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1-1

ワイワイ、がやがやと喧しい、酒場特有の喧騒の中、これまた酒場特有の拳が体を穿つ、「べきっ」という音とともに、すっかり伸びてしまった男が一人、彼...ハンスの足元に転がってきた。


「あら、失礼。お食事の邪魔をしてしまいましたか?」


人間砲弾をハンスのもとに飛ばしてきたその女性は続けて、


「けど、そちらの男性が悪いんですのよ?急に乙女の臀部を撫でまわそうとしましたもの」


「なるほど、それならしょうがないですね。えぇ。ハンスさ...ハンスもそう思いますよね?」


対面に座っているエルフの女性、カタリナに同意を求められたのでおとなしく頷く。別に反抗してもよかったが、これから先過ごす時間を考えればそれは実質できないのと同じだった。


その様子に、人間砲弾を飛ばしてきた女性は満足げに頷き、こちらへと歩み寄ってくる。

砲弾を通路の方へ蹴り飛ばして、椅子を引き、食卓に着く。ウェイトレスへの注文も忘れない。


料理が到着するまでの間、ハンスにはよくわからない話題でカタリナと語り合っていた彼女は、カタリナが名前がわからず「えぇと...」と口ごもったところで、思い出したかのように自己紹介を始めた。


「あら、申し遅れましたわ。(わたくし)、エレーナと申しますの。種族は...まぁ見ての通りですわね」


ちらっと、バンダナをずらして頭に生えた小ぶりな角を少しだけさらす。ナイトメアだ。


「格闘家をやっておりますの。あぁ、あとお家の関係で野伏の知識も少しはありますわ」


名前だけではなく、自身の職業も教えてくる彼女に、二人そろって首をかしげていると、エレーナは「はぁ...」とため息をつき、


「冒険者仲間を探してますの」


と簡潔に告げる。

あぁ、なるほどとハンスは得心する。

確かに自身の横にはバスタードソードが置かれているし、カタリナも傍らに長銃を置いている。何もしらない彼女からすれば確かに自分たちは冒険者にも見えただろう。

少しだけ申し訳なさを孕んだ声音で、


「悪いが、俺たちは冒険者じゃないんだ」


ほんの少しだけ眉を顰め、あら?と首を傾げつつ、エレーナが


「じゃあ、その立派な剣と銃はなんですの?」


と当然の疑問を飛ばしてくる。


「確かに俺たちは冒険者になるべくここに来たが、まだついたばかりで右も左もわからなくてね。迷惑はかけられないから、悪いが他を当たってくれ」


「えぇ、そういう事です。本当に申し訳ありません...。申し出はありがたいのですが...。」


本当に申し訳なさそうに言うハンスに、エレーナはキョトンとした顔を浮かべ、直後にその整った顔を笑顔に崩す。


「そんなことですの。それなら心配いりませんわよ」


「え?」


「え?」


「だって、私も冒険に出るのは今回が初めてですもの。それを言うなら私だって右も左もわかりませんわ」


あっけらかんと言ってのけるエレーナ。

ハンスは、思わずカタリナの方を見ると、彼女もまた、ハンスの方を見ていた。


「え、と。それじゃお願いする...します...?」


「あはは、別に普通に喋ってくれて構いませんわ。冒険者の

立場は対等ですもの」


「あ、あぁ。それじゃ、改めてこちらからもお願いするよ。俺たちと冒険にいかないか?」


「私からもお願いします」


「えぇ、えぇ。もちろんですわ!」


にっこりと頷くエレーナ。

しかし、直後に少し思案するように顎に手をやり、考え込む。


「となると、パーティ構成が格闘家、剣士、銃使いですか。あと一人か二人、欲しいところですわね」


「あぁ、そうだな。欲を言うと...」


「頼りになる壁と、魔法使い、ですね」


「えぇ。そうですわね。付け加えると、神官も欲しいですわ」


困った、と3人そろって店内に目線をやると、「はいはーい!!」と元気のいい声とともに、ガシャンガシャンと喧しい足音がこちらに近づいてくる。...なぜかウサギを抱えながら。


「じゃあさ、じゃあさ!私たちなんてどうかな!?」


「あら?どちら様ですの?」


「あ、あたし、ローザ!ローザ・グリム!こっちは白兎のヴァイス!」


「白兎じゃなくてタビットだ、小娘」


ほぉ、と何やら物知り顔なエレーナ。ハンスとカタリナはどういう事だという目線をエレーナに飛ばすと、


「あぁ、このお二方を見ていいな、と思っただけですわ。そこのあなた...ローザでしたか?」


「うん?」


「その首からかけているネックレスは聖印でしょう?その紋様は確かキルヒア様でしたか」


「うん!そうだよ!」


「それに鎧を着こんでいるし、大ぶりな盾も持っている...、丁度私たちが探していた頼りになる壁、それも神官戦士ですわ」


「うん!攻撃、充てるの苦手だから...その分、みんなを守ろうと思ったんだ!」


「えぇ...。そしてヴァイスさん。彼の種族、タビットは有力な魔法の使い手として知られていますわ。ヴァイスさんもですよね?」


「うむ、いかにも。これでも吾輩、真言魔法に操霊魔法を学ばんとする魔導師である!」


「おぉ」


「ね?今しがた欲しいといった人材そのままですの」


「なるほど...、ではお二方」


「はーい?」


「うむ?」


「私たちと一緒に冒険に出ませんか?」


「...今あたしが頼んでたはずなんだけどなぁ...、けど、うん!喜んで!」


「うむ、魔導の神髄、お見せしようではないか」


話も決まり、手早く料理を片付けて席を立つ。

多種多様な張り紙が張られたボード...クエストボードに近づき、彼らパーティは以来の吟味を始めて一く。

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