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異世界バンド~俺たちの熱い魂(ソウル)で異世界を救ってやるぜ!  作者: 未羊


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19/60

19曲目 向かう先では

 その頃の王都。


『それじゃ、本当に会えるのですかね』


「はい。あなたのお仲間は、今こちらに向かっています。ただし、全員ではないようです」


 私は、喜以保芽露(きいぼめろ)。バンドのキーボード担当です。

 ところが、今は私自身がキーボードとなり、目の前にいる少女モニーのパートナーとなっています。

 一体何が起きたのか分かりませんね。

 ただ、あの元日の未明にスリップ事故に巻き込まれて崖下に落ちたのは間違いないのですが、なぜこのようになっているのでしょうか。

 まあ、どのような形であれ、生きているのならよしとしましょう。


『それでモニーさん。全員ではないということはどういうことでしょうか』


「はい。私に下りたお告げによりますと、似たような形のものがふたつ見えるのです。隣には少女が二名見えます。どうやら、報告のために私のいる王都へと向かってきているようなのです」


『ふむ、なるほど……。そのふたつ見えたものの形は分かりますか?』


「はい。今その形をお描きしますね」


 私の要求に、モニーさんは紙のような薄っぺらいものを取り出して何かを描き始めました。

 でき上がったものを見せていただいたのですが、そこに描かれていたものを見まして、私は驚きました。


『こ、これは……!』


「見たことのないものなのですが、キーボさんはご存じなのですね?」


『ああ、よく知っていますとも』


 私が驚いていますと、モニーさんは私を食い入るように見てきます。


『これは、私のバンド仲間であるリーダーとベスが使っているギターですね。ギターというのはこのような形をしていて、張られている弦というものをはじいて音を出す楽器となります。形は違えど、私とは同類ということになりますね』


「そうなのですね」


 私の話す内容に、モニーさんの反応が薄いようです。

 まあ、仕方ありませんね。この世界では楽器というものに関する知識がないようですから。

 ただ、モニーさんだけは私のことを知っていたようで、この通り彼女の所有物となっているのですがね。

 このモニーさんという方は、私よりも年下ではありますが、現在いる境界と呼ばれる場所の中では地位は上の方のようです。そのような方に拾われたことで、私はこのように大切にされているわけなのです。

 いやはや、これは運がいいといった方がよいのでしょうね。


「音を出すといいますと、キーボさんもそのような道具だという風に仰られていましたね」


『ええ、そうですよ。私に並んでいる白と黒の板が見えると思いますが、それを押さえることで音を出すことができます。ですが、このキーボードという楽器には、電気というものが必要なのですよね。それのおかげで音を出せていましたからね』


「なるほどなのです。……今、音を出すことはできるのでしょうかね」


『それは分かりませんね。音色に変化する物がなければ、叩いても打音くらいしか出ませんからね』


「……やってみましょう」


 私が諦め加減に話していますと、モニーさんが何か意を決したように私を見てきます。


【絆の強まりを検知しました。スキル【技術共有】を獲得しました】


 その瞬間、このような言葉が私の頭に響いてきました。


「あの、キーボさん……」


『おや、モニーさんにも妙な言葉が響きましたかね』


「はい……。なんでしょうか、技術共有というのは」


『私にも分かりかねますね。名前の通りであるのなら、何かしらの技術を相手を伝えるということでしょう』


「となりますと……」


 話しのやり取りをする中、モニーさんは私に近付いてきます。

 今まで私の鍵盤に触ろうともしてきませんでしたのに、この時ばかりは私の鍵盤に手が伸びてきていました。


 ~♪


 モニーさんが鍵盤のひとつを押すと、音が響き渡りました。この音は、()ですね。


「すごい、音が鳴り響きました。他のところを押さえるとどうなるのでしょうか」


 叩いた音ではなかったことに感動したのでしょうか、モニーさんは次々と鍵盤を押さえていきます。違う鍵盤を押さえているので、当然ながら違う音が出ています。

 先程までの表情とは違い、どんどんと楽しそうな表情になってきています。


「なるほど、なんとなく分かりました。もしかすると、キーボさんは……いえ、キーボ様は聖器なのかもしれません」


『聖器?』


「はい。この世界に危機が訪れる時に、神様より与えられるとする、邪なるものを払う道具のことでございます。大抵は武器や防具という形なのですが、中にはそうでなかった時もあったそうですよ」


 聞き慣れない単語に聞き返しますと、モニーは丁寧に説明をしてくれました。

 その話を聞いた時にはそんなバカなとは思いましたが、よくよく考えれば意志を持った道具などそう考えてもよい気がしてきましたよ。


『ってことは、モニーさんが受けたお告げの中のギターも、その聖器とやらになるのですかね』


「可能性はございます。……これはいけません。ピアノート子爵様たちを受け入れる準備をしませんと」


 何かに気がついたようでして、モニーさんの動きが慌ただしくなります。


「私は司教様にお伝えしてまいります。キーボ様、しばしお一人にしてしまうことをお許しください」


『あ、ああ。私は大丈夫ですので、気を付けて行ってきて下さい』


「はい、それでは失礼致します」


 モニーさんは部屋の外へと飛び出していってしまった。

 それにしても聖器とは、なんとも話が大きいですね。

 ですが、この世界でギターを見ることになるとは思いませんでした。ふふっ、彼らであるのならこの上なく嬉しいことですよ。

 私はしばらくの間、モニーさんが戻ってくるまで一人で思いを巡らせることにしたのでした。

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