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異世界バンド~俺たちの熱い魂(ソウル)で異世界を救ってやるぜ!  作者: 未羊


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24/61

24曲目 聖女の決意

 その日の夜、私はモニーさんとお話をしておりました。

 それといいますのも、子爵邸から戻られてからというもの、ずっと考え込んでいるようでしたからね。


『モニーさん、一体何を悩んでられるのですか?』


 自室で椅子に座ったまままったく動かないモニーさんに、私は声をかけます。

 しばらくは黙っておりましたが、モニーさんはくるりと私の方へと振り向いてきました。


「これはキーボさん。申し訳ございません。ちょっと考えごとをしておりました」


 第一声から、私に対して謝ってきました。一体どうしたのでしょうかね。


『私は別に咎めるつもりなどありませんよ。ただ、ずっと考えごとをしているようですので、それが気になって仕方がないだけなのです』


 私は正直な気持ちをモニーさんに伝えます。

 ところが、モニーさんはどういうわけかもう一度ため息をついていました。気になって仕方がありませんね。


『どのようなことをお悩みなのでしょうか。このキーボでよろしければ、相談に乗りましょう』


「ありがとうございます」


 私が声をかけますと、ようやくモニーさんは笑顔を見せてくれました。ただ、ちょっと元気はなさそうですが。


「実は、キーボさんたちのことを考えておりました」


『私どものことですか?』


 モニーさんの悩みは、私たちのことらしいですが、ちょっとよく分からないですね。これは詳しく聞いてみるしかありません。

 それによりますと、私たちがどうしてこの世界に現れたのかということが理解できないようですね。ええ、それは私たちもですが。

 さらに詳しく聞いてみますと、神のお告げについての内容のようでした。


「これまでにも、キーボさんたちのような未知の道具がこの世界に現れることはございました。その時、必ずと言っていいくらいに世界には存亡の危機が迫っているという状況が訪れていました」


『なるほど。つまり、世界を脅威から救うために、人類にそのための道具がもたらされるということでよろしいですかね』


「はい、そのように理解していただいて結構です」


 モニーさんの話は理解できましたが、それならば、なぜモニーさんがその様に悩んだ顔をされているのかということが理解できませんでした。


「私が悩む理由は、キーボさんたちが戦うための道具ではないということです。今までは武器や防具などといった、戦いに必要なものばかりでしたから。直接打撃を行えそうですが、先程の子爵邸での件からするに、それは本来の使用方法とは違うようですからね」


『なるほどね。つまり、どうあがいても戦うための道具でないということで、思い悩んでいるというわけですか』


「はい」


 その話は、私にもよく分かりますね。


「しかも、意思の宿った道具というのも、今までにはあまり類を見ないものです。それゆえに、私はどうしたらいいのかということがますます分からなかったのです」


『なるほどですねえ』


 話を聞き終えた私は、ひとまずモニーさんのお話に頷いておきます。次に否定をするとしても、相手の話をきちんと聞いていたという態度は重要ですからね。

 それはなぜか。話を遮られた相手は、人の話を聞こうとしなくなりますから。こちらの話を聞いてもらうために、相手の話も聞いておくということなのですよ。


『私が思うにですが、私たちがロックバンドという音楽をしているメンバーということが、今回の危機においては有効であるということなのでしょう』


「音楽……ですか?」


『はい、その通りです』


 私の話に、モニーさんは疑問を感じているようですね。

 まあ、仕方がありませんか。音楽という概念すらない世界ですからね。


『先程、リーダーやベスと一緒に音楽を演奏()ってみてどうでしたかね』


「……なかなか、楽しかったと思います」


『そう、その気持ちですよ。音楽というのは、自分の気持ちを音に乗せて伝えるという手段なのです。普段は出しにくい気持ちも、音楽に乗せると素直に出るということがあります。そう、音楽というの気持ちを表現するための一つの手段なのですよ』


「……気持ちを表現する、手段」


 私の話を聞いて、モニーさんはまた考え込み始めましたね。いけませんね。これは難しく考えている証拠です。


『まあ、手紙などと同じように考えて下さい。私たちは自分たちの伝えたい気持ちを音と歌詞に乗せて、観客たちと共有するためにバンド活動をしております。まあ、正確には自分たちの気持ちとは言えない時もありますが、同じ空間を共有した時の一体感ときたら、なんともいえない爽快感がありますよ』


 私がいろいろと語っていますが、モニーさんはなにやらずっと考え込んでいるようですね。


「……私にも、できるのでしょうか」


『できるできないではなく、やるというものです。ふふふ、いいですね。音楽を通じての交流というものは。俄然燃えてきましたよ』


「そういえば、フォルテ様のところにはグレイウルフがおりましたね。あのグレイウルフももしかしたら……」


『ありえますね。魔物すらもとりこにしてしまう音楽っていうのは、考えただけでぞくぞくしてきます』


 私が一人で盛り上がっていますと、モニーさんは私から視線を外し、前をじっと見つめています。はて、一体どうしたのでしょうか。


「私、決めました」


 そういったかと思いますと、突然立ち上がります。


「私、音楽で世界を救ってみせようと思います。キーボさん、お力をお貸しください」


『ひゅ~、いいですねえ。ええ、私めの力でよろしければ、いくらでもお貸ししましょう。音楽で世界を救う。いい響きじゃないですか』


 その時のモニーさんのお姿といったら、それは光り輝いておりましたね。

 俺たちの音楽がこの世界に平和をもたらす。その言葉の響きに、私はひと晩じゅうにやけが止まりませんでしたよ。

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