01
いつの時代も変わらない。
人と魔の関係性は、闘争を持って語られる。
それはこの世に満ちる生命の預かり知らぬ場所で定められた運命であり、刻まれた咎である。
故に、この物語もまた、人と魔の生存を賭けた闘争でもって始まる。
既にその身は満身創痍。
手に持つ剣もまた、最早鈍らと化しており、鈍器として扱った方が敵を屠れる始末であった。
戦意は衰えかけており、平時のような自身に満ち溢れた表情はすでに鳴りを潜め、その顔を彩るのは後悔と焦り、そしていまは絶望へと移行しつつあるのがわかった。
「どうして……!!」
頭の中に浮かぶのはこんなはずではなかったという言葉。
疲労が溜まり、戦い、というよりは足掻きの域に達したその行動ではあるが、それも限界に近い。
――ゲギャギギッ!
どこか嘲るような色合いを含む不快な声が周囲に響く。
いや、響くを通り越して轟いた。
音が飽和して轟くのも無理はない。
いま、自分達は囲まれているのだから。
周囲は何処を見渡しても敵、敵、敵。
故にこの嘲りと感じた声は寸分の間違いなどなく『嘲笑』として溢れ出たものだ。
その声を耳にして湧きあがる感情は屈辱であった。
だが、今はどうすることもできない。
自分達は追い詰められた獲物であり、奴らこそがこちらの生殺与奪を握った狩人なのであるのだから。
「どうするのレオン!!」
「そんなのわかるわけないだろッ!!」
「お前ら、今はそんなときじゃねえだろ!」
「でも……!!」
「今は言い争いをしてる場合じゃないでしょう!!」
背中合わせの仲間たちが賭ける言葉は励ましのものではなく、罵りの言葉。
危機的状況に誰もが混乱し、恐怖し、その責任を誰かにぶつけることで平静を保っているのだ。
今は仲違いをしている場合ではないと分かってはいても、口から出る言葉は思っている事とは異なる。
「どうしてこうなったんだ……!!」
周囲を囲む魔物、コボルトやゴブリンといった低級の魔物の群れの姿を睨みながら、絶望的な現状を呪った。