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異世界バンド~俺たちの熱い魂(ソウル)で異世界を救ってやるぜ!  作者: 未羊


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73曲目 島を守れ

 ミドレストの港に魔物たちが現れました。

 イカタコに半魚人と、これまた海産物がわんさかですよ。


(ああ、おいしそう)


 私は心の中でそんなことを思ってしまいます。

 だけど、ミドレストの街が襲われている最中にそんなことを思うのは不謹慎。私はすぐさま気持ちを切り替えます。

 兄さんたちは演奏に集中しなきゃいけないから、ここは私たち魔物たちでなんとしても襲ってくる魔物たちを食い止めませんとね。


「スフォル、アー、ベー、ツェー、デー、エー。街のみなさんを守りますよ」


「アオーーンッ!」


 私が声をかけると、スフォルたちは返事をしてくれます。さすが、私同様に演奏で改心した魔物たちですね。

 今回の私は、歌ではなく戦いで兄さんたちを援護します。

 元々ゴブリンは手先が意外と器用です。

 それに、私には転移者として特殊な能力も備わっています。

 私は、手にぐっと力を集中させます。

 その手の中には、ナイフが握られています。何もなかったはずなのに、知らない間にナイフが出現したのです。

 これが、私の特殊能力、武器生成。魔力から武器を作り出すという能力です。

 ただ、ゴブリンの魔力はたかが知れているので、何回も使えるものではありません。大事に使いませんとね。いざとなって動けなくなったら、それこそ大迷惑ですから。

 とにかく今は、兄さんたちの演奏によって、モニーさんの結界が無事に展開できるように魔物たちをけん制することが重要。そのための時間稼ぎなのです。


「やああっ!」


 向こうの世界じゃ何気ない大学生の私でも、こっちだとゴブリンです。その気になれば、きちんと戦えます。

 半魚人は接近戦でなんとかなりますが、さすがに鳥などの魔物は投げナイフにしないことには、対処のしようがありません。魔法が使えないゴブリンには、分が悪すぎます。

 警備兵の中には弓や魔法の使える人たちがいますが、やはりなかなか対処が追いつきません。


「ギャギャッギャッ!」


「あっ!」


 そんな中、ちょっとした隙をついて、鳥型の魔物が兄さんたちの方へと突撃していきます。さすがに不意を突かれてしまったので、私も思わず声が出てしまいます。


「グルアァッ!」


 慌てる私ですが、なんとも頼もしい声が響き渡ります。


「ギャギャッ!」


 スフォルが屋根の上まで駆け上がり、鳥型の魔物に食い掛りました。なんという素早さなんでしょうか。

 そのまま空中から落下してきますが、スフォルってば魔物をクッションにしてまったくの無傷です。すごい。

 代わりに、下敷きにされた魔物は虫の息です。このままでは復活されてしまいますので、心苦しいですが、私はとどめを刺しておきます。


「ごめんなさい」


 ところが、スフォルがその行為を邪魔してきます。


「スフォル……」


 スフォルは顔を上げ、周りを見るように促してきます。

 周りではまだ魔物たちとの戦闘が続いています。

 その中、スフォルは鳥の魔物を見ながら、私とスフォル自身との間で視線を行き来させます。


「ああ、そういう……」


 そう。スフォルは自分たちのように、兄さんたちの演奏で眷属になると考えているようなのです。それで、私がとどめを刺そうとした行為を止めたというわけです。

 なるほど、そこまで考えが至りませんでした。まさか、魔物に教えてもらうなんて、私はまだまだですね。


「そこで寝ていて下さい。眷属になるかどうか、あなたに判断を任せます」


 私は鳥の魔物をそのままにして、スフォルと一緒に魔物の迎撃に再び向かいます。

 そんな中、歌は二番のサビにかかっていました。敵の魔物の攻撃は一向に緩む気配はありません。

 なぜ急に、この島に魔物たちの襲撃がかかったのでしょうか。それがよく分かりませんね。

 いくら私たち魔物が上陸したからといっても、この群れは明らかにおかしいです。まるで、背後に誰かがいて、命令しているかのような、そんな感じがします。

 いろいろと考えごとをしながら、私たちは島の人たちを一人、また一人と魔物の脅威から守っていきます。

 ですが、さすがの私ももう限界が近付いてきました。武器も十本くらい生み出したので、もともと少ない魔力が枯渇しかかっていて、私はふらふらとしてきました。


(あと少し……。演奏が終わるまで、なんとしても……)


 気力を振り絞って、私はとにかく魔物たちを退けていきます。


「おい、そこの嬢ちゃん、危ない!」


「えっ?」


 流れる汗をぬぐった、その一瞬でした。

 目の前からものすごい勢いで何かが飛んできます。

 私は両手を構えて目を閉じてしまいます。


「がうっ!」


 攻撃を受けてしまう覚悟をしたのですが、犬の泣き声とともに、バチンという音が聞こえてきました。


「ガルルルル……」


「デー……」


 助けてくれたのは、ブラックウルフのデーでした。

 それと同時に、締めの音が鳴り響きます。

 その瞬間、ばあっと勢いよく何かが走り抜けていきます。


「グオオオッ!」


 勢いよく駆け抜けた何かにさらわれるようにして、島を襲撃していた魔物たちが一気に弾き飛ばされていきます。一体何が起きたのか、私には理解できませんでした。


『ふぅ、間一髪だったな』


「これで、結界の展開は完了しました。島の中は、これで安全でしょう」


 次の瞬間、兄さんとモニーさんの声が聞こえてきました。

 同時に、私は悟ったのです。


(ああ、結界が無事に張れたんだ……)


 安心した私は、そのまますっと意識を失ってしまったのでした。

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