40曲目 ゴブリンの手も借りたい
俺たちはリピート村のゴブリン問題を解決した。これで俺たちに与えられた命令は、西の街道の盗賊問題だけになった。
だが、俺たちはまだリピート村に滞在している。
というのも、盗賊たちへの対処が、さすがに俺たちだけでは厳しいからだ。スフォルという戦力はいるが、俺たちのスタイルはあくまでもバンド演奏だ。演奏中は無防備だから、その間に攻撃されればひとたまりもないってわけだな。
盗賊となると、ゴブリンとは違い、相手が人間だから考えて動いてくる。なおのこと、俺たちでは厳しくなりかねなってわけだ。
そこで、俺たちが戦力としてみているのは、今回従えることになったゴブリンってわけだ。
その相談をし用かと思っているところに、シシーモが一人のゴブリンを連れてやって来た。
目の前にいるゴブリンは、俺たちに同行したいと言い出した女性のゴブリンだ。見た感じでは、一番年上になるモニーよりもさらに年上のような感じだな。
驚いたことにこのリリア、俺たちの声を聞くことができるらしい。
『いや、リリア。お前って俺たちの声が聞こえるのか?』
「はい、はっきりと聞こえます。といいますか、どこから聞こえてくるんです?」
さっきから、リリアはきょろきょろと辺りを見回している。メロディたちの声ではない声の出どころを探しているみたいだ。
『俺たちなら目の前にいるぜ。メロディ、ピンク色の髪の少女が持っている物体、それが俺だ』
「えっ、これがそうなんですか?」
俺の言葉を聞いたリリアが、驚いた顔をしてじっと覗き込んでくる。
顔を近付けられて改めて思うが、ゴブリンというには顔がかなり整ってきれいな感じだ。発育もいいので、俺はちょっと困惑してしまう。
いや、ゴブリンの着ている服がなんていうか、短めのワンピースってやつだからよ。体型がきっちり出ちまってるんだ。
『リーダー、女の子に迫られているからって恥ずかしがってんじゃないですぜ』
『お前なっ! こんな格好の女に迫られてどぎまぎしねえ男の方が珍しいってんだよ!』
「まあ、リードさんってばいやらしいですのね」
『おいこら、フォルテ!』
まったく、ベスもフォルテもからかってくんじゃねえよ。
『リリア、悪い。ちょっと離れてくれ』
「あっ、はい。すみませんでした」
俺が距離を取るように言うと、リリアはおとなしく離れてくれた。
『まったく、まずはその格好をどうにかしなきゃいけないな。見た目はゴブリンそのものだし、連れて歩くにはそれなりの格好をさせた方がいいだろう』
「それは賛成いたしますわね。でしたら、それはわたくしにお任せ下さいませ。ピアノート子爵家の名において、立派にさせていただきますわ」
「あ、はい、お願いします」
俺がちょっと愚痴交じりにいうと、フォルテがやる気を見せていた。やはり、こういう時はお嬢様っていうのは頼りになるな。
ただ、その視線がドヤ顔っぽいのはどうにかなんねえかな。結果を出してからドヤってくれ。俺はついため息をついてしまう。
『それはそうと、問題はもうひとつの国王からの命令だな』
「そうですね。街道に出現する盗賊の方は本当に厄介でございます。そこそこ強い方を雇っていませんと、無事では済みませんからね」
「隣国との国境への街道ですわよね。まったく、なんでそんなところに盗賊なんて出ますのかしら」
「よくは分からないんですけれど、そんなに困ったことなんですかね」
モニーとフォルテが問題視しているようだが、村人だったメロディにはちょっとよく分からないもののようだった。
「とても困ったことですわ。あの街道は隣国の方もよく通られる場所ですので、このまま放っておけば、隣国との間で戦争、大規模な戦いすら起きかねませんもの」
「そ、それは大変です!」
戦争になると聞いて、メロディは事の重大さを理解したようだな。てか、戦争が分かるんだな、メロディ。
「そこで、リリアさん。ちょっとお頼みがあります」
「はい、なんでしょうか」
モニーがリリアに話しかけている。何を頼むつもりなんだろうかな。
「私たちがキーボさんたちを使って歌と音楽で盗賊を止めることになるのですが、私たちが無事で済むように、ゴブリンの方から戦えそうな方を何名か同行させてもらいたいのです」
「なるほど……。分かりました。それでしたら、シシーモ様たちに相談をなさればよいかと思います。私も必ず役に立ってみせます」
おや。どうやらモニーは俺と同じことを考えていたようだな。
モニーからの頼みを聞いて、リリアは二つ返事でゴブリンたちの説得を引き受けてくれた。
頼みを聞いて、リリアは一度俺たちから離れていった。
「ゴブリンたちを味方にですか。同行している兵士たちは頼らないのですか、モニー様」
「ええ、頼りません。それに、陛下のご命令では私たちの力を見極めることが主な目的ですから、ここではゴブリンに頼るのが一番なのです」
「そうなのですね。では、私たちは何をすればいいのでしょうか」
モニーの答えを聞いた上で、メロディはモニーに質問をしている。いや、今ので答えは出てただろ。くっ、これが教養の差というものか……。
「メロディさん、わたくしたちのすることはただひとつですわ」
「えっ?」
フォルテが横から出てきて、メロディの肩を叩きながらはっきりと告げる。
「最っ高の演奏をすることだけですわ」
その時のフォルテの顔は、この上ないくらい見事な笑顔だった。




