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わからないことだらけ

 いきなりだけど、自分がどこにいるのかわからない。………?


ーーーOK…状況を整理しよう。俺は冷静だ………冷静だよね???


俺・きみ、は横たわっているようだね。


ーーーでも床が無いね。でもうつむせに横たわっているね、髪の毛もちゃんと重力方向に垂れてるよ。うん考えちゃあいけないな。今はこの感覚だけが頼りだね。


ちょっとあたりを見回してみようか。


ーーーOK、目の前は明るいが遠くは暗くなっていく。だが光の加減というよりはフォーカスが問題のようだ。証拠にほら、今は遠くの星がキラキラして、ほんのり明るいプラネタリウムみたいだ。俺はその空間に浮いているようだけど体は死んだように動かない。動かないのに周囲の景色を把握できている、つまりこれは三人称視点だ。あっと、おかしいと思った瞬間に一人称に戻った。


地球を見てみよう。


ーーーそうだ、そこに俺の見知った景色がある。ビュンビュン、すごい速さで地球が目の前いっぱいに迫ってきた。確か国際宇宙ステーションから見る景色がこんなんだっけ?日本はどこかと探してみる。あった、太平洋と列島の半分を雲が覆っていてちょうど見えないけれど、俺の住んでいる町はこのあたりのはずだ。

 

ーーー思い出した。俺は会社に遅刻しそうになって、駅前通りを横断していた。その時たしかトラックに…


「…轢かれてはいないよ」


その声に、ひたり、ひたり、と誰かが歩いてくる気配を感じる。


ーーーヤバイ。いやな汗が出る、動けない。その素足の足先が見えたとき、俺、いえ…僕めの思考は完全に停止した。


「元気を出しなさい」


その人がかがんで私めに触れた時、私めは直立不動になった。ファッ!?やばっ見下す姿勢!?…ってわけではない!?相手もいつの間にか立っている。思考が追いつかず、口が先に答えた。

「…ハイっ!えっ?あの…、卑しい僕ちゃまにいったい何の御用でちゅか!?…ばぶ」

ーーー…こんなときにふざけたことしか言えない自分が恨めしい。


「幼児退行せんでもよろしい」

冷静で的確、タイミングも完璧なツッコミが帰ってきた。


ーーーやばいやばいやばいやばいっ、こんなことははじめてだ。切り返しも早すぎる!フレーズした脳ミソがシュンシュンカリカリ高速回転しているが、何のフリーズも浮かんでこない。何と返事を?→何と答える?→何か返さないと?→日本語で何て言うの?ソーリー???あれ?ゲシュタルト崩壊?ぱーどぅん¿


「アッハイ」


上ずった変な声が出た。


うん、もう一度、今度は自分から倒れよう。


ーーー土下座もおごがましい、五体投地こそがふさわしい。ああやっちまったな俺、このまま不敬で死ぬんや。

スゥーッ…呼吸を止め、僕は今度こそ完全に思考を手放した…。甘味()???あれ、でも何で不敬なの?


「いやいや、気にしないよ。まぁ、どうしてもというならこれでチャラにしよう」

チョン、額を小突かれた。切っ先を制される形になった俺は倒れることすらかなわなかった。

げはっ!?イテッ、思考を手放したはずなのになぜか思考が続いているとか、こわい。


「フフッ…まぁ楽に」


いつの間にか赤ちゃんの正装ーーよだれかけとおしゃぶり綿つなぎだったのが、いつものイケてないジャージとトレーナー姿になった。っと同時にあぐらをかいていた。


「あ、ども、…です」


ちょっと恥ずかしい。

俺、、、僕は恐るおそるその人を見上げた。見上げてすぐにやっぱり足元だけ見ることにした。

目と目が合った時に理解した格の違い。正直どうしていいのかわからなくなってしまう。レベルだとか、ステータスの違いだとか、そんなちゃっちな物じゃあなかった。


ーーー”泳がせておく”という言葉がある。尻尾はつかんでいるけどより大物を釣り上げるためにあえて好きにさせているというような意味だが、あれは実はどこに泳いでいくかは未知数だ。

だがこれは”生かされている”だ。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、俺は”生かされている”。しかもすべてが把握されている。これにある種の恐怖、または畏怖を感じるのはあたりまえじゃあないだろうか。ましてや今まさにその権利を持つものが目の前にいる。こびへつらうなという方が無理なんじゃ…


「いや、もうちょっと言い方があるだろう。毎日感謝しないとね?とかさ」

「あと何でもない風に思考を見透かされている。ハッ!?しかも未来まで読まれている!?」

ーーー何でもない風に思考を見透かされている。ハッ!?しかも未来まで読まれている!?


「「ファッ!?」」


「っと君は言ったね」


「………」

ーーー………


「OMG!思考が停止しちゃったようだね。おっと私が神だった。ハハッ…」

「…搭載頭脳の調整も滞りなく…」額をまた小突かれた。


「寒い…ここにあと何年」

ブルッっと身震いがした。もはや自分の意思とは関係なく、普通に返事が出てくるのが恐ろしい。

俺の額には何かのスイッチでもついているのだろうか?


「オーガニック的だろう?」


「何が言いたい?」


「人間はさ、最高傑作なんだよ。」


「決定的に?」


「オーガニック的な」


「何か?」


「そういうこと」


「わかります」

わかりません。もはや何が何だかちんぷんかんぷんだ。

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