表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】終わりを望むのは、罪かしら   作者: 楽歩


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

48/56

48.君との思い出 sideコルホネン伯爵

sideコルホネン伯爵




 空っぽになった邸の中を歩き回ると、記憶が次々と蘇ってくる。


 かつて家族と共に過ごしたこの場所は、今や静寂だけが支配している。



 長い廊下を歩くと、昔の喧騒が聞こえてくるかのようで少し微笑んだ。それはすべてが過去のものだというのに。



 広い庭に目を向けると、亡き妻セリーヌと共に散歩した瞬間が思い浮かぶ。


 彼女の手を引き、季節の花を眺めながら、二人で語らった日々が懐かしい。


 庭に面した窓辺では、彼女が微笑みながら刺繍をしていることもあった。別の日には、彼女が異国の本を手に取って、熱心に読みふけっていたこともあった。常に新しいことに興味を持ち、知識を深めていく姿が美しかった。


 二人でガゼボに腰を下ろし、午後のひとときを過ごしたこともあったな。


 お茶を飲みながら、たわいもない話を交わし、二人で生まれてくる子供の名前を考えたあの日々は、今も心の中で鮮やかに甦る。



 セリーヌの瞳に映る未来への期待と幸福感が、昨日のことのように鮮明に感じられる。





 しかし、この屋敷は手放すことにした。慰謝料の足しにするために。領地にも必要なものはそろっている。だから、ここの家財もほとんどは処分した。



 こんな日が来るなんて思いもしなかった。大切にしていたものを失った。


 

 どうせ領地に行けば、ほとんど帰ってこない屋敷。そう、自分に言い聞かせるが、それでも、ここは両親や妻、息子クロードとの思い出が詰まった場所だ。




 



 最後に一枚の肖像画を見つめる。



 そこには愛しい妻、セリーヌが描かれている。彼女は微笑み、私を見つめている。



 他の男の子どもを宿した彼女を、責める気には到底なれなかった。


 他の誰かを私よりも愛したとは思えない。



 クロードを宿したとき、笑顔で報告してくれたが、心は恐怖で満ち溢れていたことだろう。その笑顔の裏には、どれほどの苦悩が隠されていたのだろうか。



 すべては私の過ちだ。クロードを呪わず、私を呪ってくれれば、すぐにでも君の元へと逝ったものを。



 私はそっとその肖像画を壁から外し、慎重に美しい布で包んだ。




「さあ、共に領地に行こう。ずいぶんと待たせてしまったね」



 この肖像画、いや、セリーヌは領地に連れて行くことに決めていた。



 生きているとき、もっと早く領地で一緒に暮らそうと誘っていれば……。


 きっと彼女は付いてきてくれただろう。


 公爵令嬢の彼女には田舎暮らしは合わないと勝手に思い込み、王都に彼女を一人残した私が愚かだった。


 彼女は、身分の低いこの伯爵家に嫁いできてくれたんだ。そんなことは気にしなかっただろう。


 もし、私が正しい選択をしていたら、今もきっと私の傍でほほ笑んでくれていた……そう思わずにはいられない。




 私は心の中で一つの決意を固めた。



 クロードは、愛するセリーヌの子。だが、もう、クロードの幸せを願うことはやめよう。


 私がクロードを愛し、幸せを願うことで、セリーヌが苦しむのなら、彼の幸せを願うことなどできない。



 だから、セリーヌ、どうかクロードのことは忘れてやってくれ。



 これから私は、君と思い出の中で、生きることを誓うから。







評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ