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プロローグ

 ──英雄とは、何を成し遂げるかでは無い。



 ────何を殺すかである。




 昔、偉い人はそう言った。


 誰だったかは覚えていない。金ピカの輪っかを頭に乗せた、阿呆だった気がする。



 それを真に受けた私はもっと阿呆だ。



 ただ一度の、たった一度の奇跡を信じて、反旗を翻す大博打を打った。



 人の道を外れる、大きな賭けをしたのに。



 村を苦しめ、私を苦しめた領主を殺したのに、楽にも幸せにもならない。


 誰かに喜ばれることも、褒められることもなかった。


 己を奈落の底に落として、いつ来るかも分からない死を、ただじっと待つだけ。



 その阿呆に対抗するかのように、さらなる阿呆が、私を訪ねてきた。




「──あなたが、ソラ・アボミナティオね」




 汚い牢獄の、これまた汚い面会室。

 そこに一つだけ置かれたカビ臭いテーブルを挟んで座る、私ともう一人。


 お手本のようなブロンドの髪に、高そうな服。手入れした爪と化粧は、服に合わせた色で統一している。


 晴れた日の草原のように綺麗な緑の瞳が、柔らかく微笑んだ。絵画のように美しい()はこの上ない笑顔で言った。




「アタシの婚約者になってちょうだい」




 とんでもない出会いをしてしまった。けれど、それが私に訪れた最後の奇跡だった。

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