74曲目 新しい仲間と目覚めぬ仲間
いやぁ、マジで間一髪だったな。
かなりの魔物が大暴れしていたからな。正直言って、少しでも遅れていたら、大きな被害になっていたぜ。
「わうっ!」
俺たちのところに、エーがやってきた。
「どうしたんですか、エー」
「ばうっ!」
フォルテが声をかけると、こっちに来てくれと言わんばかりに振り向いて走り出す。
俺たちがエーを追いかけると、そこにはリリアが倒れていた。
よく見ると、その隣には島を襲っていた鳥の魔物までいやがる。てめえがこんなことをしやがったのか?
ところが、よく見ると隣にはデーもいる。さらによく見てみれば、鳥の魔物も心配そうにリリアの顔を覗き込んでいた。一体どういうことなんだ?
「この鳥の魔物、かなり大けがをしていますわね」
「おそらくは、高い位置から地面に叩きつけられたのでしょう。でも、これだけしっかりと動けているあたり、さすがは魔物といったところですね」
フォルテとモニーが話していると、鳥の魔物がこっちに気が付いて寄ってきた。
「ギャッギャギャッギャギャッ!」
何かを訴えているようだ。
『どうやら、リリアを助けてくれといっているみたいですぜ』
『分かるのかよ、ベス』
『まあ、なんとなくですけどね。でも、確かに心配な状態ですから、一度宿に戻りやしょう。これでは出航なんて雰囲気にはなりやしやせんからね』
「分かりました。では、私がリリアさんを背負います」
ベスとの話を聞いていたメロディが、地面に倒れているリリアを抱え上げていた。
見るからに顔色が悪い。ゴブリンの身でありながら、島を守るためにそれだけ頑張ったのだろう。なら、今はしっかり休ませてやらなきゃな。
俺たちは、一度宿へと戻る。
魔物の襲撃のことで警戒していた宿の主人だったが、リリアの状態が思わしくないことを知ると、さっきまで泊まっていた部屋へと通してくれた。一応、リリアやスフォルたちが戦っていたことを知っていたみたいだからな。
俺たちは宿の部屋へと戻ってきて、リリアをベッドに寝かせる。呼吸は整っているが、顔色は本当にまったくよくない。はっきりいってやばい状態なのはなんとなく分かる。
「魔物ゆえに、私の治療が通じるか分かりませんが、できるだけやってみます」
『ああ、頼むぜ』
「ギャギャギャッ」
なぜか部屋までついてきた鳥の魔物も、モニーにすがるような態度を見せていた。いやまあ、なんとも不思議な光景だな。
モニーは寝かせたリリアに対して両手を広げている。体全体へと治癒魔法をかけるということなので、このような形になるんだとか。どこが悪いのか特定できないなら、その方が無難ではあるだろうな。
モニーの手のひらが光り出し、いよいよリリアに治療が施される。さっきの大規模な結界の魔法を使った後だというのに、よくやるもんだぜ。
しばらくすると、モニーの手のひらの光がおさまり、一応の治療を終えたようだった。
「ひとまず、これで体の状態は問題ないと思います。あとはリリアさんの意思次第でしょう」
『そうか、ありがとう』
俺は素直にお礼を言っておく。なんといっても、この目の前のリリアは、俺の妹の由利でもあるんだからな。身内として、心配しないわけがないんだよ。
俺は、メロディの背中からリリアの容態を心配していた。
リリアの治療を終えたモニーは、今度は鳥の魔物に近付いていく。
「あなたも治してあげましょう。じっとしていて下さい」
モニーは、俺たちについてきた鳥の魔物の傷も治している。お人好しというかなんというか。ケガしたやつを放っておけない博愛主義ってやつだろうかな。だから、聖女なんだろうけどよ。
ケガを治してもらった鳥の魔物は、嬉しそうにバサバサとしながら、その場でぐるぐると回り出す。
そうかと思えば、翼を広げて頭を下げてきた。これは、この魔物なりのお礼の仕方というものだろうか。なんとも不思議な行動である。
モニーに頭を下げていたかと思うと、周りを取り囲むスフォルたちにも同じように頭を下げ始めた。ケンカになる様子もないので、スフォルたちも受け入れたとみていいってことなんだろうかな。
『それじゃ、こいつもとっとと名前を付けて、眷属にしちまいやすかね』
『そうですね。どうやら私たちに従う態度を見せているみたいですからね』
『まっ、そうなるか……』
結果として、俺たちはこの鳥の魔物にも名前を付けることになった。アニマートという名前で、『生き生きと』という意味を持つ演奏記号だ。
この名前を気に入ったのか、アニマートはメロディたち一人一人に頭を擦りつけていた。それが終われば、フォルテがスフォルを連れて、アニマートの従魔登録のために冒険者ギルドへと向かった。手続き自体は問題なく終わり、アニマートは正式に俺たちの仲間となった。
新しい仲間を迎え入れたのはいいが、俺たちはしばらく動けなくなった。その理由は、リリアの回復に時間がかかっているからだ。
詳しく話すと、リリアは魔物たちの襲撃のあった日の真夜中になっても、一向に目を覚ますことはなかったんだ。この状況を受けて、出発は翌日以降に引き延ばしになってしまう。
早く元気に目を覚ましてほしいものだが、俺たちとしては、元気になるようにと祈ることが精一杯だった。




