21.悪魔の統率者(1)
ルシの話は、少し難解なところがあったのは事実だ。悪魔には、種類があるということだ。魔王が管理する、魔界でも支持する勢力よって暴走することがある人がいるのだということだった。
「俺が記憶無くして、俺に従っているヤツが多分俺の事を探してたんだろうな。その結果、そっちにかかりっきりになったから、なんにも命令されてなくて暴走したってのが事の顛末だろ」
「そっかあ。なら、ルシはもうその人の元に戻った方がいいんじゃないかな?」
「俺を捨てるのか?」
どこか悲しそうな目で俺を見つめてくる。捨てられた子犬とでも言うかのように、見てくるからなんとも言えない気持ちになるのだ。だから、なにも言えなくて頭を撫でたのだ。撫でられて嬉しいのか手に擦り寄ってくるのを見ている。手を引っ込めるのもどこかおかしいと思ったから、そのまま撫で続ける。
どれくらい撫でていたのかは、分からないけれどスルーズが部屋に入ってきて驚いた顔をしていたのを見たのだ。なんで、そんな顔をしたのか聞くことは出来なかった。
「えっと、シオン?」
「なに?」
「この状況はどういうことなの?」
「えっと、ルシから話を聞いて、どうしようかなって思っている最中なんだよね」
「そうか。おい、堕天使。シオンが優しいからとそれに依存するな。貴様らお得意の堕落とかをシオンにするな。高潔な魂が穢れるだろ」
「……うるさい。てか、帰ってくるの早すぎ」
私の膝に顔をうずくまっていたのが、スルーズによって引き上げられて不機嫌そうな顔が顕著にうかがえる。それから、猫みたいに伸びるから少しおかしくて笑みがこぼれる。すると、スルーズはどこか安心したような顔をして空いた手でこちらの頭を撫でたのだ。なんで、そんなことをするのかとか聞きたかったがそれよりも先に町中に大きな音が鳴り響いたのだった。
「な、何の音?」
「シオン、戦闘になる。MPは回復しているか?」
「えっと、4分の3は回復してるよ。でも、召喚は避けた方がいいかな?」
「シオン、この贈り物を持っていろ。召喚してもMPの自動回復をあげてくれるアイテムだったから。まさか、シオンに妖精の知り合いがいるとは思わなかったよ」
スルーズから渡されたのは、今もなおアイテム欄で眠っているMP回復のポーションと同じものだった。それを見て驚いたのだ。だって、飲まない方がいいと言われたのと同じだったからだ。
「スルーズ、これは飲んでもいいの?」
「ん?ああ、これは、中毒性が低いし体への負担もないからいいよ。もしかして、シオンこれをもってるの?」
「う、うん。ティターニアにもらったんだ」
「ははは、妖精の女王との面識があるのか」
「ティターニアって、そんなすごい人なの?魔法を教えてくれた人ってだけなんだけど……」
その言葉に今度はスルーズとルシが驚いていた。2人曰く、「妖精の女王は気難しい」だとか「旦那が嫉妬深いからなかなかお会いできない」だとか「似たもの同士で嫌な存在」だとかさんざんな言いざまだった。けれども、2人とも口をそろえて言うのは「魔法に関してはどんな種族よりも一番うまい」というのだ。そんな人に魔法を教えてもらえらなんて、少しうれしいかもしれない。
それにしても、ティターニアは結婚してたんだ。なんて、現実逃避していれば問題が起きた。問題というほどのことではないけれど、建物のが揺れたのだ。窓の方をみれば、無視のような存在が街を襲っているのがわかる。それを 見て、スルーズが思い出したように口を開く。
「とりあえず、このレイド戦には参加することを伝えている。私たちの区域はこのホテル周辺だ。守れればいいからシオンはここから指示を出してほしい」
「え、でも、近くにいないと見えないし指示なんて出せないよ」
「これ、覚えればいいよ」
ルシから魔法の本をもらった。そこには、『誰でもできる視界共有』と書かれた本だった。その本には、視界の共有を許可してくれた存在と同じ景色が見れると書かれていた。熟練度が上がれば、複数人の視界をみることも可能だとか。とりあえずは、ルシの視界で遠距離の状況から知る方がいいのかな?
「とりあえず、召喚するのはシオンに任せるけれど絶対に無理をしないでね」
その言葉を伝えるとスルーズは窓からバルコニーに出て戦いに向かった。ルシは俺のそばから離れようとしなかったから、スルーズの視界を見ることにしたのだ。
そこには、無数の敵が街を襲っているのが確認できた。まずは、村人の避難かなと思ったが思ったりよりもそれは済んでいて残り少しという状況だった。スルーズ自身が、闘いの経験があるからなのか守りながらも戦闘をすることに慣れているように感じたのだ。だから、足手まといにならない様に遠隔から魔法の支援をできたらと思った。
「部屋にいた方がいいよ」
「でも、スルーズ一人にまかせっきりはよくないでしょ?視界を共有してもらってるからバルコニーから攻撃をするよ。ルシは、ここにいてもいいからね」
なにもしないよりも、何かをした方がいい。だから、スルーズの手助けをするためにバルコニーへと出て魔法で援護を始めた。まだ、大きな魔法を使えるわけではないから風で敵の攻撃を防いで転びそうな人がいればその人の体勢を戻す。そんな風に遠距離からできることをしていたのだ。
他でも戦闘をしているのだろう。敵の数はそこまで多くないから、ゆっくりとではあるもののこちらの数が多く感じられるようになってきた。しかし、怪我をしていたりMPの消耗でじり貧になっているのもこちらも同じではあるのだ。
前線がどうなっているのかなんて、わからないからそちらの方に視線を向けようとしたとき何かに全身をつかまれたのだ。




