自分はどうやら四天王最弱というのは噛ませやら相手のパワーアップの手助けをするポジションみたいですが何とか頑張っていきたいです!!
「はあ...」
犬の頭が3つあるケロベロスのような魔物ははため息をついた。そして紫色の雲が広がる空を見る。ここ、魔物の城では常にこのような風景が広がっている。時々その雲が雷を鳴らしている。このケロベロスのは魔物で、その中でも強い部類、よくある四天王というやつの1人だ。この魔物達は人間を脅かしてきた。
先程四天王とは言ったが、このケロベロスはその中で一番弱いポジションなのだ。四天王で最初というと、大抵で意気揚々と最初に出てきて少し圧倒するけど結局パワーアップの噛ませになるやつだ。
「俺だって...四天王っていう強い方なんだがなあ...」
そんな事をぼやきながらもう一度ため息をついた。すると後ろから「おい」という声がする。そちらを向くと手が4つある魔物がいた。こいつも四天王なのだが、このケロベロスと違って3番目に強い。四天王最弱のこのケロベロスとは大きな違いだ。
「俺、やっていけてるのかなあ?」
「どうした?突然」
「いやな、俺っていわゆる四天王最弱ってやつじゃん?」
「まあ、最弱っていうほどでも無いと思うけどな」
「だから、俺がやられるたびになんか良くなく思われてるんじゃ無いかって思ってさ」
このケロべロスの魔物、すでに人間側と何回か交えている。1回目は初登場というだけあって人間たちを圧倒していたが、2度目で人間側が特に必殺技を手に入れるわけでもなく、負けてしまった。まあこの手の四天王の最初は1回目に圧倒し2回目で負けるというのが定石だ。実際にそのようなことが起こっているのだ。しかもそう言う時にありがちな新しい技を会得して倒すみたいな王道展開でもない、普通に倒されたのだ。
「負けた時はボスは何も仰らなかった。だが今度負けたらと思うと...」
「心配しすぎだお前は」
「だが...」
ケロべロスは不安だった。自分だけ取り残されているんじゃ無いかとたびたび心配になってくる。四天王最弱という立ち位置上仕方のない事なのだがそれにしても人間は強くなりすぎじゃないかと思う。絆の力だの、友情パワーだの、そんな表面上のものですぐに強くなる。そうなってしまうともう勝つのはほぼ不可能だ。パワーバランスというか、四天王の最初だけあっていわゆる噛ませのポジションではないかと少し不安だ。
「お、そろそろ時間だ、行くぞ」
「あ、ああ」
そう言うと2人は出口へと向かう。2人でここからの少しばかり離れた渓谷があるのだが、そこにちょっとばかし用があるので2人で行く事になっている。おそらくその渓谷にも現れるだろう。正直勝てないと分かっているのでこれ以上戦いたくないと思い始めているし、出会わない事を祈るばかりだ。
その渓谷までは翼があるので飛んでいくことができる。しばらく進むと肌色の岩が連なった場所に出た。
「さて、どこにあるかなっと...」
「出ないでくれよ...出ないでくれよ...出ないでくれよ...」
「何だ?ブツブツ言って」
腕が4本ある魔物がそう言うとケロべロスは「あ、いや何でもない!!」とだけ言う。そう祈っていても現実というものは非常である。目の前に3人ほどの人物の姿が見える。その人物たちの姿が分かるほどに近づくと、ケロべロスの恐れていた人間達だった。
「お前達!」
「奇遇だな」
「くそおー」
「どうした?」
「いや」
会わない事を願っていたケロべロスはつい、出てしまった言葉にハッとして口を塞ぐ。つい本音が溢れてしまった事に少し恥ずかしくなりながらも人間たちのほうを向く。何度も見た顔だ。勝てる保証はない。おそらくほぼ勝てる確率はばいだろう。こいつならばもしかしたら可能性が...。
いや人間側は何故だかどんどん強くなっていくがこちら側はそう言う補正はない。まあ結局全員やられるのだからむしろやられるのも良いんじゃないかとすらケロべロスは思い始める。
「お前らに用はないが...邪魔をするなら消えてもらおう」
「え???戦うの??」
「いやそりゃそうだろ」
ついケロべロスはそう尋ねてしまう。あいつらは友情だのなんだのとかこつけてすぐパワーアップしてしまう奴らだ。そんなやつらに最弱と3番目が挑んだって結果が目に見えている。負けたらまた何か言われるんだろうなあ..。
「来い!」
「行くぞ!!」
「あーどうにでもなれってんだ!!」
「んで?惨敗して戻ってきたってわけか。情けねえ」
その蜘蛛の魔物はそう言いながらこちらを見る。先程の戦い、結論から言えばケロべロス達は負けた。結論から言えばそうだ。どうやらパワーアップして勝つというありきたりの展開はここで起こるようでその展開を起こされ普通に負けたのだった。
蜘蛛の魔物は情けないケロべロス達を見て嘲笑うかのような笑みを浮かべる。こいつは四天王の中でも2番目に強いと言う奴でケロべロスや手の4つある魔物なんかより数倍は強い。
「いや、これでいい」
「はっ!!」
その爺さんのような風貌の男はそういうとニコニコしていた。この人こそが魔物を統括するリーダー的存在で絶対な存在なのだ。ケロべロス達は負けたと言うのに、処分どころか何故か「良い」と言ってニコニコとしているのがかなり不気味だ。
「あの...」
「何だ?」
爺の眼光がケロべロスに向く。その瞬間ケロべロスは少しだけ臆するが、ケロべロスは恐る恐る尋ねることにした。もちろん何かを尋ねるなど恐れ多いのだが、ケロべロスは聞いてみたかった。
「何故、ここまで負けているのに..許してkyださるのですか??」
「はて、どうしてだろうな」
ケロべロスはそれ以上聞かない事にした。そして一例すると2人で出て行った。その姿が見えなくなると、蜘蛛の魔物はこんな事を尋ねた。
「本当にあいつに任せていいんですか?アイツなんかに任せたって同じだと思いますが」
「そう思うか?」
「え?...ええ」
「それは違うな。あいつにはあいつ自身も気づいていない。ある能力が備わっているのだ」
「ある...能力ですか」
「ああ。あいつに攻撃すると呪いが発動しそれは攻撃するたびにどんどん強まっていく。つまりあの人間はどんどんとあのケロベロスと戦えば戦うほど弱くなっていくのだ。すごいだろう?」
「ええ。素晴らしいですね。だからあいつが何回負けても寛容でいらっしゃる」
「さて、もう一度あいつを呼んでくれないか?あいつに人間をぶつける。そうすれば呪いで完全に...ふふふふふ」