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玉城さんのお仕事~不良サンタのトナカイ奪還計画~  作者: 沙槻
第3章・拉致られた俺と、拉致しに行ったサンタさん
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玉城さんとの再会 ②


「待てや、コラァ!」


(ひーっ追いかけてきたよ~)


 本気で、祐也は泣きたくなってきた。


「ヤクザの次は、チンピラ集団かよ! 一体どうなってんだ!」


 それはこっちが訊きたい。

 全速力で走りながら、念仏のように、祐也はもはや定番となった祈りを捧げる。


「桐嶋様、御厨様、桐嶋様、御厨様、どうかこの哀れな僕を助けて下さいっ!」

「っせぇよ! お前、いっつもピンチになるとその呪文唱えるのやめろ、夢に出る。つーか、桐嶋と御厨って誰だ?」

「俺の友人です! 二人とも悪運が強くて、名前だけでも効果がありそうなんで」

「あぁ?」

「特に桐嶋なんかは、人を惑わせて困るのを上から楽しんで、ニヤニヤしながら観察して、つんつんつついて遊ぶのが好きな天上人です」

「……お前の友達すげぇな」


なんか引かれた気がしたが、今はそんなのどうでもいい。


「こっちです」


祐也は、さすがに疲れてきた足を叱咤激励して、玉城さんの手を引いた。わざと角をぐねぐね曲がって、目的地まで玉城さんを引っ張る。


「おい、どこに行くつもりだ」

「かくまってもらえる所ですよ」


言いながら、祐也は最後の角を曲がって、すぐ見えたコンビニに飛び込んだ。


「おわっ!」


背後で、玉城さんがコケたが知らない。コンビニの店員の中に、見知った顔を見つけた祐也は、懇願した。


「すいません! ちょっとだけ匿って下さい!」

「あぁ、工藤じゃん。いいよ」


軽く答えた店員は『好きにどうぞ』とカウンターのドアを開けてくれる。すかさず、祐也は玉城さんの襟首を掴んで、レジの下に滑り込んだ。


「痛っ」


玉城さんが勢い余ってレジの壁に額を激突させている。


その間、約4秒。


遅れて来たチンピラ集団は、コンビニに入るも、祐也と玉城さんの姿を見つけられなかった。


「くそっ……いねぇ!」


舌打ちして、バタバタとコンビニを出ていく。

上がる息を整えつつ、祐也は長いため息をついた。逃げ切れた。

心底、ほっとする祐也に


「おい」


低い声がかけられる。見れば、玉城さんがこめかみに青筋を立てて、祐也を睨んでいた。

最初こそ、祐也を引いて走ってくれた玉城さんだが、最終的には祐也に振り回され、コケた上にレジの壁に頭をぶつける始末。


「あー……」


祐也は頬をかいた後、にっこりと笑った。


「すいません。でも、助かってよかったじゃないですか」

「俺のデコと膝は無事じゃねぇんだよ。お前、せめて行動する前に予告しろよ」


 玉城さんには言われたくない。祐也はさらっと流すことにして立ち上がる。匿ってくれたコンビニの店員さんに、丁寧にお辞儀した。


「すいません。ありがとうございました」

「いやいや、いいってことよ。つーか、もう慣れたわ」


言ったのは、祐也の知り合いのコンビニ店員で、制服に身を包んだ黒髪の青年だ。胸の名前プレートを確認すると『山田』となっている。


(今日は山田か)


 この店員、自分の名前プレートをなくしたらしく、辞めていったバイトや社員の名前プレートを日替わりで付けている変わったお人である。ちなみに、前は水上だった。


「慣れただぁ?」


 祐也とは違うところに引っかかった玉城さん(むしろ、それが正常な反応)に、山田はニッと笑う。


「あぁ、何しろ盟華が近いんでな。今日『かくまってくれ』って逃げ込んできたのは工藤で5人目だ」

「ごにん」

「玉城さん、予想外すぎて言葉が頭に入ってないです──俺達が来る前に4人駆け込んで来たってことですか」


 後半のセリフは、山田に向けたものだ。

 まだ夕方で4人は、さすがに多い。しかし、山田は慣れたものだ。しれっと指折り数えながら言う。


「あぁ、桐嶋とかな。高遠はチェーンソー持ったヤツに追いかけられてたし」

「……高遠、それ、生きてますか」

「たぶん。死にはしないんじゃないか」


 すごく心配になった、いま。

 午前中から行方不明の友人の現状に、サッと青ざめた祐也へ山田は思い出したように告げる。


「そういや、御厨も来たぜ」

「御厨が?」

「なんか、イチゴパンツ一丁の男と一緒に、警察から逃げてた」

「…………」


 御厨、君は一体なにに巻き込まれてしまったんだ。


「まぁ、変質者じゃないなら、いいですけど」

「いいのか、それで。つか、お前の友達どうなってんだよ」


 どうとも言えない。


「まぁ、御厨に関して言えることといえば、すごく変質者に好かれやすいってことですかね」

「あいつ、顔だけは儚い美少年だもんな。中学時代にストーカーとか露出狂に付け狙われたり誘拐されたり、まぁ災難だった」

「…………」


 祐也と山田の会話に、玉城さんが黙った。何と言えばいいのか、考えているようだが出てこないらしい。


「まぁ、お前も気を付けろよ」

「大丈夫です。御厨みたいに美人じゃないので」


 肩をすくめた祐也は、脱線しまくった話を戻すことにした。


「というか玉城さん、ヤクザだけじゃなくチンピラ集団まで、俺達を追いかけてくるなんて。どうなってるんでしょう?」

「なぁ、俺ちょっと、トイレ行ってくるわ」


 空気読めよ。

 ため息をつきかけて、ぽいっと白い袋を渡された。


「え、ちょ……」


 慌てて、受け取る。

 玉城さんがいつも担いでいる白い袋は、意外とずっしりと重かった。


「あ、トイレはそっちの棚右に曲がった突き当たりだから」

「へーい」


 山田と玉城さんの会話を聞きながら、祐也はじっと袋を見つめる。


(そういや、高校生助ける時に、袋で頭を殴ったって言ってたよな)


 この重量で頭を殴りつけられて、その人は果たして大丈夫だったんだろうか。祐也は思わず、血痕を探してしまった。そうして、血がついていないことに、本気でほっとする。

 よかった、玉城さんは殺してない。


『嘘だと思うなら、袋の中身をのぞいてごらん。きっと、盗んだ宝石が入っている』


 ハッと祐也は顔を上げた。なんで、いま、それを思い出すんだ。

 祐也は玉城さんを信じている。でたらめな嘘をついて、騙すような人じゃない……でも。

 祐也は好奇心にかられ、ちらりと袋の中をのぞいてみた。




 瞬間、心臓が止まるかと思った。




 中身はプレゼントの箱ではなく、梱包された宝石が、たくさん入っていた。


 よく祐也がピンチになると度々唱えている呪文(お祈り)ですが、あれは現在連載中の他シリーズ『Black*Hero』の主人公の名前です(御厨)。元々、主人公同士が知り合いで特に『Black*Hero~Xmas番外編~』と今作は内容が同日でリンクしていたりします。


 本編が終わってないのでXmas番外編はまだ転載していませんが、その内転載出来たらなーと思います。

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