46曲目 駆け引き
はっきりいって賭けだ。
俺は、メロディと一緒に盗賊たちの目の前へと出ていく。
「ほう……。一人で出てくるとは勇気があるな」
盗賊のリーダーっぽい感じの男が、こちらを見ながらにやけてやがる。まったく、気持ち悪いなぁ、おい。
怯えるメロディに対して、俺はこそこそと語りかける。
『メロディ、今から俺が言う言葉を繰り返してくれ。もちろん、盗賊どもだけじゃなくて、フォルテたちにも聞こえるようにな』
「わ、分かりました」
背中の俺に目を向けながら、メロディは仕方がないといった感じで頷いている。
それじゃ、始めるとしようか。
『私とこの珍しい魔道具を差し出しますので、他のみなさんを無事に通して頂けますでしょうか』
俺は、自分たちを犠牲にするようなことを口にする。
「私とこの珍しい魔道具を差し出しますので、他のみなさんを無事に通して頂けますでしょうか」
ところが、メロディは臆することなく、俺の言った通りに言葉を繰り返した。
「ちょっと、メロディさん?!」
当然ながら、フォルテたちが驚いている。
「ほう、仲間のために自分を差し出すか、いいねぇ……」
盗賊の方はにやにやとしながら反応をしている。
「だが、やはりガキとはいえお前らを全員いただかなきゃあ、気が済まねえな」
盗賊のリーダーと思われる男は、なぜかナイフをなめながらそんなことを言い出した。
それにしても、なんでこういう連中は、ナイフをいきなりなめ始めるんだ? 舌切ったらどうすんだよ。バカじゃねえのか?
「分かりました」
「ちょっと、メロディさん?!」
メロディの返事に、フォルテはさらに大声を出している。
だが、その直後、なぜか納得したように俺たちの方へと歩いてきた。
その時だった。
「アオーーーンッ!」
馬車の中からスフォルの声が響き渡る。
「な、なんだ?!」
「この鳴き声はウルフですぜ、兄貴」
「バカな、この辺りにウルフなんていやしねえ。一体どこから聞こえてくるんだ」
盗賊どもは慌てている。
それと同時に、馬車からスフォルとゴブリンたちが飛び出てくる。
「頑張って下さい、みなさん」
リリアも紛れるようにして外へ出てくる。
突然の魔物の襲撃に、盗賊たちは混乱をしている。
「くそっ! こいつら、なんで魔物と組んでるんだ。てめえら! 魔物どもと一緒にこいつらも全部皆殺しだ!」
「へいっ!」
盗賊のリーダーはグレイウルフとゴブリンの群れに驚きながらも、冷静に部下に指示を出している。さすがリーダーってやつは違うんだな。
だが、それはもう遅いってもんだ。
『おい、メロディ』
「はい、リードさん!」
『思いっきりかき鳴らしてやれ!』
「はい!」
俺の指示を受けたメロディは、俺から得た知識を元に、不協和音をかき鳴らす。
正直言って、これは自分たちにもダメージのくるものだが、音楽に慣れ親しんでいない連中にはもっと大きなダメージになるだろう。
「な、なんだこれはぁっ!」
「耳が、耳がいてぇ……っ!」
盗賊どもは音から逃れようとして、両手で耳を塞いでいる。こうなると、やつらが使う弓矢は使い物にならねえな。
メロディが音を鳴らしている間に、フォルテとモニー、それとリリアが合流していた。
「まったく、無茶苦茶をしすぎですわ」
「そうですね。キーボさんから一応話を聞きましたが、無謀だと思いましたよ」
『悪いな。隙を作るにはこれしかなかったんでな』
『だとしても、もう少しまともな策はないのですか、リーダー』
『結果オーライだ。文句言うな』
全員から文句を言われているが、しょうがねえってもんだろ。魔物と大音響のダブルパンチで、盗賊どもは完全に動きが狂っちまっている。
ここからは俺たちの番だ。
『よっしゃ、こうなったら一曲行くぜ!』
『おおっ、聞かせる相手が気に食わねえが、俺たちの魂で分からせてやりやしょうぜ!』
『しょうがないですね。いきましょう、モニーさん』
俺たちは魔物たちの攻撃で混乱する盗賊に向かって、一曲ライブを披露してやることにした。
さあ、そのきたねえ耳の穴かっぽじってよく聞きやがれ、外道どもがよ!
俺たちは音楽を奏で始める。
さっきまでの不協和音とは打って変わって、ちゃんとした曲だ。俺たちの記念すべきデビュー曲だぜ。
俺たちが気持ちよく音楽を奏でていると、そこで思ってもみなかったことが起きた。
いつも通り、メロディが歌い始めるはずだったのだが、予想外の人物が反応したんだ。
「♪~」
『なん……だと……』
俺たちは思わず耳を疑った。
なんと歌い始めたのはゴブリンのリリアだった。
俺たちのデビュー曲を聞いたことがないはずなのに、歌っているのは間違いなく俺たちのデビュー曲の歌詞だった。
だが、驚いて演奏を止めるわけにはいかねえ。俺はメロディたちに演奏を続けるようにしっかりと伝える。
一体何が起こっているのか分からねえが、音楽を止めるわけにはいかねえ。しっかり一曲やり切ることが先決だ。
これは、俺たち全員に共通した気持ちだ。
さあ、聞きやがれ、俺たちの魂のこもった演奏をよぉっ!
とにかく俺たちは、演奏の手を止めずに、盗賊たちの心に音楽を響かせ続けた。




