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13曲目 再会

 岩場に置かれていたギターは間違いなく、俺のバンドのメンバーであるベスこと米須義多の使っていたベースギターだ。

 それにしても、なんでこんな大っぴらな場所に置いてあるんだ?

 俺が疑問に思っていると、何かが聞こえてくる気がした。


「あら、何かが聞こえますわね」


「私も聞こえます」


 フォルテに続いてメロディもその耳に何かの音を聞きつけたみたいだ。


「私には何も聞こえないが?」


「お父様には聞こえませんか? 妙な声が」


「まったくだな」


 ピアノート子爵や一緒についてきている連中には、俺たちの耳に聞こえてくる鼻歌が聞こえないらしい。

 ってことは、鼻歌の発生源は一か所しかねえ。


『メロディ、フォルテ。あのギターに近付くぞ。この鼻歌の発生源はあいつだ』


「ええっ?!」


 俺が指示を出すと、二人揃って驚いてやがった。

 まっ、鼻歌って言われても音楽のないこの世界じゃピンとこねえか。

 それにしても、この声はやっぱり間違いねえな。


「お、おい、フォルテ!」


「お父様。やはりあの道具は、このリード様のお知り合いの方のようですわ。わたくしたちならば心配ありませんので、そこで周囲を警戒しておいて下さいませ」


「あ、ああ……」


 ピアノート子爵は娘を止めようとしたが、フォルテが強く言いきってしまったので、フォルテの言うことに従うしかないみたいだな。

 女ってのは怖えな。


 まあ、そうこうしている間に、俺たちは怪しいギターの前にやって来た。


『おい、ベス!』


 鼻歌を歌い続けるベスに、俺は一喝してやる。

 こいつ、俺たちメンバーの中で、とんでもなく歌が下手なんだよ。楽器は演奏できるのに、なんで歌うと音を外しまくるんだ。理解ができん。

 そんなやつが鼻歌を歌ってるんだから、不快極まりないってわけだ。だから、怒鳴りつけてやったんだよ。


『はっ、この声はリーダーですかい?!』


 怒鳴りつけたら反応があった。やっぱりベスじゃねえか。


『ああ、そうだ。メロディ、俺を前に出してくれ』


「分かりました」


 メロディは背中から俺を降ろすと、自分の前へと俺を回す。


『ああっ! リーダーの使っていたリードギター! って、リーダーはどこですかい?』


『お前と一緒で、体がギターになっちまってんだよ。目の前のリードギターが俺だ』


『ええええっ!?』


 ベスのやつが大げさに叫んでやがる。

 まっ、俺も自分の状態を知った時には同じ状況になったからな。このくらいは大目に見てやるか。


『う、嘘だろ……。あのかっこいいリーダーが、ギターに……』


『受け入れろ。どうせ今は、お前もギターなんだからな』


『へ、へい……』


 俺の言葉に素直に返事をしてるが、信じられねえって気持ちが言葉の端々から漏れ出てっぞ。

 だが、ベスまで楽器になっているとはなぁ……。これじゃ芽露と弩羅夢の野郎も、同じようになっている可能性が出てきたぞ?

 死んでないというのなら朗報だが、どうして俺たちは自分たちの使っていた楽器になってんだろうな。わけがわからねえぜ。


「あの、リード様?」


『なんだ、フォルテ』


 俺がちょっと考えごとをしていると、フォルテがおそるおそる声をかけてきた。


「やっぱり、リード様のお知り合いだったのですか?」


『ああ、俺と一緒にバンドを組んでいる米須義多、俺はベスって呼んでやってるやつさ』


「ベス様でいらっしゃいますか。えっと……」


『ああ、性別なら俺と同じ男だ。だから、着替える時は裏返してやれよ。こいつは俺とは違うからよ』


「わ、分かりましたわ」


 フォルテは俺の話を理解してくれたようだ。

 それにしても、俺の声が聞こえて話しができるってことは、もしかすると……。


『おい、フォルテ』


「なんでしょうか、リード様」


『ベスのやつを持ってみてくれ。もしかしたら……』


「分かりました。手に取ってみればよろしいのですわね」


 俺の推測を聞いて、フォルテはごくりと息をのんでベスへと近付いていく。


「リードさん、大丈夫なのでしょうか」


『心配するな。俺の予想通りなら、フォルテはベスを扱えるはずだ』


 俺たちは、フォルテの様子をじっと見守っている。

 だが、外野がうるさかった。


「フォルテ、何をしているんだ。戻りなさい!」


「子爵様、落ち着いて下さい!」


「フォルテ様を信じましょう!」


 そう、ピアノート子爵たちだった。娘が心配なあまり、ものすごく大きな声で叫んでやがる。


『おい、メロディ』


「はい、リードさん」


『いつでも演奏()れるように身構えていてくれ。子爵の声で魔物が寄ってくるかもしれねえからよ』


「……はい!」


 ヘオネ大森林は危険な場所だって言ってたからな。あんな大声を出されたんじゃ、何が起きるか分からねえ。一応、備えておいた方がいいだろう。

 俺たちが警戒を強める中、フォルテがいよいよベスに手をかけようとしている。

 まさにその時だった。


「アオーーーンッ!」


 ちっ、ウルフの遠吠えか。


「わわっ、あの鳴き声はグレイウルフですよ」


 グレイウルフ?

 前に倒したウルフとは違うってことなのか。

 だが、俺たちのいる場所に緊張が走ったことには違いねえ。


『フォルテ、さっさとベスを手に取れ!』


 緊急事態ゆえに、俺は叫ぶ。

 それと同時に、フォルテたちのいる場所からほど近い場所の茂みが、がさがさと音を立てる。


「グルァッ!」


 茂みからウルフが姿を見せ、無防備なフォルテ目がけて飛び掛かってきたのだった。

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