あなたなんか大嫌いだ
やっぱり短い
「あなたなんか大嫌いだ。」
昔、誰かにそう言った覚えがある。もう何年も前のこと。今でも、心の片隅に引っかかっていて、突然思い出すことがある。
しかし、誰に言ったのかがまるで記憶にない。大事なことだったはずなのに。忘れてしまった。僕はきっとダメな奴なんだ。
大学生になって、環境が変わったせいもあるのかもしれない。山積みになったダンボールが、狭い部屋をより一層狭く感じさせる。僕に考える隙を与えてくれない。
しばらくすると、友人ができた。彼は部屋の片付けを手伝ってくれた。彼は手際良く、全てのダンボールを処理し、溢れた荷物を整理していった。二週間もすると、僕の部屋は見違えるように広くなった。
ある日、友人がプレゼントをくれた。鏡だそうだ。僕の荷物に鏡が入ってなかったとかで、気を使ってくれたのだろう。丸い鏡だった。
鏡を見つめていると、なんだかひどく気に食わない気持ちになる。鼻の上に赤い点があった。少し毛穴が黒ずんでいるような気がする。僕は顔を洗った。そしてもう一度鏡を見る。やっぱり少し黒ずんでいる。
昔、告白して、見事に振られた。そんなことを思い出した。僕の何がいけなかったのだろう。そんなことを思いながら、あのときも鏡を見ていた。ああ、そうだ。僕はそのとき言ったんだ。
「あなたなんか大嫌いだ。」