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6曲目 村長の家でのハプニング

「事情を説明してもらおうかな?」


 俺とメロディは、村長の家に呼び出されていた。元々出向く予定だったので何も問題はないんだが、さすがに周囲の雰囲気がかなり険しい感じだった。


「メロディ、その変な物体は何なんだ。説明をしてくれ」


「それが大きな音を出したかと思ったら、ウルフどもが倒れていた。まったくもって理解できん」


 周囲の大人たちからいろいろと言われていて、メロディは完全に縮こまっている。これじゃ説明どころじゃねえな……。

 くそっ、俺がこいつらに説明できればいいんだが、さっき運ばれている間にいろいろ喋ってたのに、こいつらはまったく何の反応もしなかった。つまり、俺の声はメロディにしか聞こえていないってことだ。

 さて、どうする……?


『おい、メロディ』


「な、なんですか、リードさん」


 俺はメロディに話しかける。


『俺を実際に演奏してみるってことたぁ、できねえかな』


「そ、そんなの無茶ですよ。第一、私は楽器というものを知らないのですよ?!」


 俺の提案に、メロディは思いっきり驚いている。

 まあ、そうだよな。俺を見て「なんだこれ」って思ったくらいだもんな。無茶な話だってもんだ。


「なにを一人でごちゃごちゃと言っているのだ。メロディ、さっさと説明をしなさい」


 村長って呼ばれている男から、改めて声をかけられていた。まったく、偉そうに言うんじゃねえよ。

 しかし、このままじゃろくな説明もできないまま、俺とメロディは酷い目に遭いかねない。まったく、どうしたらいいんだよ。

 俺がそう思った時だった。


【絆を感知、スキル【技術共有】を獲得しました】


 よく分からない言葉が響き渡った。

 なんだよ、スキル【技術共有】ってのは。


【自身の持つ技術を、パートナーと共有できるスキルです】


 俺が思えば、親切に答えてきやがった。

 なるほど……。ならば、俺の持っているギターの演奏技術をメロディに共有させることができるってことか。

 なら、やることはひとつしかねえな。


『おい、メロディ』


「は、はい!」


『今から俺の持っているギターの演奏技術をお前に共有させる。こいつらの前でまずは一曲かましてやれ!』


「ええええっ!?」


「おい、メロディ。一人で何を言っているんだ」


「もしかしてそのわけの分からない物体は、魔族の洗脳道具かなんかじゃないですかね」


「それならば、メロディは魔族の手先になったということか?」


 おいこら、ずいぶんと勝手なことを言ってくれてんな。

 だが、ちょっと冷静になってみれば、状況はどんどんとやばくなってるようだ。

 くそっ、なんでもいいから、一曲メロディに歌も共有してやってくれ。

 俺がそう強く願った時だった。


「あ……、何かが浮かんでくる」


 メロディがぽつりと呟いたかと思うと、俺を力強く握りしめていた。


『め、メロディ?』


「大丈夫、演奏()れる」


 俺が困惑する中、メロディは表情を引き締めて、しっかりと俺を抱えて立っていた。


 ♪~


 メロディは自分の体にはまだ重いだろうと思われる俺を抱えながら、ギターを演奏し始めた。

 スキル【技術共有】があるとはいえ、なかなかの腕前だ。

 かと思えば、なんと歌まで歌い始めた。

 やべえ、これは俺たちがインディーズデビュー前によく演奏してたやつじゃないか。まさかこんなところで、俺たちの原点ともいえる曲を聴くことになるとはな……。

 にしても、歌もうまい。マイクもない状況でこの声量だ。こいつは間違いなくバンドをやっていれば大成できそうな逸材だぞ。

 ところで、周りはどうだ?

 俺は気になったので、ちらりと視線を向けている。

 メロディが演奏している最中だから、顔の向きが安定しねえが、見えるには見えるな。

 おうおう、どいつもこいつも間抜けな面を浮かべて演奏に聞き入ってやがるな。

 そうこうしている間に、メロディはワンコーラスを歌い上げていた。


「すごい……。これが音楽なんですね……」


 演奏が終わった後のメロディは、自分がやり遂げたことに感動して体を震わせていた。


「なんだ、この心の奥底から湧き上がってくる感動は……」


「俺は今、モーレツに感動している!」


『え、ええ……』


 周りの反応に、俺はドン引きしていた。

 それでも、さっきまでの状況とは雰囲気がまるで違っていた。


「私、決めました!」


「メロディ、何を決めたというのかね」


「リードさんと一緒に、世界に音楽を広めることにします。大丈夫ですよ、ウルフだってあんな風にすることだってできるんですから」


「し、しかしだな……」


 あまりにも唐突なメロディの宣言に、村長たちが困惑していた。

 ところが、音楽に目覚めたメロディの情熱を止めることは、どうやらかないそうになさそうだ。こいつはかなり本気のようだぜ。

 すっかり目覚めてしまったメロディは、俺のことやさっきのウルフの一件のことなど、すべてを村長たちにぺらぺらと喋っていた。いや、ここまで変わるとはびっくりだぜ。

 まあ、そう簡単に村長たちも結論は出せないみたいだから、しばらく保留ってことになった。

 メロディは不満そうだが、まっ、年齢からするとそうなるだろうよ。

 そんなわけで、結論を待つ間、俺はよく分からない魔道具ということでメロディの家に保管されることになった。

 やれやれだぜ。

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