第二十二章
その夜、零子は野天の事務所に宿泊した。他に宿は北福登市内で確保していたが、キャンセルした。バーチャルマップのホログラムで出されたあの硬山をリアルタイムで観察したいという希望だった。野天は許可したが、狗吼村へのトンネルが開いたら、声をかけて起こしてほしいと言って、自分の部屋に引き上げていった。
それは未明の三時半ごろだっただろうか。長椅子に横たわって眠っていた零子は、何かの気配を感じて目を覚ました。起き上がって真っ先に確認しに行ったのはあのホログラムだった。そこに映し出された硬山の西側にある、あの奇妙な突起…その下に、洞が口を開けていた。間違いない。それは紛れもなく異界、狗吼村に通じるトンネルだ。零子の頭の中で次にどうするか、その考えが渦巻いていた。野天にはトンネルが開いたら必ず自分に報告するように言われていたのだ。しかし、トンネルが開いている時間はわずか五分…野天は今眠っている。彼を起こして支度させている時間を考えたらトンネルは再び閉じてしまい、この機会を逃してしまうだろう。そして、生きている間に二度と狗吼村に行くことができなくなる可能性が高いのだ。
ふと、背後に何者かの気配を感じて振り返った。そこに人影があった。黒いローブのようなものをまとった人物に見えた。ローブの中から少しずつ人の顔が現れた。
「あ、あなたは…」
零子が言い終わらないうちに、その人物は懐から袋を取り出し、何か粉のようなものを撒いた。激しい睡魔に襲われ、意識がなくなった。




