47曲目 心まで震えろ
スフォルとゴブリンたちに襲撃されて混乱する盗賊たちに対し、俺たちは精一杯に自分たちの音楽を演奏している。
「ぐおおっ、なんだこの魔物の群れは!?」
「雑音が、雑音で集中できねえっ!」
スフォルとゴブリンたちに襲われている盗賊たちは、俺たちの演奏によってその対処に困っているようだった。
「お、俺たちがこんな雑魚ごときにやられるのかよぉっ!」
ははっ。雑音で悪かったな。
だがな、これが俺たちの心の形なんだよ。さあ、存分に味わいな。
俺たちの魂の音楽が鳴り響く中、盗賊たちは動きが鈍るものの、スフォルもゴブリンもまったく気にせずに動いている。この慣れの差が、そのまま勝敗を決してしまったようだな。
『おらぁっ! 俺たちの音楽で、てめえらの腐った性根を直してやるぜぇっ!』
『俺らも、リーダーと会ってなきゃぁ、あいつらみたいにワルの道に走ってただろうからなぁっ!』
『ええ。私たちもリーダーには救われたクチですよ』
俺が叫んでいると、ベスとキーボのやつらも、出会った頃のことを思い出していたようだ。
まっ、その時のことを話すと長くなっちまうから、今は演奏に集中だ。
俺たちの魂を込めた音楽を食らいやがれ!
ジャーン……。
俺たちは一曲を演奏し終わる。
その時には、すでに盗賊どもは壊滅していた。
事前に打ち合わせをしておいた通り、盗賊どもはゴブリンたちによってぐるぐるに縛り上げられていた。よく見てみると、周りの森の中からも盗賊がゴブリンによって引っ張り出されている。よく隠れてた連中まで見つけてきたな。
「まったく、ご主人たちを手籠めにしようとは許せませんよ」
「しゃ、しゃべったーっ?!」
盗賊たちがゴブリンの言葉を聞いてビビってやがる。やっぱ魔物に対するイメージってそんなもんなのか。
「僕たちは主たちに忠誠を誓ったゴブリンです。名をいただき、人の言葉をしゃべれるようになったのですよ」
「殺さず見逃してくれた上に、このようなお役に立てる場までいただいたのだ。ご主人のためであるのなら、この程度たやすいこと」
「まだご主人たちに危害を加えるつもりなら、スフォルともども私どもは許しませんぞ」
「ひぃっ!」
相手はゴブリンだというのに、盗賊たちが本気で震え上がっている。それだけ一方的にボコボコにされたってことだな。ははっ、威勢のいい連中も予想外のことにはとことん弱いもんだな。
俺は盗賊たちのことを笑うしかなかった。
『なんか、リーダーに歯向かわれた不良連中を思い出しやすな……』
『ああ、なんかそんなことあったな』
『まったく、リーダーは何をしてたんですか』
『なあに、不良にパシリをさせられてたベスのやつを助けようと思って、ちょっとお節介を焼いただけさ』
『……詳しくは聞かないでおきましょう』
俺とベスの話を聞いて、キーボのやつはなんか逃げやがったな。まったく、困ったやつだが、確かに話は長くなるから今はやめておいてやろう。
それよりも、問題は盗賊らだな。
兵士を呼びに行っても、少し時間がかかるからな。
『おい、リリア。二人くらいに兵士を呼びに行くように伝えてくれ。スフォルは牽制として置いておいた方がいいだろうからな』
「あっ、分かりました」
俺が声をかけると、リリアがゴブリンたちに声をかけて兵士を呼びに行かせてくれた。
俺たちの声が聞けるのは、メロディたち三人を除けばリリアだけだ。リリアから話をした方があいつらも言うことを聞いてくれやすいだろうしな。
兵士を呼ばせに行った後、俺たちが待機していると、スフォルが突然動く。
「ばうっ!」
何かと思ったら、矢を叩き落としていた。
ちっ、まだ無事な盗賊が残っていたか。
「アオーーーンッ!」
すぐさまスフォルが大きな声で吠えると、衝撃によって残っていた盗賊が木の上から降ってきた。
「あだっ!」
スフォルの声で動けなくなっていたのか、落ちてきた盗賊はまともな受け身も取れず腰から地面に落っこちていた。すかさずゴブリンに取り囲まれ、同じようにぐるぐる巻きにされると仲間のところまで運ばれてきた。
「ちっ! こんなガキどもに……」
盗賊のリーダーらしき男は、この状況でも舌を打って強がっている。
『おい、どうやらアンコールらしいな』
『へい、もう一曲やってやりやしょうぜ』
『そうですね。今度は手で耳もふさげませんから、たっぷり聞かせてあげましょう』
『ってわけだ。メロディ、フォルテ、モニー、やるぜ!』
「はい、リードさん」
やる気十分の俺たちの声に、メロディたちも気合い十分のようだった。
そんなわけで、捕まえた盗賊たちを目の前に、俺たちのアンコールライブが始まった。
さすがに耳もふさげない状態での、至近距離でのライブだ。ドラムがないから迫力は劣るが、それでも、この世界の連中には十分な破壊力だろう。
「や、やめてくれぇ……」
大音量を耳に食らって、泡を吹きそうになりながら盗賊のリーダーは俺たちに必死に頼み込もうとしていた。
だが、そんな願いを俺たちが聞き届けるわけもない。盗賊どもが気を失いそうになる中、俺たちの音楽が山道に響き渡っていたのだった。




