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異世界バンド~俺たちの熱い魂(ソウル)で異世界を救ってやるぜ!  作者: 未羊


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46/62

46曲目 駆け引き

 はっきりいって賭けだ。

 俺は、メロディと一緒に盗賊たちの目の前へと出ていく。


「ほう……。一人で出てくるとは勇気があるな」


 盗賊のリーダーっぽい感じの男が、こちらを見ながらにやけてやがる。まったく、気持ち悪いなぁ、おい。

 怯えるメロディに対して、俺はこそこそと語りかける。


『メロディ、今から俺が言う言葉を繰り返してくれ。もちろん、盗賊どもだけじゃなくて、フォルテたちにも聞こえるようにな』


「わ、分かりました」


 背中の俺に目を向けながら、メロディは仕方がないといった感じで頷いている。

 それじゃ、始めるとしようか。


『私とこの珍しい魔道具を差し出しますので、他のみなさんを無事に通して頂けますでしょうか』


 俺は、自分たちを犠牲にするようなことを口にする。


「私とこの珍しい魔道具を差し出しますので、他のみなさんを無事に通して頂けますでしょうか」


 ところが、メロディは臆することなく、俺の言った通りに言葉を繰り返した。


「ちょっと、メロディさん?!」


 当然ながら、フォルテたちが驚いている。


「ほう、仲間のために自分を差し出すか、いいねぇ……」


 盗賊の方はにやにやとしながら反応をしている。


「だが、やはりガキとはいえお前らを全員いただかなきゃあ、気が済まねえな」


 盗賊のリーダーと思われる男は、なぜかナイフをなめながらそんなことを言い出した。

 それにしても、なんでこういう連中は、ナイフをいきなりなめ始めるんだ? 舌切ったらどうすんだよ。バカじゃねえのか?


「分かりました」


「ちょっと、メロディさん?!」


 メロディの返事に、フォルテはさらに大声を出している。

 だが、その直後、なぜか納得したように俺たちの方へと歩いてきた。

 その時だった。


「アオーーーンッ!」


 馬車の中からスフォルの声が響き渡る。


「な、なんだ?!」


「この鳴き声はウルフですぜ、兄貴」


「バカな、この辺りにウルフなんていやしねえ。一体どこから聞こえてくるんだ」


 盗賊どもは慌てている。

 それと同時に、馬車からスフォルとゴブリンたちが飛び出てくる。


「頑張って下さい、みなさん」


 リリアも紛れるようにして外へ出てくる。

 突然の魔物の襲撃に、盗賊たちは混乱をしている。


「くそっ! こいつら、なんで魔物と組んでるんだ。てめえら! 魔物どもと一緒にこいつらも全部皆殺しだ!」


「へいっ!」


 盗賊のリーダーはグレイウルフとゴブリンの群れに驚きながらも、冷静に部下に指示を出している。さすがリーダーってやつは違うんだな。

 だが、それはもう遅いってもんだ。


『おい、メロディ』


「はい、リードさん!」


『思いっきりかき鳴らしてやれ!』


「はい!」


 俺の指示を受けたメロディは、俺から得た知識を元に、不協和音をかき鳴らす。

 正直言って、これは自分たちにもダメージのくるものだが、音楽に慣れ親しんでいない連中にはもっと大きなダメージになるだろう。


「な、なんだこれはぁっ!」


「耳が、耳がいてぇ……っ!」


 盗賊どもは音から逃れようとして、両手で耳を塞いでいる。こうなると、やつらが使う弓矢は使い物にならねえな。

 メロディが音を鳴らしている間に、フォルテとモニー、それとリリアが合流していた。


「まったく、無茶苦茶をしすぎですわ」


「そうですね。キーボさんから一応話を聞きましたが、無謀だと思いましたよ」


『悪いな。隙を作るにはこれしかなかったんでな』


『だとしても、もう少しまともな策はないのですか、リーダー』


『結果オーライだ。文句言うな』


 全員から文句を言われているが、しょうがねえってもんだろ。魔物と大音響のダブルパンチで、盗賊どもは完全に動きが狂っちまっている。

 ここからは俺たちの番だ。


『よっしゃ、こうなったら一曲行くぜ!』


『おおっ、聞かせる相手が気に食わねえが、俺たちの(ソウル)で分からせてやりやしょうぜ!』


『しょうがないですね。いきましょう、モニーさん』


 俺たちは魔物たちの攻撃で混乱する盗賊に向かって、一曲ライブを披露してやることにした。

 さあ、そのきたねえ耳の穴かっぽじってよく聞きやがれ、外道どもがよ!

 俺たちは音楽を奏で始める。

 さっきまでの不協和音とは打って変わって、ちゃんとした曲だ。俺たちの記念すべきデビュー曲だぜ。

 俺たちが気持ちよく音楽を奏でていると、そこで思ってもみなかったことが起きた。

 いつも通り、メロディが歌い始めるはずだったのだが、予想外の人物が反応したんだ。


「♪~」


『なん……だと……』


 俺たちは思わず耳を疑った。

 なんと歌い始めたのはゴブリンのリリアだった。

 俺たちのデビュー曲を聞いたことがないはずなのに、歌っているのは間違いなく俺たちのデビュー曲の歌詞だった。

 だが、驚いて演奏を止めるわけにはいかねえ。俺はメロディたちに演奏を続けるようにしっかりと伝える。

 一体何が起こっているのか分からねえが、音楽(オケ)を止めるわけにはいかねえ。しっかり一曲やり切ることが先決だ。

 これは、俺たち全員に共通した気持ちだ。

 さあ、聞きやがれ、俺たちの(ソウル)のこもった演奏をよぉっ!

 とにかく俺たちは、演奏の手を止めずに、盗賊たちの心に音楽を響かせ続けた。

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