第2話 クズ、罪をおかす
第2話です
あんまり自信ないけど頑張って書きました!
努力は評価対象外ですか、そうですか
まぁ、できれば読んでください
意見もあったらお願いします、反映するかはわからんけど
ツイッターで人型ヒューマンって検索したら出るから
瞬きの間もなく視界は緑と空の青だけに
直後に視線は急転直下し、ケツに痛みが走る
パニックになっているところに更に追い討ち。
日本では見る機会の少ない、ましてや引きこもりでは決して本物を目にする事などない、だが見慣れた大型の草食獣。
馬が目の前に。
驚きのあまりあたふたしていると
「落ち着いて下さい!」
と、既に聴き馴染んだ声が
「ねぇ、1地方とはいえ、俺、領主だよね?
なんで野原にほっぽりだされてるわけ?」
「理由はわかるはずですよ?」
・・・なんだコレ?
知らない記憶が沢山
思い返せば思い返すほどに身に覚えの無い記憶がはっきりと
たしかに経験したモノとして溢れてくる
あぁ、俺は今18歳なのか
18年分の記憶がそのまま追加されてるな
と確認し、直近のモノを思い出す
「奴隷の取引に向かう途中、と」
なんで落馬したところからなんだよふざけんなよ
「そういえば前の世界の俺はどうなったの」
馬に乗り直しながら訪ねる
知ったところでどうとも思わない、ただなんとなく、聞いただけ
「部屋で心臓麻痺で死にました」
攻撃に当たって死んだんじゃないのかよ
「ふーん、そうか」
一応、親孝行は果たせたんだな
あ、葬式しなくていいよって遺書ぐらい残してくれば良かったか。まぁいいや
と、下らない思案をしながらも、また一つ疑問をぶつけてみる
「で、お前はこっちでどういう扱いなの」
曲がりになりにも神な訳だし
「あぁ、奴隷商と合流する直前に消えますよ。
神ですし」
領主が護衛も付けず、1人で出歩ける程の平和
元いた世界とは違う事ぐらい、無知でも理解できる
「山賊とか野盗とかもいないわけ?」
「いますが、この辺は安定してますね」
それを自分が崩す・・・
戦争になれば合法、非合法問わずそういう連中は掃いて捨てるほど湧くだろう。
前方にゆっくりとこちらに向かってくる馬車の一団が見える
「あれか?」
前を向いたまま質問をする
しかし返答は無い
「おい、こら、おま」
先程までソレがいた方を向き食いかかる
しかしそこには何もいなかった、思ったより消えるのは早かったようだ。
用心深いのか、それとも気まぐれなのか
「これはこれは領主様!わざわざお出迎え頂いてありがとうございます!」
フィクションで見てきた奴隷商人とは真逆と言っていい程穏やかで穏和そうな笑み
「うむ、早速商品を見せていただこう」
その穏和そうな笑みが一転、少し暗く怒りの混ざった細い目に変わる
所謂、睨まれている。という状況だ
お?俺領主やぞコラ
などと心中で悪態をついていると向こうから原因を語り始めた
「あの、領主様に失礼とは思いますが、その・・・奴隷とは言え、商品という言い方は・・・」
奴隷商人の癖にめちゃくちゃいい奴じゃん
しかし、猜疑心の強さは随一、何か裏があるのでは、と詰めよってみる
「ほう、奴隷に人権があると?温情をもって接するべきだ、と言うのか?」
なんだこの喋り方、でもつい、なっちゃうんだよね
「じんけん?はわかりませんが、皆事情がありここに来た者達ですので、温情は必要かと存じます」
人権がわからない・・・?
腐っているのかまたは綺麗すぎるのか、恐らく後者だろうな
「まぁ良い、奴隷を見せてもらうぞ」
面倒くさいことは全て有耶無耶に、後回しにする悪い癖を出している事に無自覚のまま
馬車の天幕をめくり中を覗く
案の定というかなんというか
服は安物で質が良い、とは言えないが
本人達に傷はなく枷も付けられておらず、それなりに清潔にされていた
「ふむ、問題ない様だ、買わせてもらおう」
「かしこまりました、代金の方なんですが金貨480枚になります」
おぉっとぉ!?
そんな金持ってないぞ!?ってか支払い終わってないんだ!?
過去の自分が金も持たずに来た理由を知るべく記憶を探る
なるほど、領土へ向かう途中で自らが治める土地の事、自分の事、風習や礼儀を説明し、親睦を深めてから領土に迎え入れる予定だったようだ。
なに、親睦を深める方法はそれだけじゃない
少し趣向が変わるだけだ、親睦を、深めようか
悪い笑みを浮かべ奴隷の方を向いたまま商人の方へ話しかける
「我が領地に着いてからでも構わんか」
「へい!かしこまりました!」
馬車に乗り込み、奴隷達に耳打ちをする
「おい、ウチで雇用してやる、御者や商人を殺せ、他の馬車も全部だ。罪は不問だし褒美も取らせる、やらないと言えばこの馬車はウチに着いた瞬間に行方不明、名簿から調べたお前らの故郷も病災が襲うだろうな」
馬車の中が少しざわつく
1人が唾を呑み、飛び出す
他にも、30人ほど続く
馬車に乗っていた全ての奴隷が一斉に飛び出し
奴隷商人、それから御者、寄ってたかって素手で殴り殺していく
他の馬車の奴隷も怯えた目で暴行に加わっているから上手く伝えてくれたのだろう
血の匂いが充満して、気持ち悪い
めちゃくちゃ生臭い
奴隷の中でも何人か吐いているのが見える
自分のところから死体が直接見えないのが唯一救いである事に気付く
さすがに現代日本人には刺激が強すぎる
しかし、これで初期投資無しで人材を手に入れる事に成功した
「よーし、全員並んでー!」
掛け声と共に周りに集まり始める
整列は、できんか・・・
自分も襲われるかと思ったが、帯刀もしているし、何より権力者だ、商人が死ぬのとは訳が違う
「死体を埋めるぞ!」
の掛け声で穴を掘り始める
1.2時間ほど、少し急ぎではあるが日が暮れる事もなく、目撃者も出さずに全部できた
「結構馬車の運転ができる者は多いのだな」
出来るだけフランクに、何事も無かったように話しかける
「はい、ほとんど皆、農村の生まれですから。
しかし、何故こんな事に・・・」
「こんな事、とは?」
まだ確認は取れていないが自分には権力がある、らしい
この程度の殺しなら揉み消せるだろう
「人殺しです、いったい何故・・・」
治安が良い、というのは最初は厄介かもしれない
人が死ぬところを見た事が無かったのは自分もこの人達も同じなのだろう
「その辺は帰ったら話す、さっさと帰るぞ」
「はい・・・」
それぞれがまた馬車に乗り込み帰路に着く
部屋から出なかったからこういう、アウトドアって新鮮ね〜
などと考えながらキョロキョロと景色を眺めながら訓練した覚えは無いが、記憶には確かにある方法で自然に馬に乗っていると奴隷の1人が話しかけてくる
「領主様、馬が疲弊しております、そろそろ休憩を取ってもよろしいですか」
「うむ、良きに計らえ」
人生で言いたかったセリフ言えたぜやった
「泉がありますのでそこで」
「うむ」
あまりに新体験の連続で忘れていた、前の世界から馴染みのある感覚、喉が渇いてる。という事を思い出し
泉に近寄り、身を屈める
水に映るこの金髪イケメンはだあれ!?
ママ!知らない人が
と、またしても半ばパニックになるが、また思い出す
自分で設定したんだった、忘れてたわ
そうかそうかぁ、俺は今イケメンなのかぁ
こちらに来てから何度目かの悪い笑みを浮かべた
「おい、そこの娘」
「はっ、領主様!なんでしょう!」
ナンパ・・・とは少し違うが一般的な価値観で言えば可愛い、に入る部類の女性と話すなど、夢のまた夢の事だと思っていた。もしかしたらこれは夢なのかも知れないが
「私はその、かっこいいか?世辞は抜きで良い」
「ええはい、端正というか、控えめに言っても美男子の類でございます」
「そうか、うむうむフフッ」
こちらに来てから初めての、普通の笑みを発した
「さぁ!帰路に着くぞ!早く帰ろう!」
「「「はい!」」」
馬に揺られる事更に2時間ほど。
記憶によると自分の家だと認識している建物
大きく、豪奢では無いものの堅牢そうな、城
そして堀の外側すぐに奴隷用宿舎
自分になる前の自分が奴隷の為に!と建てさせたレンガ造りの集合住宅が記憶通りある
この記憶は偽物では無さそうだ
検証を重ねてみることは怠らないあたり、猜疑心の強さは変わらないみたいだ
「さて、今回の件だが、口外したものは処刑する
良いな?」
「「「はい!」」」
「そして、あの男を殺害した理由だが、事前に入った情報で族に加担し諸君を法の及ばない相手へ売ろうとしていた事がわかった。諸君を救うにはああするしかなかったのだ。だがその相手も厄介で今は静かに事を済ませたい。すまないな。」
前の世界の記憶、学生時代によく馴染みのある
え?この人何を言っているの?
という空気、嫌な汗と熱くなる顔
それらを振り払うように次の言葉を急いで発する
「み、皆の暮らす場所はここである、入るが良い。部屋は自由に決めよ
業務に関しては明日の朝に説明する」
各々が話し合い適当に部屋に入る
完全に元の世界の奴隷、というイメージは無く
殺人に手を汚した後の倦怠感、以外に疲れの色も見えない奴隷達に違和感を覚える事も忘れて
ただあの空気が去った事に安堵した
が、しかしまずは側近達に話しを通さねば
「奴隷が不法に売り飛ばされそうになっているのを救助、保護した。黙っていて済まない、以前からこのつもりだったが、相手が相手なので黙っていた」
「代金はどうされたので?奴隷商人はなんと?相手とは一体?」
「到着した時には殺されておった」
ザワつき出す側近や従者達
当たり前である
「殺人は重罪です!王都に突き出すべきでは!?」
「この先は我に考えがある、この件は隠蔽せよ」
「しかし!」
スキル発動、権力者の眼光!
と頭の中で叫びつつ控えめにチラッと側近の何とか言う名前の女性の方を一瞥してから
「良いのだ、隠蔽せよ」
と、出来るだけ穏やかな物腰で伝える
「かしこまりました」
自室に戻ってひたすら本を読む、この世界の文化
風習、地理をひたすら調べる
しかしあまりにも違い過ぎた、まるで架空の戦記物を読んでいるかの様だ、が。
今はこちらが現実なのだと、周りの風景に思い知らされる
まず、意味がわからないのは、この国の外が存在しない、と書かれている事。
海に出れば周囲200Km程で霧に包まれいつの間にか陸近くに帰され、陸には硬く巨大な壁があり、壁の向こうは遥か昔から不明との事。
まぁ、これは覚えなくても良いだろう。と男はタカを括った
なぜなら頼まれたのはこの地の文明の発展、この国の中だけで良いのだ。
外の事など、引きこもりだった時同様、気にかけなくても良いのだから、と。
重要なのは国内、この地の事だ
この国はあまりに大きいので分割統治されているらしい
その中の1つが、ここ、という事だ
つまりは、ただ兵を挙げて殴り込むだけではすぐに囲まれて物量で圧殺される
いや、物量だけでは無い
その戦争との馴染みの無さ故に知らないだけで、戦争の才能がある者や戦略、戦術をたてる才能がある者達がすぐに出てくるだろう。
知らないウチに、才能に気付く前に、こちらは万全の容易で臨まねばならない
大義名分を得て、味方を得て
更に言えば文明を発達を発達させる、という目的ならば圧倒してもされてもいけない
膠着状態を作らなければ・・・
難易度、高すぎない?
と、ここに来て気付いた
まずは勉強せねば
知識がなければ現状の把握もできん
ふと、辞書で「奴隷」を引いてみる
〜人間としての尊厳を損なわない程度において私有し労働を行わせても良い人材〜
「俺の知ってる奴隷と違う!」
思わず声を上げる、部屋の中でしか聞こえない程度に
「当然です!あなたの世界の奴隷はひどすぎますよ!」
びっっっっっくりする
自分は声を絞っているのに
大声が後ろから響けば、誰でも驚く
「あのさ、急に出てくるのやめて」
俺の世界。なんて言うのも違うが。
「あ、すいません、ずっと近くにはいたのですが」
ずっと見られていた、それは恐怖に値する
前の世界の自分ならば、だがここではまだ自分は恥じる事をしていない、が、一応確認。
「じゃあ、あの殺しも?」
「はい・・・むごかったですね・・・」
戦争を起こせ。と言って人1人殺したモノの発言ではない
「戦争なんかしたらもっと酷い事になるぞ?」
「文明が発達するなら大丈夫ですよ!」
血も涙もない、コイツは間違いなく、クズだ
「いくつか質問がある、この領地の現状は?」
「そうですね、まず王都ハーヴェンから数えて4番目に栄えています」
「このクソ田舎が!?」
「え、えぇ、そして、治安は良好です、北の領主との仲はやや険悪ですが紛争の1つもなし。
あ、あと特産品は薬草ですよ!よく効くって評判なんです!」
武器ならばこれから必要になるので嬉しかった
食料であれば平時も戦時も需要はある
薬草、戦時中でも大して役に立たないであろうし、平時では尚更金にもならない
質問を変えてみる
「この近辺で1番規模のデカイ野盗のアジトを教えてくれ」
「細かい位置は教えられませんが、北西の山にあるって噂ですよ!」
悪くない位置だ、噂、というのが気になるが
恵まれている事を神に感謝しかけたが
目の前にいるのでバカバカしくなりやめて
ラッキ〜♪くらいの気軽さに切り替えて
「さぁ〜て、明日はお出かけだな!」
男は笑った
期待してた人ごめんね、言うほどクズじゃないね
でも!次から!次からもっとクズにしますから!
仏の面も3度までってね?
チャンスちょうだい?