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箱庭のネメシスは恋を知る  作者: 白鷺凛
旅立ちの日
6/7

侵入

はじめまして。「箱庭のネメシスは恋を知る」を読んでくださり、ありがとうございます。


この物語は、地球ごと異世界に転移し、神の箱庭となった崩壊世界を舞台にしたハイ&ローファンタジーです。

少年・国守英世と、感情を知らない人型兵器・イザナギが、神に抗い、人間として生き抜くために戦う物語を描きます。


読者の皆様には、感情の可視化や心理描写、現代兵器と魔法、神話生物のぶつかり合いといった要素を楽しんでいただければ幸いです。


毎日、もしくは不定期で更新していく予定です。

どうぞ最後までお付き合いください。

第六話:——目を覚ました瞬間、英世は息を呑んだ。


 胸の奥に、まだ“白い海”の冷たさが残っている。

 観察者の声も、耳の奥で微かに響いていた。


『じゃ、また夢で会おうね〜』


 英世は額を押さえた。


「……クソ野郎が」


 隣ではイザナギが静かに座っていた。

 いつも通りの無表情。

 だが、その瞳の奥に微かな揺らぎがあった。


「……イザナギ?」


「マスター、おはようございます」


 声はいつも通り。

けれど、どこか“ノイズ”が混じっているように聞こえた。


 英世が眉をひそめたその時——。


「英世さん!」


 良空が駆け込んできた。

 美怜も後ろに続く。


「外に……誰かいる!」


 英世は立ち上がり、瓦礫の隙間から外を覗いた。


 そこに——“人影”があった。


 黒いコート。

 フードを深く被り、顔は見えない。


 だが、英世はその気配を知っていた。


「……蓮」


 男はゆっくりとフードを外した。


「やあ、英世」


 良空が叫ぶ。


「蓮兄ちゃん!!」


 美怜は泣きそうな声で兄の名を呼んだ。


 蓮は二人に微笑み、そして英世に向き直る。


「英世。

 お前に話さなきゃいけないことがある」


「……聞かせてくれ」


 蓮は静かに口を開いた。


「まず最初に言う。俺は

このデスゲームが初めてじゃない」


 良空と美怜が息を呑む。


「神は何度も世界を作り直してきた。

 そのたびに“デスゲーム”をやって、

 最後の百人だけ願いを叶えて転生させる」


「転生……?」


「ああ。

 勝者は“望んだ人生”を与えられて、

 次の世界に組み込まれる。

 神が記憶を上書きしてな」


 英世の脳裏に、あの違和感が蘇る。


 ——いつの間にか存在していた人間

 ——後から追加された記憶

 ——世界の整合性の崩壊


「だから“突然現れた人間”がいるんだよ。

 あれは前の世界の勝者だ」


 美怜が震える声で言う。


「じゃあ……蓮兄ちゃんも……?」


「そうだ。

 俺は前の世界の勝者の一人だ」


 良空が泣きそうな顔で兄を見る。


「なんで……言ってくれなかったの……」


「…言えなかったんだよ。

 神の命令でな」


 蓮は苦く笑った。


「神は『勝者』に時々“命令”を与える時がある。

 俺は今回、国守世一とお前を監視するって命令だった」


 英世は睨む。


「じゃあ……敵だったのか」


「違う。

 俺は“人間の味方”だ。

 神の命令もある。

 でも——」


 蓮は英世をまっすぐ見た。


「俺は観察者にも“スカウト”された」


 英世の目が見開かれる。


「……スカウト?」


「ああ。

 観察者は“前の世界の勝者”の中から、

 面白そうな奴を選んで声をかける。

 『次の世界でも暴れてくれ』ってな」


 蓮は肩をすくめた。


「俺はその“選ばれた側”だ。

 観察者にとっての“お気に入り”ってわけだ」


 英世は歯を食いしばる。


「……じゃあ、お前は観察者の味方なのか」


「違う。

 観察者にスカウトされたのは事実だが、

俺は“人間の味方”だ。

 それだけは嘘じゃない」


 蓮の声は揺らがなかった。


 その時。


「……っ……!」


 イザナギの身体がビクリと跳ねた。


「イザナギ!?」


 イザナギは頭を押さえ、膝をつく。


「……内部に……侵入……

 識別……不能……」


 英世が駆け寄る。


「イザナギ!何が——」


 イザナギの口が、ゆっくりと開いた。


『成功!』


 その声は、イザナギの声ではなかった。


 英世の背筋が凍る。


「……観察者……!夢の中だけでしか活動できないんじゃないのか!?」


 イザナギの瞳が青白く光る。


『いや〜、イザナギちゃんの“中”、思ったより広いねぇ。

 精神領域って便利だね〜。

 現実には出られないけど、ここからなら遊べるし』


「ッ……!イザナギから出ろ!」


『やだよ〜。

 まだ“器”としては未完成だけど、

 こういう隙間は大好きなんだよね〜』


「……器?」


『あはは、まだ分かんなくて当然だよ〜。

 蓮、説明してあげな〜』


 イザナギの身体が震え、

 観察者の気配がスッと消える。


 イザナギが崩れ落ちる。


「イザナギ!!」


 英世が抱きとめる。


「…………私は……

 あなたの……味方……」


 英世は歯を食いしばる。


「蓮!どういうことだ!?説明しろ!!」


 蓮が英世の肩に手を置く。


「英世……

 “器”って言葉の意味、

 ちゃんと説明する。

 全部な」


「……今回は生き残れるかなぁ…(ボソッ)」


——第六話:完

読んでいただき、ありがとうございました。


この物語は、少年と兵器が互いに学び、成長し、愛と悪魔性を体験する、残酷で美しい反逆の物語です。

今後も二人の運命、そして箱庭世界の秘密が明らかになっていきます。


作者として、読者の皆様の感想や応援は大きな力になります。

お気軽にコメントやしおり登録、感想をいただけると嬉しいです。


次回もどうぞお楽しみに。

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