表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/11

7曲目 教えてやるよ

 村長たちの結論を待つ間、俺はメロディから必死のお願いを受けていた。


「リードさん、この楽器について教えてください!」


 俺を前にして、正座をして頭を下げてまで頼みこんでいる。いや、少女にここまでしてもらうのは悪くはないんだが、なんか悪い気がする。


『まあ、待て。とにかく頭を上げてくれ』


「は、はい」


 俺が頼めば、メロディは頭を上げてくれた。

 顔は相変わらず真剣だ。

 俺は人に教えるのは初めてなんだが、さっきのスキルによる共有での演奏と歌唱を見ている限りは、メロディには間違いなく才能がある。

 考えた末、俺はメロディにギターについて教えることにした。


『まず、俺のこの体だが、ギターっていう音を奏でる楽器だ』


「ギターっていうんですね」


 すっごく目を輝かせているな。それだけ本気だってことなんだろう。


『で、この細いところにピンと張ってあるものがあるだろう。これは弦っていうんだ。弓っていう装備があれば、それと同じようなもんだと思ってもらっていい』


「なるほど、弓ですか。それでしたらありますよ。確かに、弓の張ってある糸も弦っていいますね」


 あ、弓の話は通じたぜ。ゲームであってもやっておいて損はねえな。


『で、細いところになんか区切りがあるだろ。そこをフレットっていって、その間を押さえることで音を変えられるんだ』


「そうなんですね。さっきは夢中でやってましたけど、確かに音が変わってましたね」


『そういうこった。ちょっとやってみな』


「はい」


 メロディは俺を手に取って、試しに音を鳴らしてみる。

 重くて持ち慣れないのか、全部の弦を弾いちまってるな。スキル共有が影響している間は、ちゃんと弾く弦と弾かない弦があったんだがな。まっ、素人だからしょうがないか。


『ストップ。弦を全部一緒に弾くんじゃない。必要な弦だけを選んで弾くんだ。左手の指で押さえた弦を基本的には弾くんだ。もちろん開放弦で弾くこともあるがな』


「か、かいほう……?」


『指で押さえていない状態のことだな。だが、それはあんまりないことでもある。なにせ、左手の親指側にある弦以外は、同じ音が一つ手前の弦に存在しているんだからな』


「ふむふむ……、そうなのですね」


 素直に聞いてくれるから、実に説明がしやすいな。

 う~ん、俺はどんな感じだったな。昔すぎて覚えてねえぜ。


『っと、もっと大事なことを教えておかねえとな』


「大事なこと?」


『おう、楽器は音が命だ。ただ、時間を置いていると弦が緩んで音が狂うことがある。それを正すために調律っていう作業がある』


「調律……ですか」


『ああ。左手でネックを握った時に、親指側から第六弦、第五弦という風に数えるんだが、隣り合う二つの弦のうち、親指側の第五フレットを押さえて、隣の開放弦と一緒に弾く。その時に音が同じなら合ってるということになる』


「ふむふむ」


 メロディは真剣に聞いている。


『ああ、一か所だけ注意な。第三弦と第二弦を合わせる時だけ、第三弦の第四フレットを押さえるんだ』


「お、覚えられるかな……」


『心配すんな。最初のうちは俺が聞いてやるからよ。こっちの世界には絶対的な基準となる音がねえから、とりあえず、それで音が合えばいい。ヘッドっていうところになんか回せそうなのがあるだろう?』


「ヘッド? この細いところの一番上ですかね」


『そうだ』


「ありますね。つまんで動かせそうなのが」


『そいつを回して、弦の張りを調節するんだよ。緩めれば音は低くなるし、きつくすれば音が高くなる』


「そうなんですね。不思議ですね……」


 メロディは、俺の話を聞きながら、ギターをじっと眺めている。

 やっぱり、楽器がないっていうのは本当のようだな。こういう世界なら吟遊詩人のようなやつがいて、竪琴くらいはありそうなもんだが。

 そうそう、竪琴で思い出したぜ。

 今のままじゃ、メロディにかなり負担をかけてしまう。せめて持つのが楽にならないもんだろうかな。いつも両手で抱えて運ばせるのは申し訳ないってもんだ。


【絆の強まりを感知しました】


 またあのわけの分からない言葉が頭に響く。

 その声が聞こえた瞬間、空中に何か光の塊が現れる。


『な、なんだ?』


「なんですか、これ?」


 俺たちはそろって驚いている。

 光が消えたかと思えば、何かベルトのようなものが床へと落ちていた。


『これは、ギターを抱えるためのベルトか』


「ベルト?」


『ああ、ギターにひっかける場所があるはずだ。そこにつけてやれば、首からぶら下げてギターを持つことができる』


「なるほど……。早速つけてみます」


 ベルトを拾い上げたメロディは、俺の体にある金属の突起部分を見つけて、そこにベルトを装着していた。ギターからしてみればこんな感覚なのかよ。少しくすぐってぇじゃねえか。

 俺たちが話をしていると、外の方が騒がしくなってくる。


「メロディ、いるか?」


「は、はい!」


「悪い。村長を説得できなかった」


「え? どういうことなんですか?」


 俺もまったく状況が分からん。入ってきた男は、メロディにいきなり謝っているぞ?


「ウルフを倒してくれたのはいいのだが、村長がそのわけの分からない魔道具を怖がってな。君ごと追い出すことになってしまったんだ」


「え、どうしてそうなるんですか!」


『まったくだ。ちゃんと説明しろ!』


 なんということだろうか。

 どうやら俺という謎の道具を怖がって、それを扱うメロディごと村からの追放が決まったらしい。

 なんだよ、血も涙もねえな!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ