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異世界バンド~俺たちの熱い魂(ソウル)で異世界を救ってやるぜ!  作者: 未羊


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64曲目 転移者ゆえの悩み

 眠りにつくと、私の意識はゴブリンのリリアの中に戻ってくる。

 私の周りには、ブラックウルフの群れがいて、現実世界から戻ってきた直後だとつい驚いてしまいそうになる。だって、そもそも犬に囲まれることはないし、セントバーナードよりも大きな犬なんて怖いだけじゃないの。まったくもってしょうがないことだと思うわ。


(まだ暗いかな……。バイトで疲れて早く寝ちゃったから、その分、こっちで目を覚ますのが早くなっちゃったのかも)


 私は眠い目を擦っている。

 私の懐には、相変わらずあのマイクがしっかりと入っている。これがあるからこそ、私はこっちと向こうとの間で意識の行き来が行えるんだと思う。

 だけど、だからといって手放す気にはなれないわね。もし無くして、向こうで目が覚めなくなったらとか、いろいろと考えてしまうもの。


「わふっ……」


 私が起きた気配を感じたのか、ブラックウルフの中の一匹が私に近付いてくる。寝起きで少し寝ぼけていることもあって、私は少し震え上がってしまう。

 だけど、ブラックウルフは私に近付くと、そのまま横で寝そべってしまっていた。


「心配してくれているの?」


 私がそう問いかけると、ちらりと目を向けてきたかと思えば、小さく頷いてそのまま伏せてしまった。

 魔物とはいっても、私たちの眷属になったからか、襲い掛かってくることはまったくない。むしろ、こんな風に気遣いまでしてくれるくらいなのよね。本当に不思議なものだわ。


「ありがとうね。きっと、あなたたちがいい待遇で迎え入れられるように、頑張ってみるからね」


 私はお礼に体をそっと撫でてあげる。気持ちよさそうに、しっぽがゆっくりと動いている。

 こうやって接してみると、魔物であるけれど、犬を飼っている気分になってしまう。

 現実世界だとアパート暮らしで、ペットを飼うことができないものね。こっちの世界でこうやって眷属になってくれた魔物がいるんだから、向こうの代わりにしっかり世話をしてあげなくちゃ。

 大きいから怖いといえば怖いんだけど、そう思えば不思議と怖さが引いていくわ。

 少しブラックウルフと戯れていた私は、改めて周りを見る。護衛の兵士は交代で見張りをしている。

 空はようやく白み始めてきたところで、そろそろ夜明けといったところだった。


「よし、早く起きたんだから、今日の朝食は私が作るわ。これでも一人暮らしをしているんだし、料理はお手の物というよ」


 思い立った私は、もう一度ブラックウルフを撫でると、兵士に話しかけて朝食のお手伝いをさせてくれるように頼みこんだ。

 怪訝な顔を見せていた兵士たちだったけど、あまりに熱心だから試しにということで手伝わせてくれたわ。だったら、見せつけてやろうじゃないのよ、ゴブリンの手先というものを。

 そんなわけで、私はやる気たっぷりに調理に取り掛かる。

 素材も調味料も、当然ながら少ない。だからといって、声をかけた以上はやってやるわ。

 ゴブリンとして持っている知識と、向こうの世界で持っている知識を組み合わせた上に、今までの兵士たちの調理を見てきた私よ。きっとやり遂げてみせるわ。


「うまい」


「あっ、おいしい」


「ゴブリンのくせに器用だな」


 全員から好評をもらえるくらいの料理ができ上がったわ。ふふん、どうよ。

 私は腰に手を当てて胸を張っている。

 だけど、その最中、やけに視線を感じるのよね。

 どこから視線が来るのかと思ったら、メロディさんの持っているリードギターからだったわ。つまり、兄さんが見てきていたというわけだった。いくら妹だとはいえ、女性をあんまり凝視するものじゃないと思うけどね、兄さん。

 そうは言ってやりたいところだけど、私が実の妹の由利だということはまだまだ秘密。とはいえ、あの楽譜のことを問い詰められたら、言わなきゃいけなくなるんじゃないかなって考えてるわ。

 だって、あの時の反応を見たら、あの楽譜のことはよく知っているみたいだからね。う~ん、どうしようかしら。


「リードさん」


『おう、なんだ』


「あんまりじろじろと見ないで下さい。ゴブリンですけれど、メロディさんやフォルテさんたちと似たような年頃なんですから」


『ああっと、悪かったな』


 私が注意をすると、兄さんは謝ってくれていた。リードギターのフェイスはこっちを向いたままだけど、視線を感じなくなったから、目は逸らしてくれているみたいだ。


 こうして、朝食を終えると私たちは再びビブラートの王都を目指して出発することになる。


「私、ちょっとブラックウルフに乗ってみる」


「リリア?」


「一緒に旅をすることになるのなら、私たちに乗られていることにも慣れておくべきだと思いますので」


「分かりました。私たちは馬車を降りるわけにはまいりませんので、リリアさん、頼みますよ」


「はい」


 私は許可をもらって、馬車からブラックウルフの背中へと移る。

 どうなることかと思ったけれど、ものすごくおとなしく私を背中に乗せてくれていたわ。


「思ったよりも高いわね。スフォルよりも大きいから、当然かしら」


「わうっ」


 私の感想を聞いて、当然だと言わんばかりにブラックウルフは鳴いている。言葉が分かっているみたいだわ。

 そんなわけで私はブラックウルフの背に乗りながら、馬車の横につけて進んでいく。

 リリアとの間で意識が行き来するようになって結構経つけれど、私、本当にうまくやっていけるかしらね。まだまだ不安しかないわ。

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