11.教会(9)
ゆがんだ景色が落ち着けば俺は1人知らない場所に立っていた。そして、あたりを見渡してもカルの姿もスルーズの姿もなかったのだ。それどころか、人の気配を感じることはなかった。
「ここはどこだろう?」
配信をしているから1人だとは感じないと思い配信画面の方を確認すれば通信エラーなのか、画面が真っ黒になっている。しかし、コメント欄は文字化けしながらも動いているのを確認することができた。
「どういうことだろう」
こんな、変なことに巻き込まれたなんて報告があれば運営会社も確認作業をするはずだ。しかし、そんな情報がネットにもニュースにもなっていない。それどころか、このゲームの素晴らしいところしか出てこないのだ。掲示板などでもそのような書き込みがあった記憶はない。配信にもそんな雰囲気は出てこなかったのだ。
グリッチなどの発見もなかなかされていない。つまり、これが初めてのバグ発見になるかもしれないのだ。そんな風に思ったけれども俺がなにかできることとか知識があるわけでもないから報告くらいしかできないなと思ったのだ。
「明かりが必要だよね。何も見えないままで進むのは危険だろうから」
明かりをともす系の魔法と言えば光魔法なのかもしれないけれど、まだ習得はしていない。そうなると、火で明かりをともすことになるのだろうけれどここに燃え移るものが多い場合は火花や火の粉で燃え移るリスクがある。
懐中電灯やスマホなど現代的なものがあれば便利なんだけれども、そんなものがこのゲームの世界にあるわけでもないから困るのだ。
「現代って便利なんだな。こんなゲームで実感するなんて何とも言えないのが難しいところだけど」
ずっと、同じところの居てもらちが明かないから立ち上がり一歩踏み出す。そうするとアニメなどで見たことのある一斉に光がともる演出がされた。ふと配信画面とコメント欄を確認してみるが、カメラがこちらに追従されておらずスルーズとカルの方を映していた。
向こうの声などは聞こえないが、コメント欄の雰囲気から原因の追求をしているような感じなのだろう。また、スルーズが「召喚が解けていないなら生存している」と言っているのを聞いてなのかコメント欄では「早く探した方がいい」やら「他を見てまわってほしい」など様々なコメントが飛び交っている。
とりあえず、ここは映っていないのなら慎重に見てまわった方がいいのだろうと思った。召喚をしようにもMPの消費を抑えた方がいいのではないかと思ってためらってしまう。
「ここを見てまわる方がいいか」
1人だとなんにも話すことが無くもくもくと周りを見渡すことにした。そうすれば、部屋の全容が見えてくる。ここは、何かをまつっている部屋だったみたいだ。それが、なんなのか手がかりらしいものがあるかもしれないと思ってさらにあたりを見渡す。
部屋には、祭壇のほかに本が置いてある。さらには、何かの魔法陣かと思えるものもそこにある。軽率に鑑定をしていいものではないと本能が告げてくる。鑑定をせずに近くで観察してみれば、ここに入る前に見つけていた扉に書かれていた模様と同じように感じる。配信の追っかけを許可していないからさかのぼって確認することができないのが悔やまれる。
「ネットとかいじれたらもしかしたらわかるかもしれないのに」
そんな風に思いながら、本の方を確認する。そうすれば、見たこともないような文字で何かがびっしりと書かれているのを確認することができる。内容を読もうとしても文字が理解できないし、システムも翻訳するような雰囲気はない。
「読む必要がないものなのかな?でも、これも手掛かりになるかもだしスクショくらいは撮っておいた方がいいよね」
そんな風に思い、スクリーンショットを残す。そして、祭壇を確認していくが何もない。この部屋にある気になるものと言えば魔法陣だが何もできないというもどかしさもある。
ドアの方に目線を向ける。迷子の鉄則はその場から動かないことだが、何もしないわけにもいかないと思って部屋から出たのだった。




