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9曲目 領主邸でぶちかませ

 俺を背負ったメロディが領主邸へと連れてこられる。

 俺は背負われているので、メロディの後ろ側を見ている状態だが、兵士たちは特に危害を加えようという雰囲気ではないみたいだ。


(まったく、領主邸に連れてこられるたぁ、面倒話だな。領主っていうのは、言ってみれば県知事みたいね連中だよな。まったくどうなるっていうんだ)


 あまりにも急な話過ぎて、まったく予想ができない。

 背中にいるせいでメロディの表情は分からないが、きっと不安がっているだろうな。


『メロディ、大丈夫か?』


 俺が声をかけるも、メロディの返事はない。

 まっ、しょうがねえか。下手に反応をしたら周りの連中に聞かれちまうもんな。

 どうなるか分かったもんじゃねえから、とりあえず様子をするか。


 俺たちは領主邸に連れ込まれて、かなり立派なドアのある部屋に連れてこられた。


「領主様、街で怪しいことをしていた娘を捕らえてきました」


 兵士はそう言うと、俺たちを部屋の中へと無理やり連れ込んだ。


「うん? なんだ、プレル村のメロディじゃないか」


「お、お久しぶりでございます、領主様……」


 領主の反応は意外なものだった。

 なんだ、知り合いなのか。


「領主様、この娘のことをご存じなのですか?」


「知っているも何も、プレル村の村人は赤子に至るまで全員の顔と名前を憶えているぞ。一応、私の管轄なのだからな」


「さすが領主様でございます!」


 俺たちを連れてきた兵士は、敬礼をして領主を褒めちぎっていた。

 とはいえ、村人はそんなに多い感じじゃなかったが、全員を覚えているってのはすげえ話だな。


『メロディ、ちょっと説明してもらっていいか?』


「この方は、このニシーモの街と、私の村ともうひとつの村を治める領主様です。それは偉いお方なんですよ」


『ふーん。別世界から来た俺には、どのくらい偉いのかあんまりピンとこねえな』


 小声で答えてくれたメロディの話を、俺はほとんど理解できなかった。


「なにを一人でぼそぼそと言ってるんだ、メロディ」


「ひゃ、ひゃいっ!」


 領主から声をかけられて、メロディは驚きで背筋を伸ばしていた。

 まっ、お偉さんに言われりゃこうなるよなぁ。俺も大先輩に声をかけれたら、緊張でよくなったもんだからよ。


「ところで、メロディ。その背中のはなんだ?」


「えっと、これは……」


 領主に尋ねられて、メロディは背中から俺を降ろそうとする。


「領主様、これはいけません」


 ところが、俺たちを連れてきた兵士がいきなり止めに入ってきた。


「どうしてだ?」


「先程、この怪しげな道具を使って、この娘はよく分からない行動をしていたのです。この道具をいじりながら、変な呪文のようなものを口にしていたのです」


「ふむ……」


 楽器を演奏するってのが分からないから、そういう説明になるわけか。本当にこの世界には音楽ってもんがないんだな。

 それにしても、領主ってやつの反応がしばらくないな。唸っているような声は聞こえるんだが、何かアクションが起きるってわけでもない。一体どうしたんだよ、まったく。

 俺は状況がよく分からず、ただ様子を見守るしかなかった。


「領主様?」


 反応なさに、兵士も困っているようだな。

 おい、領主。なんとかいえよ。


「その道具の形、どこかで見たような気がするな……」


「ほ、本当ですか?!」


 領主が反応を示すと、兵士とメロディが同時に驚いた声を出す。

 俺だってびっくりしたさ。俺以外にもギターがあるっていうらしいんだからな。


『おい、メロディ』


「なんでしょうか、リードさん」


『もしかしたら、俺の仲間かも知れねえ。もっと情報を引き出してくれ』


「わ、分かりました」


 俺たちは気付かれないように小声で話をする。俺の頼みを、メロディは快く引き受けてくれた。

 俺がこんな風になっている状況で、俺と同じようなものがあるとすれば、それは俺のバンド仲間であるベス、米須義多の可能性が高い。

 ……って、なんで俺はあいつが俺と同じように楽器としてこっちに渡ってきてると考えてるんだ。まったく、自分がそうだからってあいつまでそうとは限らねえ。


「領主様、その場所を教えていただけませんでしょうか!」


 情報を引き出してくれとはいったが、メロディはドストレートに領主に質問をぶつけていた。


「いや、君のような少女には危険だと思うが」


 領主は渋っている。まっ、十二歳の少女だからな、相手は。

 だがな、ここまで無事に一人でやって来たことを考えてくれよな。何かあっても俺がいるから危険な目に遭わせやしねえ。


『メロディ、さっきの歌をここで披露してやりな』


「はいっ!」


「お、おい、メロディ。何をする気だ」


 急に大きな声で返事をしたから、領主はびびってやがるな。

 だが、俺の声に返事をしたメロディは、まったく臆することなく俺を抱えて演奏の構えを取る。


「さっきの歌でいいんですよね」


『ああ、いっちょ領主相手にかましてやれ!』


「分かりました」


 俺のゴーサインに、メロディは俺を弾き始める。

 これでまだ数回しか触ったことがないっていうんだから驚きだぜ。もうかなり技術をマスターして来てやがる。これが【技術共有】のスキルの影響か。

 唐突に始まった領主邸でのライブに、周りの人間は誰一人として動くことができなかった。

 俺でも感心するくらいの、メロディの歌のうまさだ。動けなくなって当然ってところだぜ。


「ふぅ……」


 演奏が終わり、メロディがひと息つく。

 それと同時に、部屋の外から慌ただしい足音が聞こえてきたのだった。

 一体何がやって来たんだよ。

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