気づいた。

 ついでに、この部屋はどう考えても病室とはいえない、豪華絢爛な屋敷の一室であるということにも。


「お嬢様、どうも現状を理解されていないご様子なので申し上げますが、お嬢様は一週間前何者からお食事に毒を盛られ、今日までずっと眠っておられたのです」

「毒?いや、私は通り魔にお腹を刺されたんじゃ・・・」

「いいえ、毒です。一時は生死の境を彷徨う大変危険な状態だったのですよ」


 看護師さんが断言する様子に気圧され、羽交い絞めされた状態でどうにか腕を伸ばし、咄嗟に寝間着をまくり上げて腹部を見る。


「傷がない・・・」


 通り魔に深々と刺されたはずの傷はどこにもなく、そこには真っ白で綺麗なお腹があった。


 ていうかむしろ綺麗すぎない?

 白すぎない?

 アラサーの腹部には見えなくない?

 しかもこの着せられてた寝間着、患者の服にしては妙に質が良いような・・・


「イザベル!何をしているの!殿方の前ではしたない!」


 突然、背後から女性の声がした。

 振り向くと、先ほどからベッドのそばでへたり込んでいた外国人男女がこちらを見ていた。

 男性は30代後半だろうか、ぴっちりとセットしたオールバックに、豊かな口ひげを蓄えている。

 そして、声の主の女性はというと、栗色のロングヘアが良く似合った美人だ。

 年は私と同じくらいかな。

 さっきの大声と言い、とてもご機嫌がよろしくない様子だ。


 二人とも、中世の貴族のような服装をしている。

 そういえば、若者も王子様みたいな恰好だし、看護師さんの服装もどちらかというとメイドさんに近い。

 なに?コスプレ大会?


 そんなことを考えていると、女性が猛然と近づき、寝間着を摘まんでいた私の腕を引きはがした。

 男性の方は若者の下へ向かい、いきなり頭を深々と下げた。


「殿下、娘が大変失礼を致しました。どうやら本人は目覚めたばかりで混乱している様子ですので、ご容赦頂きたい。回復致しましたらまた後日お詫びに伺いますので、誠に申し訳ございませんが本日は・・・」


 いまこの人、私のこと娘って言ったよね?

 私の父親こんなダンディなおじ様じゃないんだけど。茨城のレンコン農家ですけど。


「あの、気にしてないです。いくら婚約中とはいえ、妙齢の女性の寝室に不躾に入った僕がいけないんです。こちらこそすみません」


「婚約中?」


 若者から飛び出した単語に思わず声をだした私に、父親を名乗る男と若者が振り返る。


「あの、婚約中って、あと私のこと娘って言ってましたけど、なんのことですか?」


 そう質問すると、その場にいた全員がピシリ、と固まった。


「・・・もしや、イザベル様はご自身の記憶が不明瞭になっておられるのかもしれません」


 最初に口を開いたのは看護師さんだった。

 看護師さんは、羽交い絞めを解き、私の前に立ち、真っ直ぐ目を見て告げた。


「イザベル様。あなたはそちらにいらっしゃるベルナルド公爵とその奥様の一人娘、イザベル・ベルナルドです。そして、この方はエムロード王国の第一王子、アラン・エムロード様。あなたの婚約者です」


「・・・・・へ?」



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