干渉
はじめまして。
本日より『箱庭のネメシスは恋を知る』の連載を開始しました。
地球ごと異世界へ転移した少年と、感情を持たない最終兵器の少女。
神が支配する箱庭世界で、二人が「生きる意味」と「心」を探して戦う、ダークファンタジー×ボーイミーツガール作品です。
バトル、陰謀、そして少しずつ芽生えていく感情の物語を、最後まで全力で描き切ります。
できるだけ定期更新していきますので、ブックマークや感想をいただけるととても励みになります。
どうぞよろしくお願いします。
第五話:——気づいた時、英世は“白い海”に立っていた。
空も白。
海も白。
境界が曖昧で、世界そのものが溶けているようだった。
風は吹かない。
波も立たない。
ただ、静寂だけが広がっている。
「……夢か」
呟いた声は、白い海に吸い込まれて消えた。
その時。
海面に、ぽつりと“黒い影”が落ちた。
インクのように広がり、形を変え、
やがて——人の形を成した。
黒い影。
輪郭が揺らぎ、顔は見えない。
だが、確かに“誰か”がそこにいた。
『——やあ、国守英世』
声ではない。
思考が直接、脳に流れ込んでくる。
神と同じ形式。
だが、響きはまるで違う。
軽い。
軽すぎる。
「……誰だ」
『名乗りは不要だよ。
君の言葉で言うなら——“神の同類”だ』
英世の背筋が冷えた。
「神の……同類?」
『そう。
あれは“管理者”。
私は“観察者”。
役割が違うだけで、階層は同じだ』
影は海の上を歩く。
足跡は残らない。
『あの神はね、世界を壊すのが好きなんだ。
私は、壊れる世界を眺めるのが好きなんだ』
「……どっちもクソだな」
『褒め言葉として受け取っておくよ』
影は愉快そうに肩を揺らした。
『さて、英世。
君に興味があってね』
「興味?」
『うん。
私は君たち人類が、醜く、必死に、抗う過程を観てみたいんだ』
英世は眉をひそめる。
『ただ争わせるだけじゃつまらない。
殺し合いなんて、神が飽きるほど繰り返してきた“古い遊び”だよ』
影は手を広げる。
『私は“抗う姿”が見たい。
足掻いて、裏切って、立ち上がって、壊れて、
それでも神に噛みつこうとする——その醜さが美しい』
「……性格悪すぎだろ、お前」
『当然だよ。
私は“観察者”だからね。
綺麗なものより、壊れかけたものの方が面白い』
影は英世の目の前に立つ。
『だから取引をしよう。
君は神を殺したい。
私は神が死ぬ瞬間を観たい』
「……取引?」
『そう。
君が神を殺すのを手伝う。
その代わり——』
影が英世の胸に触れる。
冷たい。
氷のような、虚無のような感触。
『成功したら、君の願いを一つだけ叶えてあげる』
「願い……?」
『どんな願いでもいい。
世界を戻すでも、
死者を蘇らせるでも、
記憶を消すでも、
神の座を奪うでも』
影は軽く笑う。
『“神”ができることは、私もできる。
あれが世界を壊せるなら、私は世界を作り直せる』
英世は睨む。
「……信用できねぇな」
『信用したら死ぬよ、君』
影は楽しそうに言った。
『ああ、そうだ。
ついでに言っておくとね——』
光が揺れ、海面が波打つ。
『君みたいに面白そうなやつ、何人かスカウトしておいた。
せいぜい協力するなり、足を引っ張り合うなり、
私を楽しませてくれよ?』
英世の心臓が跳ねた。
「……他にもいるのか」
『いるとも。
君と同じ“バグ”がね。
神の計画の外側にいる、面白い連中が』
影はひらひらと手を振った。
『一方的なゲームは見ててつまんないしね〜。
対等に足掻いてくれないと、観察者として退屈なんだ』
「……クソ野郎が」
『褒め言葉だね』
世界が崩れ始める。
海が割れ、空が砕け、光が滲む。
『私はまた来るよ、英世。
夢の中でね。
現実に出ると、いろいろ面倒だから』
最後に、ひどく軽い声だけが残った。
『じゃ、また夢で会おうね〜。
次はもっと面白いヒントをあげるよ』
そして、英世は目を覚ました。
第五話:完
今日の話を読んでくれてありがとうございました! ネメシスの世界、少しは楽しんでもらえましたか? 次回もどんどん展開していく予定なので、ぜひまた遊びに来てください!
感想や応援コメントも待ってます。✨️




