3曲目 少女との出会い
俺から放たれた光が辺りを包む。
『な、なんだ、この光は……』
俺が驚いていると、目の前の少女も驚いている。
少女の視線の先を見ると、辺りの景色が少し白くぼやけている。その中にいた犬っころどもの動きが止まっている。一体何が起きているというんだ。
【少女:メロディ を 演奏者 と認めますか?】
(はあ?)
俺が驚いていると、わけの分からない声が響いてきた。
演奏者ってどういうことだ?
楽器の演奏者なら俺のことだろうが。なんでこんなどこの誰ともわからないガキを演奏者として認めなきゃなんねえんだよ。
わけの分からないメッセージに、俺は怒りがこみあげてくる。
だが、今は俺の体が動かねえし、あの犬っころどもが動き出せば、間違いなく俺たちは食い殺されるだろう。
だけどよ、今の状況が把握できねえ中で、こんなわけの分からないメッセージを受け入れるわけがないってもんだ。まずは状況を確認させろ。
【状況の確認を希望。承知しました、鏡を出します】
そんなメッセージとともに、俺の前には大きな鏡が出てきた。
そこに映った姿に、俺は驚愕した。
『おいこらっ!』
俺がそう怒鳴った瞬間、少女はびくっと体を震わせた。
っと、わりぃな。別にお前に怒鳴りつけたわけじゃねえ。
でもよぅ、俺の目の前に映った姿に、驚くなっていう方が無理だってんだよ。
そこにあったのは、どう見ても俺が使っていたリードギターが映ってたんだからな。どう見ても俺の姿じゃねえ。
俺が捻るような感じで体を動かそうとすれば、同じように鏡の中のリードギターがかすかに傾く。
間違いねえ。俺の今の姿は、このギターそのものになってるらしいぜ。
『分かった。……というと思ったか、ボケェッ! 俺の体がギターになっているだと?! どこのラノベだ、ゴルァッ!』
俺は謎の声に向かって文句を言いまくる。
『くそっ、これじゃ体が動かねえわけだぜ』
同時に、俺が動けなくなっている理由について納得がいった。それと同時に、俺の姿を映していた鏡はすうっと跡形もなく消えやがった。
俺は盛大にため息をつくと、目の前の少女をじっと見る。
『そこのがきんちょ、俺を手に取れ』
「えっ?!」
少女は驚いた顔をしてやがる。まっ、楽器が喋るんだ、しょうがねえか。
正直なところ、認めたくはねえが、この状況は受け入れるしかねえ。
『緊急事態だからな。ひとまず、てめえを俺を扱う演奏者として認めてやる。俺を手に取れ』
「わ、わけが分からないよ……」
『とりあえず、俺に任せておけば問題ねえ。細い方を左手で、でかい方を右手に持つんだ。いいから早くしろ!』
「は、はいっ!!」
俺が大きな声で叫ぶと、少女はおそるおそる俺に手をかける。
その瞬間、今度は別の色の光が放たれる。
【少女:メロディ を ギター:リード の演奏者と認めます】
そんなメッセージが響き渡る。
次の瞬間、止まっていた時が動き出しやがった。
「ガアアッ!」
「キャーッ!」
犬っころの大きな声に、少女がびびっている。
『落ち着け。そのまま俺のピンと張った弦に手をかけておけ』
「は、はいっ!」
俺の声に少女は返事をするが、一体どうすればいいっていうんだ。
この少女の反応を見る限り楽器というものを見たことすらねえみたいだからな。演奏しろっていっても、多分まったく分からねえ。
くそっ、俺が弦の一本でも動かせりゃいいのにな。
うん、弦を動かす?
そうか。
『おい、そのまま右の手で弦を弾け!』
「は、弾く?」
『そうだ。六本とも全部、思いっきりな!』
「わ、分かりました」
少女は俺の声に決意を固めたらしく、俺の体をしっかりと持っている。
「えーいっ!」
少女は右手を上げて、弦を目がけて勢いよく振り下ろす。
ギャーンッ!
とてもいい音が響き渡る。
その瞬間、犬っころどもの動きが止まる。
『来たぜ来たぜ来たぜっ! この音色だ! もう一回やってやれ!』
「はっ、はいっ!!」
少女はもう一回右手を振り上げる。
『俺の初演奏を聴かせる連中が犬っころってのは不満だが、俺の鼓動をその耳に焼き付けやがれ!』
俺の叫びと同時に、少女の手がもう一度俺の弦を弾く。
ギャーンッ!
「キャインッ!」
俺の弦から放たれた音を聞いた犬っころたちが、耳から血を噴き出してその場に倒れ込んだ。
「えっ……、一体何が起きたんですか?」
『はっ! 犬っころどもには俺の演奏はちょっと刺激が強すぎたか。さっ、こいつらが動けないうちに、安全なところまで移動するぞ!』
「そ、そうですね……。ウルフが迫ってきていることを、村のみんなに伝えなきゃ……」
少女は俺を抱えて、ゆっくりとその場から離れていく。
なんでこうなっているのかはよく分からねえが、ひとまず最初の危機は脱したようだな。
それにしても、一体ここはどこで、一体どういう状況になっているんだ。俺はギターになっちまってるしよぉっ!
『がきんちょ』
「わ、私はメロディっていいます」
『そうか。メロディ、お前が言う村って場所に戻ったら、俺とちょっくら話をしねえか? 状況がさっぱりよく分からんのでな』
「わ、分かりました。とにかく今は村まで戻ります」
『おう、そうしてくれ』
メロディは俺を抱えたまま、自分の住む村へと必死に走っていった。
これが、俺とメロディの出会いだった。




