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箱庭のネメシスは恋を知る  作者: 白鷺凛
旅立ちの日
7/7

現実と決意

はじめまして。「箱庭のネメシスは恋を知る」を読んでくださり、ありがとうございます。


この物語は、地球ごと異世界に転移し、神の箱庭となった崩壊世界を舞台にしたハイ&ローファンタジーです。

少年・国守英世と、感情を知らない人型兵器・イザナギが、神に抗い、人間として生き抜くために戦う物語を描きます。


読者の皆様には、感情の可視化や心理描写、現代兵器と魔法、神話生物のぶつかり合いといった要素を楽しんでいただければ幸いです。


毎日、もしくは不定期で更新していく予定です。

どうぞ最後までお付き合いください。

第七話:イザナギの震えが止まり、静寂が落ちた。

 荒い呼吸を整えながら、目の前の男を睨む。


「……全部話せ。全部だ」


 男は瓦礫に腰を下ろし、深く息を吐いた。


「分かった。まずは、お前の父親の話からだ」


「国守世一。お前の父親は“転生者”だ。

 前の世界のデスゲームの勝者の一人だ」


 胸の奥がざわつく。


「願ったのは“絶対的な権力者になりたい”。

 その願いは叶えられた。五年前、世一は総理大臣になった」


「だが権力を得た世一は、前よりさらに強欲になった。

 国も人も、自分のための道具にしか見ていなかった」


「そして……お前の出生は、もっと酷いものだ」


「世一は昔、不倫してた。その相手との間に……お前ができた」


「世一は後継者なんて必要としてなかった。

 自分の人生に邪魔だった。だから“金を払って捨てた”」


 胸が締め付けられる。


「……それ、夢で見た」


「夢?」


「母さんが“慰謝料いくら?”って言ってた声も、

 父さんが“勝手に育てろ”って吐き捨てた声も、

 押し付けられた日の空の色も、部屋の匂いも……

 全部覚えてる。でも全部“夢”だと思ってた」


「だって誰も覚えてないんだ。

 母さんも、父さんも、俺の記憶を否定した」


「……父親は、お前のことを覚えてるぞ」


 呼吸が止まる。


「世一は転生者だ。神の記憶改変の対象外だ。

 だから、お前を捨てたことも、金で処理したことも、全部覚えてる」


「……じゃあなんで……」


「体裁だよ。総理大臣が“昔捨てた子供”なんて

 スキャンダルになったら終わりだからな。

 だから“最低限育ててます”って形だけ作った」


 乾いた笑いが漏れる。


「……ああ。やっぱり俺は“飾り”だったんだな」


「五年前、世一が願いを叶えた時だ。

 神が世界を雑に書き換えた。

 そのせいで、お前の母親の記憶は“都合よく塗りつぶされた”」


「母親は、お前を産んだことは覚えてる。

 でも“なぜ産んだのか”は曖昧だ。

 慰謝料のためだったことも、押し付けたことも、全部ぼやけてる」


「……だからか。

 俺が何を言っても“そんなことない”って言った。

 俺の記憶の方が間違ってるみたいに……俺を嘘つき扱いした」


「お前の記憶は本物だ」


「昔の女は、世一が総理になったのを見て近づいてきた。

 “もっと金を取れる”と思ったんだろうな。

 ついでに……お前を押し付けるために」


「……あの日のことも覚えてる。

 母さんが俺の手を引いて“あんたの父親のところに行くよ”

 って言った声も」


「記憶改変前は押し付けることすらできなかった。

 世一が権力を持ってなかったからな。

 でも総理になった瞬間、金と復讐のために押し付けに来た」


「次はイザナギの話だ」


「イザナギは神から世一に“作らされた”。

 理由は……異変対策なんかじゃない」


「じゃあ何のためだ」


「神が“ゲームに直接参加するため”だよ。ただの道楽だ」


「……クソみたいな理由だな」


「だが世一は、神の命令を聞きながら別のことを考えていた」


「“もしこの器に神を閉じ込められたら”——そう考えたんだ」


「神を封じて支配し、神の力を自分だけのものにする。

 永遠の権力者どころか“神を超える存在”になろうとした」


「そして……お前が“バグ”になった理由だ」


「お前は願いの前から存在していた。

 だが願いが叶った瞬間、神の雑な書き換えで

 お前の精神構造だけがバグった」


「完全記憶や読心、神の上書きが効かない精神構造……

 全部、神の“適当な調整ミス”の産物だ」


「……俺は神のミスで生まれたってわけか」


「……マスター……私は……兵器として作られました……

 でも……今は……あなたの……兵器です……」


「……それでいい」


 守らないといけないと思った。

 憐れみだろうか? いや、そんな言葉では言い表せない。

 もしくは共感だろうか?

 今の自分にはよく分からなかったが、強い使命感のようなものが生まれた。

 理不尽は大嫌いなんだ。


 赤黒い天蓋。割れた空。神の亀裂。


「父の野心も。神の道楽も。観察者の遊びも。

 全部まとめて——俺が、俺達がぶっ壊してやるよ」


「……やっぱり、そう言うと思った」


第七話:完

読んでいただき、ありがとうございました。


この物語は、少年と兵器が互いに学び、成長し、愛と悪魔性を体験する、残酷で美しい反逆の物語です。

今後も二人の運命、そして箱庭世界の秘密が明らかになっていきます。


作者として、読者の皆様の感想や応援は大きな力になります。

お気軽にコメントやしおり登録、感想をいただけると嬉しいです。


次回もどうぞお楽しみに。

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