8曲目 災難は続くもの
『はあ、なんでこんなことになっちまってるんだ……』
俺はメロディに背負われた状態で、大きなため息をついている。
それというのも、本当に村を追い出されたからだ。
まだメロディは幼いというのに、まったくこの世界の連中は情け容赦ねえもんだ。
『そういえば、メロディって今いくつなんだ?』
幼いと言ってはいるが、そういえば正式な年齢を知らなかったな。俺はふと尋ねてしまう。
「今年で十二歳です。でも、この世界じゃ私くらいの年で独り立ちも珍しくないので、ちょうどよかったと思いますよ」
『そうか……。ずいぶんと前向きだな』
「えへへへ」
褒めたわけじゃないんだが、メロディはとても照れくさそうにしていた。
『それはそうと、俺のことは重くないか?』
「大丈夫ですよ。このくらいの重量なら運び慣れていますし、リードさんと話していると全然気になりませんから」
『そっか。強いな』
明るく振る舞うメロディと話していると、なんだか俺の方が情けなくなってくるぜ。
『それで、村を追い出されたわけだが、どこか行くあてはあるのか?』
落ち込んでいても仕方ないので、前向きなメロディに今後のことを尋ねてみた。
「そうですね。歩いて一日ほど離れた場所に街がありますので、そちらにお世話になろうかと思います。村にも時々来て下さる方もいらっしゃいますので、まったく知らない場所ではないですからね」
『ほほう。じゃ、それでいこうか』
「はい」
村を追い出された俺たちは、メロディの言う近くの街へと向けてとにかく移動を続けた。
ずっと俺を背中に抱えているというのに、言葉通り、メロディはまったく弱音を吐くことなく歩き続けていた。この世界の子どもはつええな。
そうして、食事などの休憩を挟みながらも、メロディは隣町までの道のりを見事に歩き通してしまった。異世界すげえな。
「さあ、リードさん。ここが私たちの村とも交流のあるニシーモの街ですよ」
『おお、ずいぶんとにぎわってんな』
「私たちのプレルの村から一番近い街ですけれど、大きな街道に面しているので規模がすごいんです」
『おおっ、そりゃすげえぜ』
街の華やかさに、俺のテンションが上がってくるってもんだ。楽しくなって、つい口ずさんじまうってもんだ。
「ふふっ、いいですね、リードさん」
俺の歌につられたのか、メロディは俺を背中から降ろすと、前に抱えて俺の鼻歌に合わせて演奏を始めていた。
ちょこっと教えただけだっていうのに、俺の鼻歌に合わせてメロディを奏で始めている。名は体を表すってか?
そうやってメロディが演奏しながら歌っていると、道行く人たちが足を止めていく。その光景に驚いて、俺は鼻歌を止めてしまう。
ところがだ。驚いたことにメロディは演奏をやめやしない。俺の鼻歌から、音楽を作り出してやがるんだ。
……こいつはとんでもない逸材かもしれないぞ。
メロディはそのまま、キリのいいところまで演奏をしてしまっていた。
「ふぅ、気持ちいいですね、リードさん」
『あ、ああ。そうだな』
演奏を終えたメロディが俺に話しかけてくるが、思わぬ状況に俺は生返事が精一杯だった。
呆然とする俺に、更なる事態が襲い掛かってくる。
「今のは君なのかい?」
「なんなんだい、今のは。聞いたことのないものだったけれど、君が考えたのか?」
「こんな芸は見たことないわ。もっと聞かせてちょうだい」
なんということだろうか。メロディに向かって人が殺到し始めたのだ。おいおい、いい大人が寄ってたかって子どもに近寄ってくるんじゃねえよ。離れろっ、しっしっ!
俺は寄ってくる連中を追い払おうとするが、いかんせん俺は物言えぬギターだ。何の役にも立ちやしない。
いきなり大勢の人に囲まれたメロディも、どうしていいのか分からなくてたじたじになっている。くそっ、どうすりゃいいんだ。
俺たちが困っていると、どこからともなくパカラッパカラッという音が聞こえてくる。
なんだっけか、この音は。
俺が考え込んでいると、その答えが目の前にやってくる。
馬に乗った兵士が俺たちの前に姿を見せたのだ。
「先程の妙な音は、お前が出していたのか」
兵士は馬に乗ったまま問い掛けてくる。なんかやばい雰囲気をバシバシに感じるんだが、どうしたものか。
俺が警戒しているというのに、メロディはすぐに動いてしまう。
「はい、そうです。これは音を奏でる道具でして、それを使って歌を歌いました」
「……ほう」
兵士はそうとだけ答えると、首をふいっと動かしていた。
それを合図にして、部下と思われる兵士どもがメロディに近付いてきやがった。
「領主様のところまでご同行願おう。怪しいことはするなよ?」
「え……。わ、分かりました」
兵士に囲まれたメロディは、おとなしくするしかなかった。
一体俺とメロディに何をするつもりなんだよ。
俺は俺を抱えているメロディと一緒に、兵士に挟まれた状態で領主邸まで連行されてしまう。
くそう、一難去ってまた一難とは、まさにこの状況だな。
街の人たちが心配そうに見守る中、俺たちは領主邸へと向けて移動させられてしまったのだった。




