1.小さな少女と追跡者
後ろから大きな衝撃がきた。その衝撃の方を確認してみることにした。そこにいたのは、小さな少女だった。金色で癖のある髪の毛が地面につきそうなくらい長く、前髪も目元が隠れるくらい長いその子には、他とはことなる特徴があった。背中に小さいけれども白い翼が付いていた。
「え、あ、あ、」
少女は、俺にぶつかったことに驚いて言葉に詰まっていた。そして、さらによく見てみれば森の中だというのに裸足で走っていたのだろう。足が傷ついているのにも気が付かないのか それとも、それ以上に別のなにかに気を使っているのかは分からない。
後ろから光の剣が飛んでくる。俺の頭真横を通過しているのが死亡ギリギリで合ったことを思い知らせる。飛んできた方を確認しようとしたが、少女が俺の服をギュッと掴んでいる感覚があった。そちらを確認すれば、なにかにおびえているような顔をして光の剣が飛んできた方を見ていた。
「おや?人の子もいたのですね」
上空から天使と言われれば、そのように見える存在が降りてきた。その人物は、白い髪に青い瞳。しかし、その瞳に人としての温かみがあるかどうかと問われればないといいきるしかないくらい冷たい瞳をしていた。人に向けるにはあまりにも無関心で、関わるには冷血すぎるその瞳におそれを感じたのだ。服装は髪の毛も白いのに服も白だ。そこに、青を指し色にしている感じがする。片方だけマントがかかっており、それが膝くらいまで長い。一番特徴的なのは、天使の輪とよばれるものだろう。円形なのはその通りなのだが、棘のようなものがついているのが特徴的だ。
「その子供をこちらに渡してください」
その男の言葉で、少女を確認すればおびえた顔で首を小さく横に振っていた。まるで、引き渡されるのにおびえているかのようにこちらの顔色をうかがっているのがわかる。それが、小さい頃父親の実家に連れていかれてからの俺に重なって見えたのだ。そして、助けてもらえない絶望もしっているからだろう。無意識のうちに言葉がこぼれていた。
「無理です」
「ほう、この私を敵に回す言葉と理解して言っているのか人間」
「敵に回す、回さないじゃなくて、こんなに必死に逃げている子供。それも、あなたの服装とこの子の服装を比較すればわかるけれどいい扱いを受けているとは思えない子を引き渡すほど俺の良心は死んでないです」
「そいつが、世界を滅ぼす存在になるかもしれないと知っていても引き渡さないのか」
「はい。だって、まだ何もしていな子を引き渡してどうなるかもわからないじゃないですか。子供って、のびのびと好きにさせて失敗したら教えるのが基本なんじゃないんですか。失敗させるのを恐れて、何もさせないのはその子の才能をつぶすことと同じだと思います」
これは、俺が言って欲しかった言葉だ。小説でこんなことを書いてあって、うらやましいと思ったのをいまでも覚えている。たしかに、失敗させるのが怖いと思うが親心なのかもしれない。けれど、親の心子知らずなんて言われるけれど、子どもの心のことを親が知っているとも言い切れないじゃないか。なににも失敗していない子は何にも挑戦していないのと同義語だ。それに、こんなにおびえているのならばこの人に引き渡したらダメだと本能が警報を鳴らしている。
「力づくで渡してもらうぞ」
「そうやって、暴力で訴えるのならこの子にも同じことをしてるんじゃないんですか。それなら、なおのこと渡すことはできないです」
男の後ろに無数の剣が出現する。痛みに慣れているとは言い難いがそれでも、守らないといけないと思ったんだ。男がこちらを見据えて手を振り下ろす。しかし、その剣は俺に届くことなく別のなにかに吸収される。その原因は横にいた少女だった。その子のてから黒い霧みたいなものが発生していた。そして、その子が光の剣を吸収しているのだ。しかし、顔色がどんどんと悪くなっていく。
「な!貴様、すでにその力を使えるのか。そんなもの許されるはずがないだろう。今ここで、処罰してやる」
男が少女の黒い霧を見て声を荒らげる。その言葉に呼応するように、剣の数がさらに増えていく。それに反して、少女の顔色も悪化していく。このままでは、俺も少女もともに負けることになる。どうにかしなければ、と思っていた。
システム音が鳴り響く。この音が何なのか確認する余裕は本来ならばないけれど、もしかしたらと思い藁にも縋る気持ちで確認してみれば、そこには予想だにしていない文字が書かれていた。これで、反撃がもしかしたらできるかもしれないと思いすぐに行動に移した。




