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22.悪魔の統率者(2)

 俺をつかんだ存在を確認する前に、ルシが焦った顔でこちらに手を伸ばしているのが見えた。そして、白かった服が羽がどんどんと黒く染まっていく。その姿をただ見ているだけしかできなかった。それでも、ルシの顔がどこか残念そうに変わっていくのが見えたのだ。


「シオン」


 俺の名前を呼ぶ。ルシがどこか悲しそうな顔をしていたのだ。そして、俺を捕まえている存在に目を向ける。その目には、何も映していなかった。ただ、空虚な瞳で見つめていたのだ。その瞳が少し怖いと思いながら、その原因を考えていた。しかし、なにも思いつくことはなかった。


 街へと視線を向ければ、そこにはスルーズの驚いた顔が見えた。そして、他の人たちは目の前の敵に手一杯といった様子でまだこちらの様子がうかがえる。だから、ここは俺とルシの2人でどうにかしないといけないのだ。ルシが堕天しきった後だったとしても、会話することができれば御の字なんだけれども。難しいところだろう。

 まず、始めに考えることとしてはこの状況についてだ。まずもって、ルシは堕天をし始めている。つまり、記憶が戻っている状況だとなる。その場合は、力も元に戻るのではないかと思うのだが、その時俺は生き残れるかが不安になる。別に、ルシの前で死ぬのはいい演出だとは思う。けれど、デスペナルティはあまりもらいたいものではないから生存できるのであれば生き残りたい。


「雑魚風情が、触るな」


 ルシの言葉に俺を捕まえている存在が恐れているのがわかる。体を伝って揺れを感じるのだ。だから、できれば離してほしい。乗り物酔いのような揺れで気持ち悪さを感じる。それに、地に足がついていないからこその不安定な感覚が俺を襲って嫌な感じになる。なんで、宙に浮いた状態で逃げないのかは疑問ではあるが。

 ルシがこちらに手を伸ばす。すると後ろから何かがつぶれたような音がしたのだ。そして、下へと堕ちる重力を感じたのだが衝撃を受けることはなかった。


「シオン、ごめんなさい。俺がわがままいったから……」

「ルシ、気にしないで。ルシのせいではないんだよ。だって、私がスルーズの言いつけ通り外にでないで遠視でスルーズのことを見ていればよかったんだから」


 ルシの泣きそうな顔の頬を撫でる。それに、ルシは離れがたそうにしていたのだ。たぶん、ルシも俺もここで別れるのだと本能的に察したのだろう。それでも、どちらもそれを口にすることはない。というか、できなかった。だって、ルシと過ごしている期間はほんの少しだったかもしれないけれどずっと寄り添ってくれていたのを知っているから。

 スルーズが慈愛をくれるのならルシは温かみをくれたのだ。そして、信頼をしていてくれた。だから、俺はいろいろなことができていたのだと思う。


「シオン、改めて名乗らせてほしい」

「うん、いいよ」

「俺の、私の名前はルシファー!堕天使であり、神殺しを目指した天使だ。そして、悪魔たちを導ける存在でもある」

「私、俺の名前はシオン。召喚者としてゆるく旅をしている者だよ。ルシファー……ルシ、よければ俺と契約してくれないか?」

「……ああ、しよう。シオン。でも、力を貸すことだけしかできない。ずっとは一緒に行動することはもうできない。悪魔たちが暴れるのであれば私が管理しなければならない。シオン、私の唯一の神になれるかもしれない存在。しばしの別れだ」

「絶対に、呼べるようになるから。だから、忘れずにいろよ」


 ルシが、ルシファーが俺をバルコニーに下す。そして、黒く染まった羽を揺らせながら空へと飛んでいく。そして、その姿を見た悪魔たちが攻撃の手をやめる。それどころか、前線から多くの悪魔が集まってくるのだ。そして、こちらを一瞥してまた離れていったのだ。


『悪魔の統率者エンド』


 システムが空気を読まずに通知してきた。なんなのかと思ったがそれよりも、ルシが去ってしまったことに悲しみを覚えていた。


「……シオン」

「ッ……スルーズ、ルシが、ルシファーが……」

「ああ、あいつは役目がある存在だからな」

「……うん、でも……」

「出会いがあれば別れがある。これは、どんな時の世でもあることだ。受け入れていかないといけないことなんだ」

「……うん」


 ゲームだからと思っていた。けれど、そんなわけなかった。たった数日。されど、数日だったのだ。俺にとって、楽しかったのだと思い知らされた。召喚は今はできない。召喚リストにいるが召喚不可と書かれているのだ。召喚するための条件を満たしていないと警告がでてきた。


「待ってて、ルシ。私が絶対に召喚条件達成して、また一緒に冒険にでるんだ」


 そう決心して、ホテルの中に入っていた。この後、街の復興の手伝いをする方針にしようとスルーズと話しながら。

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