15.魔法の授業
それから、ティターニアの授業が始まった。その授業の内容はテーマごとに内容を伝えてきて最後に実践を行う。そんな方式の授業だった。体験型授業といえばその通りで楽しく実践を積むことができている。
「それじゃあ、魔法と魔術の違いについての説明をしていく。まず、魔法はシオンが当てはめた理論に近しいものじゃ。しかし、さらに付け加えるのならば、魔法は人々の願いなどの思いの結晶になる。その結果、呪いに転じた。それが魔法の起源とされている。基本、感情と呼ばれるものに重きをおいているわけじゃ。魔法と親和性が高いものは基本、スピリチュアルな存在が多い。それこそ、吾輩のような妖精やエルフ、ドラゴンなどが親和性が高いとされておる。その反面、人間は微妙じゃ。魔法を使える者もそれなりにおるが、魔術との親和性も高い。じゃから、魔術が発展している国も多いのじゃ」
「あの、魔術はどんな感じなんですか?」
「魔術は学問的な発展を遂げた。イマジネーションなどではなく、こういうものであると規則を定めて行うことが多いのじゃ。じゃから、自由度は低いが魔法が苦手なものでも簡単に扱えるものとされている。そもそも、おぬしは魔法を口で唱えておったがそんなことをしなくても発動するのじゃ。詠唱は一種の自己暗示みたいなもので、イメージの補助的な役割でしかない。操作できるのであれば、唱えなくても簡単に魔法は発動する」
「え、唱えなくてもいいんですか」
「そうじゃ」
え、じゃあ、魔法を発動させるときに唱えないととか思って発動させてた俺が恥ずかしいじゃん。だれにも見られてないから大きな声で言ってたけど、これがほかの人とか見る状況になったら嫌だなとか思ってたから一安心ではあるけど。もっと、早く教えてよ。授業中の魔法も唱えてたじゃん。だから、ガード系の魔法で「ファイアウォール」とか言ってたら少し肩震わせてたのか。恥ずかしすぎてこっちがつらいじゃんか。
でも、NPCの前だけでよかった。もし、プレイヤーの前でやってたらさらされてネットのおもちゃにされるところだった。リアルでも嫌な思いしてるのにネットでも同じ思いをするところだった。危なかったな。
「続けるぞ。魔術はいわば世界の理を捻じ曲げる可能性がある。魔術師を名乗る者たちはそれが悪いことではなく根源にたどり着く行為としておる。しかし、本来は根源とはいろいろな事象を捻じ曲げるのではなく受け入れる行為でしか理解することができない。この世界におる神々もまた、自分本位にふるまうことがあるのじゃが、それでも捻じ曲げることができないことがある。それが根源じゃ。捻じ曲げすぎた結果滅ぶ可能性もある。じゃから、吾輩の教え子であるシオンが魔術に手を染める結果となるのであれば、吾輩は殺してでも止めるしかなくなる。妖精の女王に教わったにも関わらず、そんな行為をするのじゃからそれ相応の代償が必要になるじゃろ?」
「そうですね。妖精の女王さまなんですもんね」
自分のことを妖精の女王だと名乗っているが、本当にそうなのか半信半疑ではあるのだ。だって、普通に考えたらチュートリアルに妖精の女王が出てくることなんてないから。それこそ、何かのミッションをクリアした結果妖精の女王に謁見してそこからさらにクエストを受注するとかなんじゃないかと思うのだ。だから、自称妖精の女王のステータス画面をのぞくことにした。
『鑑定失敗』
鑑定をしようとした結果は、失敗になった。鑑定のスキル説明をよく読んでみたら
『初級鑑定技術
自身よりも格が下には成功する。同格の場合は幸運値で成功か失敗が左右されることになる。自分よりも上の存在には鑑定したことがバレる』
と記載されていた。つまり、ティターニアは俺よりも上の存在であるということだ。そして、今鑑定したのがティターニアにばれたわけだ。だからだろう。ティターニアの顔が怒っている。かわいらしい幼女の姿であるはずなのに自分よりも大きな存在に感じる。
「小僧、今吾輩に対して何をしようとした。正直に申してみろ。慈悲を授けるかもしれないぞ」
「えっと、鑑定をしてみようとしました」
「なぜじゃ?」
「えっと、チュートリアルで初めての説明で妖精の女王が出てくることなんてないんじゃないかなって思ってやりました」
「ほう、正直でよいな。そうだな、今回は正直に申したから慈悲を与えよう。シオン、確かにその通りじゃ。普通であれば吾輩が何も知らぬものたちに知恵を与えることはない。それこそ、王族や偉い人間であろうと妖精にとっては関係ないことじゃ。その反面、妖精というものは気まぐれでもある。暇で暇で仕方ないというのもあるのじゃ。いたずらなどを行うのも妖精族にとっては暇つぶしになっておる。吾輩が、今回のチュートリアルを引き受けておるのも暇つぶしであるという面もある。もう一つはまだ話すことができない。じゃが、これだけでもシオンの疑問は晴れたかの?」
「はい。ありがとうございます」
「うむ、それじゃあ、そのまま続けるぞ。と言いたいところじゃが、シオンの疲労値が高いな。いったん休憩じゃ。そこのカウチで休息をとること。明日続きをやるから、早めにくるのじゃぞ」
「わかりました」
妖精は気まぐれ。この言葉が俺の頭の中で復唱されながら、言われたカウチに腰を掛ける。そうすると、すごくふかふかで近くに毛布がゆっくりと現れてくる。明日、またチュートリアルが再開されるのか。それまでに、今日やったことを復習してみよう。今日、初めてなのに結構な時間プレイしているのだと思う。たしか、ゲームの時間と現実の時間はリンクしていると聞いた。ということは、現在時刻が深夜2時ということは現実でもその時間であるということだ。明日が休みだから、遅くに起きても平気ではあるが遅くに起きると朝食が食べられない可能性のほうが高いから早起きをしよう。それで、朝食を食べておすすめのジョブとか少しだけ調べてみてからこの世界に来るようにしよう。
カウチに横になりログアウトする。
「おやすみなさい、シオン」
システムが俺に、その言葉を告げて少ししてからカプセルが開く。目の前にあるのは、いつもと変わらない部屋だ。あの世界では、ここよりも大きな部屋で暮らしてみようかな。それに、おいしいものを食べる。MoAは配信関係でも人気だから、配信してみるのもいいかもしれない。人が来ないことも大いにあるが、自分がどこで何をしたのか確認してみる記録としては最適だろう。
「明日が楽しみだな」
母が死んでからそんなことを思う日が来るとは思ってなかったから自分の口からでた言葉に少し驚愕をしながらも今日は眠りにつくことにした。レイピアを振るった経験も魔法を使う経験も人に褒められるのも久しくなかった楽しいという感情を胸に抱いて、明日のために目覚まし時計をセットして眠りにつく。




