23曲目 再びの始まり
俺たちは、バンドのキーボード担当の喜以保芽露と再会してしまった。
なんということだ。俺たちと同様に自分たちの使っていた楽器として異世界にやってきちまったらしい。
俺たちの声が聞こえたせいか、俺たちはメロディたちに抱え上げられてしまう。
「リードさん、もしかして聖女様のお持ちになられている変な道具もお仲間なんですか?」
がっちりと抱えられた俺は、メロディから尋ねられてしまう。
だが、さっきの話は丸聞こえだったはずだから、ごまかしても意味はない。正直に答えるしかねえぜ。
『ああ、そうだ。聖女様が持っているのは、俺たちの仲間でキーボード担当の喜以保芽露っていうんだ。メロディと名前が似てるから、キーボって呼んでやってくれ』
『なんと。その少女の名前はメロディというのですか。モニーさんとの出会いもそうですが、似た名前の方との出会いというのも、なんとも運命的ですね』
『頼むから黙ってくれ。今はお前と話をしてねえ!』
まったく、ちょっとナルシストが入っているから、こういう時は一気にうざくなるというものだぜ。
だが、これでいて曲によっては俺とのダブルヴォーカルになるくらいに歌はうめえ。くそっ、こんなところにもメロディとの共通点があるじゃねえかよ!
「まあ、キーボさんってば」
聖女様はくすくすと笑っている。メロディたちよりは年上のようだが、まだ俺たちの方が年上だからか、かなり可愛い顔になるものだな。
まっ、聖女っていう職業柄、そういう無邪気な笑顔の方がよく似合うってもんだ。
「えっと、聖女様?」
置いていかれそうになっていたピアノート子爵が声をかけている。
「これは子爵様、失礼を致しました。どうやら、この道具たちはお知り合いのようでしてね。今回私がご訪問を致しましたのも、この道具たちのことがあってのことなのです」
「は、はあ、そうなのですか……」
なんでそんなにため息をついてるんだ、ピアノート子爵。
「お父様、聖女様のお言葉に対して失礼ですよ」
直後に娘であるフォルテにもこんな厳しい言葉をかけられてしまっている。なんともやっちまった感があるな、これは。
それでもモニーという聖女様はにこにことしている。さすがは聖女、笑顔を崩さないな。
「実は、私にはお告げがあったのです。私の持つこのキーボさんと同じような、見たことのない道具たちの持ち主を集めなさいと。そこで見えたお姿こそ、フォルテ様とメロディ様だったのです」
子爵に怒っているフォルテを落ち着かせながら、聖女様は何かをいきなり語り始めた。お告げとは、いかにも聖女らしい話だな。
しかし、それ以上の情報は出てこなかった。お告げって、俺たちだけの話かよ。てっきりそれ以上のことがあると思ったんだが、拍子抜けだな。
「何ゆえにこのようなお告げがあったのかは正直なところ分かりませんが、ですが、私たちが偶然にもこのような未知な道具を持った者たちだという共通点がございます。おそらくは、私たちが揃うことで何かが起きるということなのでしょうね」
『まあ、そういうことになるでしょうかね』
聖女様の話す内容に、芽露改めキーボのやつが納得しているようだった。
だが、キーボ、てめえは何かを忘れていねえか?
『おいおい、キーボ。てめえは弩羅夢のことを忘れたってわけじゃねえよね?』
『ああ、弩羅夢ですか。そういえば、彼はまだ見ておりませんね。私たちと同じようになっているとなれば、かなり目立つでしょうが』
「あら、キーボさんたちはまだお仲間がいらっしゃったのですか?」
俺たちが話していると、聖女様が反応してくる。ってことは、お告げはまだ弩羅夢に関しては起きていないってことだな。
俺たち三人でもどうにかなるっちゃなるが、俺たちがインディーズながらもそこそこの人気を出せたのは、あいつがいたからだ。こちらの世界でも、放っておけるわけがない。
『ああ。弩羅夢っていう俺たちのバンド仲間がもう一人いるんだ』
『見た目のインパクトは、ベスとは違った方向でありましたね。でも、彼は私たちにとっては必要な人物でしたからね』
『俺たちの移動は、あいついてこそだったからな。俺たちには免許がねえからよ』
「なんだか分かりませんが、とにかく大切なお方だということは分かりました」
俺たちの話を聞いて、聖女様はどうやら納得がいったようだ。
俺たちの声が聞こえるメロディとフォルテは頷いてはいたが、聞こえない連中は何の話をしているのか分からなかっただろうな。見てみろ、首を傾げていやがるぜ。
『よし、せっかく三人そろったんだ。ちょっくらセッションすっか』
『いいですな、リーダー』
『そうですね。もしかしたら、弩羅夢を見つけられるヒントになるかもしれません』
『そうとなりゃ、メロディたち! 俺たちをしっかり持ちやがれ!』
「は、はいっ!」
「やれやれ、仕方ありませんわね」
「よく分かりませんが、私も参加するべきなのでしょうね」
そう言いながらも、三人は俺たちをそれぞれ構えていた。
『モニーさん、弾くところを光らせますので、落ち着いて弾いて下さいね』
「はい、分かりました」
『よっしゃ、それじゃデビュー曲行くぞ!』
『おうよ!』
その瞬間から、子爵邸の中には俺たちの音楽が響き渡る。
ロックバンドとはいえど、デビュー曲はまだおとなしい方だったからな。俺たちの音楽の入門にはちょうどいいだろう。
ドラム抜きではあるが、俺たちは濃い四分半を過ごしたぜ。




