62曲目 数が多すぎた
ブラックウルフを手懐けることに成功した俺たちだったが、すぐに別の問題に直面することになった。
「困りましたわね。わたくしたちの旅に同行できるのは、多くて五匹ですわよ」
「そうなると、十五匹はここで置いていくことになるんですね。なんだか可哀想な気がします」
フォルテが話した問題点に、メロディも同情的な目を向けている。
ブラックウルフたちはとてもリラックスした様子で、俺たちを見ながら尻尾を振っている。
「私、ちょっと話をしてみますね」
「はい、よろしく頼みますね」
ゴブリンであるリリアが、ブラックウルフと話をしてくれるらしい。
そうかと思えば、グレイウルフのスフォルも一緒についていった。やはり、魔物は魔物同士の方がいいんだろうな。
待っている間、モニーがビブラート国の兵士たちと話をしているようだ。メロディたちとは距離があるんで、俺たちにはどんな話をしているのか聞こえてこない。
だが、状況からして、おそらくはブラックウルフたちの扱いについて話しているんだろう。俺たちに懐いてしまった以上、誰かに面倒を見てもらわねえといけねえだろうからな。
俺がモニーたちの方に意識を向けていると、リリアたちが戻ってきた。
「話がつきました」
「わうっ!」
リリアが報告すると、スフォルも同じように鳴いている。
そう言った後、リリアがくるりと振り向くと、ブラックウルフの中から五匹が俺たちのところにやってきた。
「フォルテ様、この子たちに名前を付けてあげて下さい」
「わたくしがですか?」
リリアから言われて、フォルテは驚いているようだった。
だが、いきなりこのようなことを言われてもフォルテも困るばかりだった。スフォルの名前も、結構時間がかかったもんな。それが五匹となりゃあ、戸惑うのも無理はねえってもんだぜ。
『ベス、お前が考えてやりな』
『お、俺がですかい?』
俺がベスに話を振ると、なんでかしらねえがびっくりしてやがったぜ。
『当たり前だろ。この中じゃ、お前が一番犬っころの扱いに慣れてんだ。だったら、お前が一番の適任ってわけだよ』
『そりゃないぜ、リーダー。こういう時はみんなで考えるもんでしょうよ』
『つべこべ言うな。名づけを求められてるのはお前の相棒だ。だったら、お前が助けるんだよ!』
『わ、分かりやしたよう……。しょうがないですねぇ』
俺がベスに押し付けると、渋々ながら受け入れたようだ。
さて、五匹のブラックウルフは押し付けた。となると、残り十五匹が問題だな。
『メロディ、残った十五匹のところに行くぞ。リリアも来い』
「はい、リードさん」
「分かりました、リードさん」
俺たちが近付いていくと、残ったブラックウルフたちは行儀よく座っていた。よく訓練された犬並みに統率取れてんな、これ……。
あまりにもそろったブラックウルフの動きに、俺は感心させられてしまう。
「すごいですね。まるであそこにいる兵士のみなさんみたいに動きが揃っています」
「本当ですね。魔物でもここまでっていうのは普通ありえませんよ」
『本当にな。これだけの動きが取れるってことは、まるで軍隊みたいだぜ』
まあ動きはいいんだが、問題はそこじゃないからなぁ……。どうしたもんかな。
俺は頭を悩ませてしまう。
俺たちの旅には同行させられないが、ビブラート国に預けたとしても、ちゃんと言うことを聞いてくれるのかという疑問がある。
「そういえば、ビブラート国はいろんな問題を抱えているって話でしたよね?」
「確かに、そんなことを言っていましたね」
『おいおい、まさかこいつらに手伝わせるつもりか?』
リリアとメロディが思い出したかのように話すから、俺は思わず身構えてしまう。
「ええ、その通りです。ここで活躍することができたのなら、ビブラート国でこの子たちの面倒を見てもらえることができます。一気に問題が解決しませんかね」
『う、うーむ。それもそうだな』
リリアが俺に顔を近付けながら話してくるので、俺は押し切られそうになってしまった。
「話はつきましたよ」
俺が困っていると、モニーの声が聞こえてきた。
「そちらの十五匹はビブラート国で面倒を見てくれるそうです。リリアさんが申された通り、ビブラート国の問題を手伝わせるということが条件になりました」
「ああ、よかったです」
「これで解決ですね」
モニーはうまくビブラートの兵士を説得してくれたらしい。
この流れのまま、俺の心配をよそにあっという間にブラックウルフたちの処遇がどんどんと決まっていく。
ビブラート国の兵士たちを手伝うことで、生活は保障されることになった。もちろん、従魔登録をした上で、ビブラート国の兵士という扱いになるらしい。
「こちらも終わりましたわ。結局、ベス様に名づけを全部任せることになってしまいましたわよ」
『これだけの数に名前を付けるのは、一体いつ以来だか分かりませんぜ……』
どうやら、フォルテとベスの方も解決したみたいだ。だが、どういうわけかものすごく疲れている。どういうことなんだろうな、よく分からねえぜ。
とりあえず、ブラックウルフの問題は無事に解決できたから、一度王都に戻ろうじゃねえか。
しばらく休息を取った俺たちは、ブラックウルフの群れを連れて、ビブラート国の王都へと引き返したのだった。




