9.契約交渉
ギルド総合案内所へと向かった。ここには、ギルドに所属することも立ち上げることもできる。さらには、依頼なども無所属でも受けることができるのだ。そこから、配達の依頼と図書館の整理の依頼を見つけて受付へと持っていく。
「はじめまして、ご用件をお伺いします」
「この2つの依頼を受けたいのですが」
「はい、確認いたしますね。会員証をお出しください」
「会員証?」
「個々の利用は初めてでしょうか?」
「は、はい」
「かしこまりました。では、こちらをご記入ください」
渡されたのは契約書のような紙だった。そこには、依頼におけるトラブルが発生した際に紹介したギルド総合案内所は責任を負わないこと。また、何か物損などが発生した場合において登録者が故意に起したものかどうかの第三者調査を行うこと。その際に、登録者が悪いと判明した場合は総合案内所からの処罰が下ること。などが記載されていた。内容を確認していくが、大きな問題があるようなものは少ない。すこし、依頼料の割合が苦しいかなと思うくらいだ。さすがに、8:2で2が登録者側なのはきついように感じる。けれど、契約しないと依頼を受けることができないとなるとサインするしかないのかもしれない。
「どうしたんだ、シオン」
「スルーズ。契約の内容で少し……ね」
「あ゛あん?見せてみなさい」
「え、う、うん」
スルーズへと契約書を渡す。そうすれば、みるみるうちに顔が怖くなっていくのがわかる。そして、受付の方へと歩いていき大きな声をだしたのだ。
「責任者を出しな。こんな契約がまかり通ると思っているやつの顔が見たい」
「え、あの、」
「なんだい?早く連れてくることを推奨するよ。私は気が長い方ではないとよく言われていてね」
まるで、輩だ。あそこまで、俺のために怒ってくれる人がいるのもうれしいものだ。大事にされているように実感できてうれしい。スルーズが怒鳴っているからだろう。周りの人の視線を集め始める。そうすれば、プレイヤーはトラブルが起きたイベントだと判断して仲裁に入ろうとする者、面白がり動画や配信を始める者など様々な反応を示していた。
「なにを騒いで……こ、これは、北欧陣営の」
「あなたがここの責任者かしら?」
「は、はい」
「話があるんだけれど、ここじゃない場所に案内してくれるわよね」
「も、もちろんです」
何かを恐れているかのような雰囲気で別の場所へとスルーズを案内しようとする。そうすれば、スルーズが俺を呼んで付いてくるようにと伝えてきた。だから、付いていこうとすればスルーズを案内していた偉そうな男性が俺とルシの行き先を阻んできた。部外者がなんで、付いてくるのかとでも言いたげにこちらを見下してくる。
「何してるの、シオン。早くいらっしゃい。あなたの契約なんだから、貴女がいないとできないでしょう」
「う、うん」
「あなたも、馬鹿なことを考えない様に」
「は、はいぃぃ」
スルーズに睨まれて小さく萎縮していた。その姿が少し可哀そうにも思えてしまったのだ。それから、案内されたのは応接室だと思わしき場所だった。すぐにスルーズが口火を切ったのだ。
「契約の内容おかしくないか。これは、私たちに上がってきているような内容ではないと思うけれども。それに、こちらへの手数料をあげている代わりに報酬はしっかりと半々以上にするようにと指示が来ているはずよ。今回のこの契約書に関しては、上にも報告を出します。このようなことを看過することはできませんから」
「な、今までは、無関心だったでしょう。少し、経営に苦しんでおりまして……」
「経営に苦しんでいる?その割には、身に着けているのはそこら辺の冒険者よりもいいもののように見えますけれど」
「そ、それは」
契約書の内容で書いてあった報酬の件でもめているようだった。実際にあの契約内容は不当契約といわれても仕方ないくらいだろう。ネットでも大手ギルドに所属した方が報酬が多いとか言われていたのを覚えている。そのくらい、運営がひどいものだと有名だった。
あれから、スルーズが話を続けて契約書を作り直しさせていた。さらには、秘書のような人が慌てて部屋に入ってきて責任者であろう男は部屋から出ていった。
「契約結ばないと依頼受けることできないんだよね。それまで、どうしようか」
「シオンはのんきだな」
「え、ルシ……?きゅ、急にどうしたの」
ルシが急に口を開くものだから、驚いてしまった。それこそ、今まで、なにもこちらに話してくることはなかったから驚きが隠せない。ルシの方を確認してみれば、緑色の目がうっすらと光っているように見えた。それが、神秘的できれいな反面どこか恐ろしさを感じたのだ。
「依頼に関してはすぐにできるようになる。そこの女神が手をまわしているし、この契約にサインをしようとしたことについてお説教をされに女神のほうに行った方がいいだろう」
「え、あ、やっぱり、スルーズ怒っているよね」
少し怖いと思っていたのだ。理不尽な怒りではないから仕方ないかもしれないけれど、どんな暴力がくるのか怖いと感じるくらいは許してもらえるだろう。しかし、スルーズはこちらをみると心配そうな顔をして頬を撫でたのだ。
「シオン。これから、何か契約を結ぶなどするときはこちらに相談をしてほしいな。もちろん、シオンがやりたいことに制限を付けたいわけではないんだ。けれど、何も知らないからこそ搾取されやすいのだと学んでくれ。約束できるか?」
「う、うん。心配かけてごめんね」
「いや、わかってくれたらいいんだ」
どこか、安心そうな顔をしてこちらを見ていた。その後、別の人が新たな契約書を持ってきてそれをスルーズが確認し契約を結ぶこととなった。こうして、ようやく依頼を受注することができるようになったのであった。




