49曲目 盗賊のアジトを突き止めて
私はゴブリンのリリアです。
今は、主様たちの代わりに、退治した盗賊たちのアジトを探しに来ております。
私が背中に乗るのは、グレイウルフのスフォルさんです。私よりも先に主様たちに仕える魔物でして、先輩にあたる方です。
この方の鼻を頼りにして、山の中を進んでおります。
「スフォルさん、盗賊のアジトは見つかりそうですか?」
「わうっ!」
私が問い掛けますと、自信たっぷりに鳴き声が返ってまいります。任せろと仰られているみたいですね。
ですが、進む中、私が何かを感じます。
「スフォルさん、止まって下さい」
「わう?」
私が声をかけますと、スフォルさんはおとなしく止まってくれました。
「どうしたのだ」
「この先、罠があります。私が解除してきますので、みなさんはここで待機をお願いします」
「おい、リリア」
「無理をするな。俺たちがやるぞ」
私が進もうとすると、仲間のゴブリンが止めてきます。ですが、私は構わずに進みます。
そこで見たのは、足をかけると矢が放たれるようになっている罠でした。このようなものがあるということは、近くにアジトがあるとみて間違いないでしょうね。
私は確信を深めていきます。
罠自体はあっさりと解除できましたので、私はみなさんのところに戻っていきます。
「罠は解除しておきましたので、先へと進みましょう」
「さっすがリリア」
「やっぱり違うよなぁ」
私が報告をすると、仲間のゴブリンが喜んでいるようでした。
鎧に身を包んだ兵士のみなさんは、信じられないといった顔で私を見ております。ですが、私はにこりと笑って返しておきます。
私たちゴブリンの評価がどのようなものかは、これまでのみなさまの反応で大体想像がついております。ですので、なめられないようにしなければ、これからやっていくことは厳しくなるでしょう。
とにかく私は、堂々とした振る舞いをしなければならないのです。私のせいで、主たちに迷惑はかけられませんから。
そうしている間に、どうやら山にぶち当たってしまったようです。
ですが、スフォルさんは山に向かってにおいをかぎ続けております。となると、なんらかの形で入口が隠されているのでしょうね。
「こういうことは俺に任せてくれ」
私と同行しているゴブリンの一人が名乗りをあげます。
彼はスフォルさんがにおいをかいでいる周りを丹念に調べています。
「よし、分かったぞ」
そう言いますと、スフォルさんがいる場所の斜め上の辺りに手をかけます。
「ここにあるでっぱりを押し込むと……」
言葉通りに小さくでっぱっていた岩を押し込みますと、なんということでしょうか、岩が動き出してぽっかりと入口が姿を見せたではないですか。
なんということでしょうか。これを私が分からなかったとは、やっぱりまだまだのようですね。主様たちの役に立つには、もっと精進いたしませんと。
私は仲間の活躍を見て、つい意気込んでしまいます。
「よし、ここからは私たちが前後を固めて移動する。何か異変を感じたらすぐに言ってくれ」
「分かりました」
「分かったのさ」
兵士の方が仰られることに、私たちは素直に頷いておきます。
「ライト!」
穴の中は暗く、兵士の方が魔法を使って中を照らしております。
魔法……。私たちゴブリンではなかなか使いこなすことのできない力です。
ですが、ゴブリンの中でも魔法が使える者がいたということは、主様たちからお聞きしたことがあります。なので、私もいつか使えるようになりたいと思っております。
身の丈に合わない力かとは思いますが、やはり主様たちを守るためには、私も力を持たなければならないのです。私は穴の中を進みながら、強く決意を固めました。
盗賊のアジトの中は、予想外に罠がありませんでした。これでは私たちゴブリンの出番はありませんね。
ですが、兵士のみなさんの様子がおかしいようです。
「どうかなさったのですか?」
私は問いかけてみます。
「いや、盗賊のアジトだということは間違いないのだが、奪い取った金品がまったく見当たらないのだよ。全部売り捌けるとは思えないし、別の場所に隠している可能性があるとはいえ、アジト本体にまったくないということはありえないんだ」
「まあ、そうなのですね。スフォルさん、分かりますかしら」
「くうん」
スフォルさんの反応がなんとも思わしくないですね。おそらく、スフォルさんでも分からないということなのでしょう。
困りましたね。少しでも早く済ませて主様たちのところへと戻らないといけませんのに……。
私が思い悩んでいますと、何かに呼ばれたような気がします。
「どうしたんだ、リリア」
「あっ、何かこちらから感じます」
「お、おい」
仲間のゴブリンに話しかけられるものの、私はふらふらと歩き出してしまいます。
なんでしょうか。何か私を呼ぶような声が聞こえるのです。
後ろはなにやら騒ぎになっていますが、私の足はまったく止まろうとしません。なんだか、自分が自分じゃないような感じがしてしまいます。
「ここから……だわ」
私は立ち止まり、壁に向かってそっと手を差し出します。
壁に私の手が触れた時でした。
「きゃっ!?」
私の手は土の壁をすり抜けてしまったのです。




