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【完結】終わりを望むのは、罪かしら ~分かっていますか? 貴方が切り捨てたのは婚約者ではなく、ご自身の命です~  作者: 楽歩


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34.魔法鑑定

「うわ、ヴィルがリアちゃんを泣かしている」



 突然の声が、静かな部屋に響いた。セシル殿下だ。


 からかうような調子でそう言いながら、にやりと笑っている。いつの間に部屋へ入ってきたのか、まったく気づかなかったわ。



「……何しに来た」


 ヴィルお兄様が、低く問い返す。




「何しに? 嘘だろ? 今、何しに来たって俺に言ったのか? ……ひでえな。お前が、アルセイン伯爵夫妻を転移で連れて来いって言ったんだろ」


 呆れたような声で、軽く言い放つセシル殿下。


 アルセイン伯爵夫妻……。そうだわ。ヴィルお兄様の実のご両親のアルセイン伯爵夫妻だわ。



 そんなことを考えていると、扉の前に現れた伯爵夫人が、勢いよくこちらへ駆け寄ってきた。そして次の瞬間、私は力いっぱい抱きしめられる。




「リアちゃぁぁぁん」


 あまりの勢いに、思わず体が固くなる。伯爵夫人は目に涙を浮かべ、震える声で必死に言葉を続ける。




「ああ、こんなに痩せて、顔色も悪くて……婚約解消ですって! ああ、あの時無理やりにでも引き取っていれば。何度も後悔したのよ。本当にごめんなさい」


「い、いいえ。私もまさかこんなことになるなんて思っていなくて……ご心配おかけして申し訳ありません……」


 そう答えた瞬間だった。ヴィルお兄様が静かに歩み寄り、伯爵夫人の腕の中から私をそっと引き離す。


 


「……アルセイン伯爵夫人、リアが困惑しています。離れてください」


 少し眉をひそめながら、ヴィルお兄様が言う。だが伯爵夫人は、その言葉に少しも怯まなかった。むしろ呆れたようにため息をつく。


「ヴィル……アルセイン伯爵夫人って……こんな身内しかいない場所で、他人行儀なのは相変わらずね。はぁ……。ああ! それにしても、リアちゃんが来てくれて本当によかった!」


 その様子に、部屋の空気が少しだけ和らぐ。すると、伯爵が穏やかな声で口を開いた。




「まあ、とにかく、ここではなんだ。場所を移してみんなで話そうじゃないか」



 アルセイン伯爵のその一言で、空気が少し和らぎ、わずかな落ち着きが戻る。


 こうして私たちは、改めて話をするために別の部屋へ移動することになった。通された部屋は、落ち着いた雰囲気の客間だった。席に着くと、アルセイン伯爵がゆっくりと口を開く。




「大体は、第5皇子殿下から聞いた。エミリア、本当によく耐えたな」


 その言葉には、深い労わりが込められていた。その隣で、伯爵夫人が悔しそうに眉を寄せる。



「そうよ、魔法の異常な行使をさせるなんて……立派な虐待よ!!」


 厳しい言葉だったが、そこにあるのは怒りだけではない。心配と、私を思う気持ちが伝わってきた。




 そんな二人の様子を見ていると、ヴィルお兄様が、少し間を置いてから口を開いた。


「リア? 実は、リアに提案があるんだ。……魔法の鑑定をもう一度やってみないか?」


 鑑定? 突然の提案に、戸惑いが浮かんだ。



「リアちゃんが鑑定を受けたのは10年以上前だとヴィルから聞いた。今は魔道具も進化し、より詳細な判定ができるようになったんだ。そして、そんな詳細な判定ができる素敵な魔道具を作ったのは、天才であるこの俺だ」


 胸を張って言うセシル殿下。その得意げな様子に、ヴィルお兄様は呆れた顔を向ける。




「こいつの性格はともかく、作る魔道具の効果は皇帝のお墨付きだ、やってみないか?」


「何言ってんだ、ヴィル。俺、性格もいいだろ? とにかくさ、リアちゃんの症状を聞いて不思議に思ってたんだ。いくら闇魔法でも、リアちゃんの魔力量なら、魔力を使ったあとそんなに長く体に影響が出るはずがない。だから調べたい」


 セシル殿下は自信満々の表情のまま、はっきりと言い切った。


 

 少し戸惑いはある。けれど、部屋にいる皆の表情は真剣だった。私を心配して、真剣に考えてくれているのが伝わってくる。その思いに背中を押されるように、私はゆっくりと頷いた。




「……分かりました。やってみます」





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