68曲目 港町に到着
どうにかこうにか、俺たちはトリル港までやってきた。
少女四人と楽器三台とウルフ六匹の旅だが、よくここまで無事に来れたもんだ。
「止まれ止まれ、魔物を連れて街の中には入れさせんぞ」
だが、トリルの入口で俺たちは止められてしまう。この様子だと、国王の使いはまだ来ていないって感じだな。
槍を持った街の番兵に止められて、俺たちは少し困ってしまう。
『モニーさん、国王陛下からの書面を見せるべきでは?』
「そうですね。そう致しましょう」
俺たちが困っていると、キーボのやつが冷静にモニーに話しかけていた。さすがバンドの頭脳だな。こういう時は頼りになる。
キーボの提案に乗ったモニーが、兵士たちに近付いていく。
「トリル港の兵士様、私はスコア国で聖女をしておりますモニーと申します。少々お話はよろしいでしょうか」
「おお、その衣装は確かに聖女服ですな」
「まさか、こんなところまで聖女様がおいでとは……。これは失礼致しました」
モニーの服装を見ただけで、兵士たちの対応が一変していた。すげえな、聖女様は。
WEB小説とかでしか見たことはなかったんだが、実際にこうやって目の当たりにすると、聖女という存在がどのようなものか改めて認識させられるな。
「こちらがスコア国の国王陛下の勅命状で、こちらがビブラート国の国王陛下の許可証と乗船パスです。改めていただけますでしょうか」
「……拝見いたします」
モニーから真剣な表情で申し出を受けた兵士は、おそるおそるといった感じで、モニーから書面を受け取っている。
はっきりいって兵士たちの識字率とかどうなんだとは思うが、こういうところは異世界なのか、兵士たちはすらすらと書面に目を通している。読めるんだな。
読み終わった兵士たちは、書面をモニーへと返している。破り捨てるような暴挙に出ると思ったが、聖女だと認識している以上、それはできなかったみたいだ。
「町長殿のところにご案内致しますが……」
兵士は言いかけて、スフォルたちへと視線を向けている。
書面の中にはスフォルたちのことも書いてあったと思うのだが、やはり魔物ということで警戒しているということだろうな。
俺たちの世界でいうところの、熊とかライオンとかみたいなもんだからな。そりゃまあ、警戒するよな。
「大丈夫です。この子たちは私たちがしっかり見ておりますので」
兵士たちの様子を見ていたモニーは、にっこりと微笑んで説明をする。
聖女であるモニーにはっきりと言われたことで、兵士たちはようやく折れたようだった。
兵士の一人が、俺たちを連れてトリルの町長のところまで案内してくれることになった。
俺たちは静かに兵士の後をついて行くが、その間、街の人たちからの視線がとても痛かった。
ただ、聖女がいるということは街の人も分かっているのか、石を投げようとする行動を見せた人物を、投げる前に制していた。聖女に何かあったら、責任取れるのかっていうことなんだろうな。
そんなバリバリの警戒の中を、俺たちは不安に感じながらも歩いていく。
ようやく、町長の屋敷に到着する。港町ということで、海からの高波を警戒してか、少し奥まった場所の小高い場所に屋敷が建っていた。万一の時の避難場所ってわけなんだろうな。
この世界の津波がどれくらいの高さに到達するのか分からないが、これくらいの高さがあれば、そこそこやり過ごせるだろう。
そんなことを考えつつ、俺たちは町長のところまで案内される。
「おお、聖女様。よくお越し下さいました。私は、町長のシケットでございます」
なんか不吉な名前のおっさんが出てきたな。とはいえ、こっちの世界では分からないことだからか、メロディたちは特に驚いた様子はない。
だが、リリアだけがなぜか変な顔をしていた。
『おい、リリア、どうしたんだ』
「……いいえ、なんでもないです」
俺が問いかけるも、なんとも曖昧な反応をしている。どういうことなんだろうな。
だが、さすがに町長を目の前にして、変な反応を取らせるわけにはいかねえな。詳しいことはまた後で聞いてみるか。
目の前では、町長がなんだかぐだぐだと長々しく語っている。
さすがに長くなってきたせいか、メロディがやばいことになってきたな。
『おい、モニー。メロディが眠くなってきているから、話を進めてくれ』
さすがにこのままではやばいと思ったので、俺はモニーに町長の話を打ち切らせるように頼む。
モニーはこくりと小さく頷くと、町長へと顔を向ける。
「町長様」
「はい、なんでしょうか」
「私たちは長旅で疲れております。宿か何か、休めるところへとご案内いただけますでしょうか。あと、できるだけ早くマイネリア大陸に渡れるように手配をいただけると助かります」
「し、しかし……」
モニーが話をやめさせて、自分たちの要求を伝える。町長は困ったような顔をしているが、こちとらのんびりしている間はねえんだよな。
「わたくしたちは、魔王の討伐という命令を受けております。ですので、一刻も早く、マイネリア大陸に渡らねばならぬのです。よろしいでしょうか」
渋る町長に、さすがにフォルテもキレたようだ。スコア王国の国王の命令を持ち出して、町長に強く圧力をかけている。
さすがに二人の国王からの命令がバックにある以上、町長には逆らう余地など存在していなかった。渋々という感じだったが、宿と船の手配について部下に指示を出していた。自分とこに泊まらせるわけじゃないのか。
結局、俺たちはトリルの中にある立派な宿屋に泊まることになった。
次はいよいよ海に出るわけだが、あの様子だと、すんなりいきそうに思えねえな。
どうなるか分かったもんじゃないが、とりあえず疲れを取るために休息を優先させるとしよう。




