22曲目 バンドマンたちの再会
私は、聖女であるモニーさんと一緒にとある場所へとやってきました。いやはや、背中に背負われての移動というものはまだ慣れませんね。しかも、視界が横転してますからね。
『モニーさん、本日はどちらまで行かれるのですか?』
「はい、お告げにありました方々が、王都に到着されたようです。その方たちにお会いしに、とある貴族のお屋敷を訪問いたします」
『なるほどですね』
どうやら、先日お話しくださいましたギターのような道具を持った方々が近くまでいらしたようですね。
ギターといいますとリーダーとベスですが、もしかしたらもしかするかもと期待をしてしまいます。
ともかく私は、モニーさんに背負われたまま、その時を楽しみにさせていただきます。
「聖女様。ピアノート子爵家に到着いたしました」
「ご苦労さまです。では、参りましょうか」
どうやら目的地に到着したようでして、私たちは馬車を降ります。
その際、モニーさんは私が馬車のドアに当たらないように気遣って下さいました。さすが聖女と呼ばれることがありますね。このような気遣いができるからこそ、聖女というものなのでしょう。
私たちは中へと招き入れられ、ピアノート子爵と呼ばれる方々から歓迎を受けます。
詳しくは知りませんが、モニーさんがいらっしゃる教会での扱いなどを見てみても、モニーさんはそれだけ高い地位の方というのは容易に想像がつきます。
「これは聖女様、私たちのお屋敷によくお越し下さいました。大変名誉なことと存じます」
おっと、なんとも仰々しい挨拶ですね。
ただ、私はモニーさんの背中にいますので、どのような方と話をしておられるのか、その姿を見ることができません。やり取りを聞いて想像するしかありませんね。
「いえ、急な訪問でしたのに、長旅の疲れをおして対応して頂き、感謝を申し上げます。立ち話もなんですので、座ってお話を致しましょう」
「はい。すぐにお飲み物を用意するのだ」
「はい、畏まりました」
男性はモニーさんの言葉に同意すると、すぐに部屋に案内する準備を始めたようですね。
人の足音がうるさくなっています。
「ええと、そちらは子爵様の娘様と……ご友人の方でよろしいのでしょうか」
「お初にお目にかかります、聖女様。わたくし、フォルテ・ピアノートと申します」
「わ、私はメロディといいます。フォルテ様とご友人だなんて、そんな、おそれ多いです……」
モニーさんが気になった女性たちが名乗っていますね。フォルテとメロディ、なんともいい名前ではありませんか。
私が名前の響きを気に入っていますと、モニーさんはお二人に何か声をかけていらっしゃいますね。真後ろにいるといいますのに、ひそひそと話をしていますので聞き取れません。
気にはなるのですが、ひとまずはモニーさんにお任せして、私は黙っていましょう。
こうして、私たちは応接室に移動をします。
さすがに椅子に座るにあたり、私はソファーの横に立てかけられてしまいました。
モニーさんの目の前にはピアノート子爵と名乗っていた男性だけがいるようですね。フォルテさんとメロディさんは、どちらなのでしょうか。
しばらくすると扉が開く音がして、お二人が入ってきました。ええ、とても見覚えのあるギターを背負ってです。
「お待たせいたしましたわ」
「聖女様のお言いつけ通り、私たちの持っているものを持ってきました」
「ありがとうございます。では、おかけになって下さい」
「はい」
返事をしたお二人は、ソファーにギター立てかけてから座られていました。
それにしても、見れば見るほどリーダーの持っていたリードギターとベスの持っていたベースギターそっくりですね。
私がじっと見つめていますと、なにやらひそひそ話が聞こえてきました。
『リーダー、なんかすごそうな女の子ですぜ』
『聖女って言ってたんだ。そりゃすごいやつに決まっているだろ』
『そうなんですかい?』
『聖女っていうのは神の使いとされる女性で、様々な奇跡を起こすって言われているんだ。そんなやつがすごくないわけがないってんだよ』
『ほへー。さっすがリーダー、物知りですねえ』
おやおや、この声は間違いありませんね。リーダーとベスです。
その姿が見えないところに加え、誰も反応しないところを見ますと、私と同じように楽器になってしまっているとみていいようですね。
『なるほど。モニーさんはそのようなすごいお方なのですね』
『そうともよ。モノホンならぜひとも……んん?』
私がしれっと会話に入り込みますと、リーダーはすぐに気がついたみたいですね。
『おい、今の声って、まさか……。芽露、お前なのか?』
『えっ、芽露だって? どこにいるっていうんだい?』
おやおや、二人が慌てふためき始めましたね。これは実に面白い光景です。
『お二人とも、落ち着いて下さい。私はここですよ。モニーさんのソファーに立てかけられたキーボード、それが私です』
『な、なんだってーっ?!』
ふふふっ、驚かせることに成功したようですね。
ただ、今のリーダーとベスの声で、モニーさんたちは思わず私たちの方を見てしまったようです。
腰を折ってしまって申し訳ないですね。
がたがたと立ち上がる音が聞こえますと、私たちはモニーさんたちに抱え上げられてしまいました。




